くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「バルバラ セーヌの黒いバラ」「彼が愛したケーキ職人」

バルバラ セーヌの黒いバラ」

全体が音楽劇のようなまとまりのある作品で、特にドラマティックなストーリーは存在せず、ドキュメンタリータッチの映像が綴られていく。玄人好みのクオリティの高い作品でした。監督はマチュー・アマルリック

 

新作映画でシャンソン界の女王バルバラを演じることになったブリジット。バルバラを演じることに心身ともに打ち込むうちに次第に現実との区別が混沌とし始め、バルバラという偉大な歌手に支配されていく。

 

一見狂気のようにバルバラになりきるブリジットの演技が絶品で、見ているこちらも、バルバラのドキュメンタリーをブリジットで描かれているのではないかと思えてくる。

 

ところどころに挿入されるシャンソンの名曲の数々が、画面の中に突然飛び出すことで、まるで音楽劇のような雰囲気を作り出し、一つに見事に融合した映像が素晴らしい。

 

ストーリーの根幹を追い求めると、映画の撮影セットなどを組み合わせるので混乱していくところもありますが、よくねりこまれた映像表現を堪能できる一本でした。

 

「彼が愛したケーキ職人」

非常に上品な映像と演出で見せるラブストーリーの秀作。ゲイの映画では無かったらもっとのめり込んでいたと思いますが、それでも、いい映画でした。監督はイスラエルのオフィル・ラウル・グレイツァ。

 

ドイツのクレメンツカフェという店に、月に一度出張でやってくるイスラエル人のオーレン。彼がいつも土産に買って帰るのがこの店のクッキー、そして、決まって店で黒い森のケーキを食べていた。店のオーナーのトーマスに何かにつけ相談したりするうちに親しくなりそれは、いつの間にか愛に変わってしまう。

 

ところが、二人に愛が芽生えて間も無く、イスラエルに帰ったオーレンにトーマスが何度電話しても連絡がつかなくなってしまう。仕方なく彼の会社に出かけて、そこでオーレンが亡くなったことを知る。

 

イスラエルで小さなカフェを営むオーレンの妻アナトのカット。息子のイタイは学校でうまくいっていないようで、夫を失い一人で切り盛りするアナトには疲れがたまっていたが、叔父のモティが何かにつけ世話を焼いていたが、宗教的な束縛を強いてきていた。

 

トーマスはイスラエルにやってきてオーレンの妻の経営するカフェにやってくる。そして、カフェの手伝いに入りようになる。ある時、イタイの誕生日にクッキーを焼く。非ユダヤ人であるオーレンがオーブンを使うことは禁じられていてモティに非難される。この辺りの宗教観の描写が実にうまい。

 

トーマスは、次第にクッキーからケーキを焼くようになり、それが評判になって店は繁盛し始める。そしてアナトはトーマスに愛を感じ始める。ところが、トーマスが書いたレシピのメモが、オーレンの遺品の中にも同様のものを見つけ、オーレンが生前、ドイツに恋人ができたからと告白した相手はトーマスだと知る。しかも、オーレンの携帯の留守電にはトーマスのメッセージが入っていた。

 

そんな時、突然アナトのカフェが食品規制に違反していると告発され、大量注文されていたケーキもキャンセルに。モティはトーマスに帰国するように航空券を渡す。

 

三ヶ月後、ドイツにやってきたアナトは、クレメンツカフェの前にいた。中からトーマスが出てきたが、声をかけず、その姿を追って映画が終わる。このラストの処理も上品でいいです。

 

イスラエルの日常生活の宗教観をさりげなく描写し、その制約に悩むアナトの姿で、現代のイスラエルを描く。さらにゲイは確か禁止の国だった気がするし、その辺りも辛辣に描いた脚本がうまい。

 

全編、淡々と静かに進むが、押さえるべきポイントを丁寧に客観的に描写していくストーリーと、切ないラブストーリーが魅力的な作品でした。

映画感想「恐怖の報酬」「BU・SU」「東京夜曲」

「恐怖の報酬」(完全オリジナルバージョンリマスター版)

絶頂期だったウィリアム・フリードキン監督が、アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督の名作に臨んだ一本で、当時かなりカットされての公開だったものをオリジナル版でリバイバルした。初めて見た時も思ったが、ストーリーの展開が今ひとつ乗り切らない。今回の全長版を見て、フリードキン監督の芸術的な絵作りは見事だと思った。

 

主要キャストの様々な過去から映画が幕を開ける。そして、ニトログリセリンをジャングルの奥地の石油採掘城まで運ぶメインストーリーへと流れていくが、この導入部がややしつこい。クルーゾー版は、いきなり主人公達が集まる殺伐とした画面から始まるが、ここも正直長い。

 

そして見せ場は、トラックを走らせていく中での様々なトラブルを克服していくサスペンスが売り物。クルーゾー版とは異なったドキドキシーンを作った目新しさは面白いが、どうも全体のまとまりはそれほど完成度が高いとも思えない。これは、初めて見た時と同じ感想になった。

 

そして、最後は一人で荷物を届け、無事金をもらった主人公だが、過去の仲間が彼を追ってきて殺されるかのイメージを抱かせてエンディング。

 

クライマックスのオーバーラップや色彩演出にこだわった画面は美しいが、編集の妙味などのストーリー作りの面白さは見られなかったように思います。

 

「BU・SU」

いまひとつ性格が良くない主人公が東京へ転校し、芸者の見習いをしながら過ごす高校生活を描いたさりげない青春ストーリー。素朴な爽やかさが光る秀作でした。富田靖子が抜群にキュートです。市川準監督のデビュー作。

 

どこかいつも俯いている少女は、東京へ出ていくところから映画が始まります。家庭内もいまひとつ両親の関係も良くない感じですが、その辺りはさらりと流し、東京へ来て芸者の見習いをしながらの毎日がとってもみずみずしく描かれていく。

 

市川準監督ならではの映像感性か、ストップモーションやスローモーションで、キャストの表情を捉えるカットを挿入し、映像に独特のリズムを作っていきます。

 

流れの中で文化祭で八百屋お七を一人で踊ることになった鈴女は、結局舞台セットが壊れて大失敗。キャンプファイヤのセットにランプを投げつけて燃やすラストで映画が終わる。

 

ほんのひと時の青春ストーリーが、何気ない素朴さと切なさで描かれる。恋もあるようでなく、深い友情関係もあるようでない。当時の高校生達のややドライになりかけた空気感も見事に描かれています。

 

富田靖子の好演が一番ですが、とっても心に残る一本でした。

 

「東京夜曲」

たわいのない日常のたわいのない人たちのさりげない物語が、とっても心にしみてくる。生きてるって素敵だなと思える一本でした。監督は市川準

 

東京の片隅の商店街、そこに住む人たちの日常を市川準ならではのさりげないセリフとカットの積み重ねで淡々と見せていきます。そこに大きなドラマはありませんが、商店の人々の若き日のドラマ、恋、今に続く何気ない日常がただひたすら描かれていきます。

 

ただゆっくりと流れる時の流れを感じさせ、生きていくことの平凡な幸せが心にしみてきます。今の物語なのにどこか懐かしい映画を見ているような感覚。素敵な映画でした。

映画感想「バグダッド・スキャンダル」「斬、」

バグダッド・スキャンダル」

実話を元にしたベストセラー小説の映画化作品ですが、実際の事件を丁寧に描写はできていますが、サスペンスとしての面白さには少し物足りなさを感じました。監督はペール・フライ。

 

わずか24歳で国連事務次長の特別補佐官に任命され、父同様外交官として赴任する。前任者は不慮の事故で他界したためいきなり莫大な資料を抱えることになる。それは、国連がイラク人道支援としてイラクの石油を販売し、引き換えに食料をイラク人民に配布するという画期的国連プロジェクトだった。

 

しかしこのプロジェクトにはフセイン自身が関与し、世界中の有力企業、有力者を巻き込んでの収賄事件が起こっていた。

 

マイケルはその発端を手に入れ、通訳でクルド人でもあるナシームと真相究明に動き始める。さらに、その追及の過程で、信頼していた上司パシェも関わっていることが明らかになる。

 

マイケルはパシェにも正すように訴えるが、イラク内情をまとめるためには、権力者を交えた包囲が必要だととく。しかし、マイケルの策略にはまってパシェの関与の証拠も掴まれたパシェはマイケルに従うかに見えたが、マイケルらが立てたイラクの実力者は車を爆破され死亡、その巻き添えでナシームも死んでしまう。

 

万を期したマイケルは、国連の地下資料を手に入れ、汚職関係者のリストの裏付けを固めた上でウォール・ストリートジャーナルに駆け込む。そして国連最大のスキャンダルが明るみに出て、パシェにも嫌疑が向くが、彼は密かに海外に逃亡した。

 

物語の骨子は骨太な展開で進むが、どうもマイケルが弱いために、リアリティが備わってこない。さらに、イラクの内情の描写は、分かり切ったこととして処理されているので、私のような素人には理解しずらいところがあり、その辺りの映像はもうちょっと欲しかった気がします。

 

駄作ではないし、物語を知るだけでも価値のある作品ですが、もう一歩映画としての工夫が欲しかったです。

 

「斬、」

斬るということを精神的なテーマでシュールに描いた作品で、時代劇という形式だが、そこに特に意味がないように思える。空間を区切った凝縮した演出スタイルはまさに塚本晋也監督ならではの世界ですが、蒼井優扮するゆうのキャラクターが妙に浮いていて、嫌悪感さえ覚えてしまった。

 

ある山深い農村、杢之進とその村の娘ゆうの弟市助が剣術の稽古をしている。がむしゃらに向かう市助を巧みにかわしていく杢之進。手持ちカメラで躍動感あふれるシーンが続く。

 

ある日、森の中で澤村という武士が果たし合いの試合で見事な剣さばきを見せる。澤村という武士は、地方から腕の立つ若者を集め江戸に向かう予定なのだという。そして杢之進と市助も誘われる。

 

そして出立の日、杢之進は熱病に倒れる。先を焦る市助はがむしゃらに飛び出すが、たまたま村はずれに来ていた源田らの浪人たちにからかわれ、突っかかっていったため返り討ちにあってしまう。

 

それをみた澤村は浪人たちを切り捨ててしまうが、源田一人が逃げ、その夜、仲間を連れて戻り、市助らを殺してしまう。

 

杢之進と澤村は、仇を討つため源田らのところに向かうが、いざとなると杢之進は刀が使えない。追ってきたゆうも源田らに捕まり襲われてしまう。澤村は次々と源田らを倒す。

 

そして再度江戸への出立の日、澤村は杢之進と剣をまじえようとする。そして、村はずれで戦い、どちらが勝つともなく戦う姿で映画が終わる。

 

浪人たちが村はずれに来た時、杢之進は、刀で追い払うのではなく、話の中に入り混んで彼らの真意を見極めようとする。澤村が斬り殺したことを聞いて、えらいことをしてくれたと呟く。一見浪人どもは根はいいやつに描くのに、結局、悪人達だったし、さも彼らの本心を見抜いたかの仕草をする杢之進も、結局見る目がなかったという展開になっている。この辺りの矛盾はどういう意味なのだろうか。

 

いずれにせよ、時代劇とは名ばかりの日本的な精神世界の作品だったように思います。殺陣シーンのスピード感は個性的で面白かったです。

 

映画感想「会社物語」「ノーライフキング」「つぐみ」

「会社物語」

細かいカットの積み重ねで物語を紡いでいく独特のタッチが面白い。監督は市川準ですが、彼の作品はほとんど見ていないので、なかなか楽しめました。

 

主人公花岡は、間も無く定年を迎えるサラリーマン。いつものように通勤電車に乗り、会社では憧れる若い女性社員にさりげなく視線を送ったりする。

 

女性従業員同士のトークシーン、様々な会社での場面を特に意味もなくつなげていき全体のムードを作り上げていく。

 

花岡の気持ちを察した先輩女性社員が花岡が気にしている女性社員に、花岡とデートしてあげてなどと頼み、なにげない食事のひと時を得る花岡。

 

その女性社員の恋人は専務の娘と婚約し、あっさり彼女と別れる始末。花岡の知り合いで若き日にジャズをやっていたメンバーが再結集し、花岡も交えバンドを作る。そして花岡の勇退日にコンサートを企画するが、突然花岡の息子が家庭内で暴れ始め慌てて自宅へ帰る。

 

一段落してコンサート会場へ戻り、花岡はドラムを叩く。その音に従業員たちが集まり賑やかに送り出され、会社を後にして映画が終わる。

 

淡々と花岡の姿がドラマとして描かれる様が実に素朴と哀愁を漂わせ、さりげないカットの連続になんとも言えないうんちくを込めた演出がうまい。若干、好みでない人には退屈を感じるかもしれないスタイルですが、個性を持った1本だったと思います。

 

ノーライフキング

ちょっとシュールな感じの作品。細かいカットの組み立てと呟きの連続の中で、ゲームにのめりこんで行く少年たちの不思議な物語は、ちょっと眠いながらも面白かった。監督は市川準

 

「ライフキングの伝説4」のゲームの売り出し日に映画が始まる。並んでいるファンの足のショット。そして、一人の小学生マコトがそのゲームを始める。

 

背後に都市伝説のように、呪いのかかったソフトが混じっていて、それは「ノーライフキング」と呼ばれる。その呪いを解くには最後までクリアしないといけない等の呟くがかぶる。

 

他にも小学生の間で広まる様々な都市伝説が語られる。そして一学期の終業式、校長先生が突然倒れ死んでしまう。

 

長い夏休み、塾の講習で、パソコンの前に座り、まるで近未来のような授業風景が展開。そしてマコトの元に、ノーライフキングを解いてほしいと沢山の電話が入ったりソフトが送られてきたりする。

 

マコトは北海道にいるというゲームの天才に連絡を取る。その少年から、「外に出てみてください。リアルですか?」と質問が来て、マコトが外に出る。リアルな世界が展開している。カットの積み重ね、そして、夏休みも終わり、友達もライフキングを全部クリアしたと話し合っているカットでエンディング。

 

シュールだがどこかファンタジーである。ゲームにのめり込む少年の姿を描く社会派映画のようだがそこまで重くない。その不思議な曖昧さが独特の空気感を生み出す一本でした。

 

「つぐみ」

何十年ぶりかの再見。監督は市川準。ほとんど覚えていませんでしたが、これはなかなか良かったです。牧瀬里穂の演技力にも寄るところがありますが、物語のテンポがとっても良いです。

 

幼い頃から体が弱く、わがまま放題に育ったつぐみが、大学に入って東京へ行った唯一の友達まりあを、夏休みに呼ぶところから映画が始まる。

 

つぐみのこれまでをまりあのセリフで語らせながら、沼津へ戻ってきたまりあは早速つぐみとの日々を暮らし始める。

 

つぐみはかつてチンピラまがいの中西という男と付き合っていたことがあり、ある日、まりあと浜辺に行った時に絡まれ、通りかかった高橋という青年に助けられる。

 

それまで突っ張って、人の嫌うことばかりしていたつぐみはなぜか高橋に心を引かれる。そして二人は恋に落ちるが、中西らが嫌がらせを始める。

 

飼い犬が殺され、高橋も怪我をさせられ、つぐみは復讐のために夜中に廃工場に大きな落とし穴を作り始めるが、体力が尽きてとうとうたおれてしまい、入院する。

 

やがて夏が終わり、まりあは東京へ帰る。そこへ、つぐみから手紙が来る。自分がいかに体が弱く、わがままだったことが穴を掘っている間に自覚したという内容と、いかにももう命はなくなるというような言葉だった。

 

しんみりしたまりあに電話が入る。出てみると、いつものつぐみの陽気な声だった。こうして映画は終わる。

 

吉本ばなな原作のベストセラーの映画化ですが、さりげない田舎町の風情と、青春期の若者の甘酸っぱいような心の変化が見事に描き出されていて、とっても良い感じの作品でした。

 

 

映画感想「くるみ割り人形と秘密の王国」「へレディタリー 継承」

くるみ割り人形と秘密の王国」

豪華絢爛たるCG映像の中で展開するクラシックの名曲が生み出すファンタジー。夢見るような画面の数々は素敵なのですが、もうちょっとストーリーを見せると言うことも考えて欲しいです。物語の展開は実に陳腐なのが残念。監督はラッセ・ハルストレムジョー・ジョンストン

 

母を亡くしたクララ、父も含め失意の中にいる家族だが、クリスマスイブの日、亡き母から卵型のプレゼントをクララはもらうが、鍵がなくて開かない。

 

気持ちを切り替える意味もあり、クリスマスイブの叔父ドロッセルマイヤーのパーティに出かけることになる。クララがドロッセルマイヤーに会い、そこから不思議な世界へ足を踏み入れることになる。

 

あとは、ファンタジーとして、卵型の置物の鍵を持ったネズミを追いかけ迷い込んだ不思議な世界で、クララは、かつて母マリーが女王であったことから、プリンセスとして王国を復興させるために立ち上がる。

 

一見、敵と思われたマザー・ジンジャーが、実は味方で、味方と思われたシュガー・プラムが王国を乗っ取ろうとする悪者だったと言う展開はわかるが、実に雑な描き方なのので、物語に引き込まれていかない。

 

不思議の国の入り口にいたくるみ割り人形の大尉の力を借りて、クララは無事危機を脱出、王国を復興させ、現実世界に帰って来る。

 

帰って来れば、家族も明日に向けて歩み始める。

 

とにかく映像が美しいのですが、CG画面でこの程度は今時というものでもあるし、ストーリーの面白さももう少し満喫したかったです。

 

「へレディタリー 継承」

久しぶりに素直に怖がらせてくれるホラー映画でした。最近、よくわからない内容のホラーが多かったので、その意味でも楽しめました。監督はアリ・アスター

 

グラハム家で祖母エレンが亡くなったところから映画が始まる。葬儀は一通り終わったものの、母アニーに執拗に憎しみを向けて来るチャーリーらに、グラハム家は崩壊していく。しかし、エレンの遺品の中に、私を許してと言うメモを見つけたアニーは、その意味を探り始める。さらに、娘のチャーリーが事故で、首が切断され死んでしまう。

 

気持ちを受け入れるために遺族の会に参加するが、そこで一人の女性ジョアンナと知り合う。彼女は息子を亡くし、降霊術で呼び出したのだと言う。

 

早速、アニーも同じように降霊をしようとするがその過程で何かを呼び覚ましてしまう。そして、エレンとジョアンナは知り合いで、なにやら黒ミサのような事をしていたことを知る。

 

悪の化身ペイモンがこの世に憑依するため男性の体が必要で、ピーターを狙っていた。最初に憑依したエレンは女だったのだ。なにもかも知ったアニーは夫に訴えるが、夫は、アニーを全く信用できなくなっていたが、アニーがチャーリーのノートを暖炉に投げ込むと炎とともに燃え上がってしまう。

 

ピーターはただならぬ様子に、居間に行くがそこでアニーに襲いかかられる。必死で逃げ、庭にある別棟の建物に行くと、ペイモンを崇拝する信者がひざまづき、ピーターは新たな継承者として受け入れられる。こうして映画が終わる。

 

悪魔崇拝ものという作品で、ハイスピードにクライマックスで畳み掛ける作劇が面白い。アニーがミニチュア制作をしている設定も不気味さを生み出している。今時古臭いネタではあるが、ホラーとして楽しめるに十分な出来栄えだったと思います。

 

 

映画感想「おかえり、ブルゴーニュへ」「ステータス・アップデート」

「おかえり、ブルゴーニュへ」

何の変哲もない映画なのですが、ストーリーにリズムがないので何とも退屈な作品でした。監督はセドリック・クラピッシュ

 

フランスを飛び出しオーストラリアにいた長男のジャンが、実家に戻って来るところから映画が始まる。父が倒れ、伏せっていて、ぶどう園はジュリエットと弟のジェレミーが営んでいる。間も無くして父が亡くなり、その相続税の支払いの問題が起こる。

 

農場の一部を手放すかどうか検討しなければいけないが、時は収穫期、まずは果実を収穫し、ワインを作り始める。物語は、淡々とその流れを描くだけで、ジャンと妻との離婚話や、ジェレミーと義父とのすれ違いなども描かれるが、それほど物語に彩りを加えてこないので、とにかくワインを作る流れが淡々と進む。

 

やがてワインも完成。一方、ジュリエットが連絡したこともあり、ジャンの妻はオーストラリアから会いにきて、今後を話す。またジェレミーと義父とのすれ違いもはっきりし始め、誰もが次の未来に進みだす。時は一年が過ぎ、次の収穫の時期が来ていた。こうして映画が終わる。

 

え?これだけ?という感じの作品で、景色の捉え方などが美しいわけでもなく、人間ドラマが描かれているわけでもなく、ただワインを作る過程を中心に展開。本当に何の変哲もない映画だった。

 

「ステータス・アップデート」

よくあるパターンのお話を常道通りに展開するのでわかりやすいし、その意味で普通の作品ですが、楽曲のセンスがいいので楽しむことができました。監督はスコット・スピアー

 

両親の事情で父親と遠く離れることになったカイル。転向した高校には例によって、何をやっても目立つデレクが存在した。カイルの携帯をホッケーのようにおもちゃにして壊され、カイルは仕方なく携帯ショップへ。立ち寄った店には髭面の奇妙な男がユニバースというアプリの入った携帯をくれる。

 

カイルはその男が言うままに、自己プロフィールにカリフォルニアに残してきた車がやって来ると打ち込むと翌朝現実になる。そして、なりたい自分の姿を入力すると現実になることを知ったカイルは、次々と学校のヒーローになっていく。

 

親しくなりたかったダニーとも恋人になり順風満帆に進むのだが、調子になったカイルは大切なものを失い始めたことを知る。そして、全てを元に戻し、これまでの過ちを正しながら、すべて自力で幸福を手に入れていく。まぁ、よくある展開であるが、流れる曲が素敵なので、ミュージカルにしてもいいのではとさえ思えて来る。

 

そして、いつのまにかカイルの周りには親友も恋人もでき、素敵な高校生活が始まって映画が終わる。たわいのない映画だが楽しめる一本でした。

 

映画感想「日本沈没」「幻の湖」「旅路 村でいちばんの首吊りの木」

日本沈没」(1973年版)

映画鑑賞ナンバー1番にしている作品をほぼ50年ぶりにスクリーンで見る。監督は森谷司郎、脚本は橋本忍

 

とにかく懐かしい。小学校時代に見た ので、ほとんどシーンを覚えているが、やはり原作がしっかりしているので今見ても噓っぽく見えない理論武装された展開が見事。

 

民族の行く末を描く根本的なテーマもしっかり描写され、それでいてスペクタクルなシーンも満喫できる。高度経済成長の頂点にこそみる作品と言える映画でした。

 

「幻の湖」

東宝創立50周年作品らしいが、橋本忍東宝に恨みでもあるのかと思えるような珍品映画だった。脚本監督共に橋本忍である。

 

お市という源氏名雄琴温泉のトルコ(今で言うソープ)で働く道子が白い犬と一緒にランニングしているシーンに映画が始まる。お金を貯めて店を辞めるつもりで愛犬シロと毎日走る日々。彼女の素性などの描写は全くない。出入りの真面目な銀行員倉田に恋心を抱いているが、時々見かける笛を吹く男にも興味がある。

 

ある時、シロが何者かに殴り殺され、その犯人が有名な作曲家日夏らしいとわかり、執拗に東京まで追いかけていく道子の姿が中盤。そして、ジョギングに出た日夏をジョギングで追いかけ、振り切られてしまい、帰ってくる。

 

後半、突然、笛の男と出会った道子は、笛の男にいきなり戦国時代の笛のゆわれを延々と話される。ここが中盤から後半。

 

で、倉田と結婚するくだりで終わるかと思えば、店を辞める直前に来た客が、日夏で、延々と包丁を持って追いかけていくのがクライマックス。なんなんだ?

 

そして、追い抜いて、最後に包丁で刺す。場面が変わると笛の男はスペースシャトルに乗り宇宙にいる。そして笛を琵琶湖の上空に浮かべて、映画は終わっていく。

 

で、なんなんだ?とにかく、笑いとも失笑ともつかぬ展開がカルト的な作品として語られることになったのだろう。とにかく、呆れるほどの作品だった。

 

「旅路 村でいちばんの首吊りの木」

これは良かった。原作があるとはいえ、橋本忍らしいサスペンスの組み立てもうまいし、人間ドラマとしても非常に胸に訴えかけてくるものを感じてしまう。秀作でした。監督は神山征二郎

 

山道で旅人らしい男女が一本の木を見上げている。昔、この村の一家七人がこの気で首をつったのだと話すが、枝が高くて、どうやったものか信じていない。そこを一人の女性美佐子が通りかかって映画が始まる。

 

美佐子の息子弘一のいる名古屋へ様子を見にいく支度をしている。娘紀美子同様、村を離れて都会で東大医学部を目指して勉強していたが、弘一は受験の失敗が続いていた。過疎が進むこの村では医者がいなかったために美佐子の夫は死んだのだ。その見返しのために子供達に医者になることを美佐子は求めた。

 

名古屋についた美佐子が浩一の下宿を訪ねると留守で、てっきり、付き合ってるらしい女性の所だろうと女性のマンションに向かう。そこで、その女性の上司深見と一緒になり部屋に入ると、そこに手首を切りとられて死んでいる女性の死体があった。

 

行方不明の弘一に容疑がかかるが、断固として否認する美佐子。捜査も進まない中、ある時、美佐子の村で雪崩が起こる。そしてその雪崩から弘一の死体が出る。しかも解剖すると胃の中から鍵が出てくる。いよいよ謎が深まる中、紀美子の入試は無事に終わる。

 

紀美子は母に手紙を出す。それは今回の事件の自分なりに考えた謎解きだった。母美佐子が最初に女性に部屋に入り、手錠でつないで自殺した弘一と恋人を見つけたのだ。美佐子は、自殺で済ませて紀美子の受験に差し障ってはいけないと、手首を切り殺人に見せかけ、弘一の死体は車のトランクに積んで村に戻った。

 

弘一の恋人はおもちゃメーカーに勤めていて、自分が考えたFBIセットの道具の中の手錠で二人をつないだのだ。弘一から出てきた鍵はその手錠のものだった。美佐子は最初に発見し、ボタンを落としたことに気がつき戻ったがそこで深みに出会ったのだ。そして深見も現場のボタンに気がついていたし、鍵の謎も分かった。

 

美佐子は深見に口止めするつもりもあって、再度会い、体を重ねてしまうが、深見は美佐子への純粋な愛情が芽生えてしまう。そして深見は紀美子に会い、母に自首するよう進めることを提案したのだ。

 

しかし、ほとんど正しい紀美子の推理だが、本当は弘一の恋人の女が憎いだけで手首を切ったと告白。間も無くして手首も発見され、刑事達が美佐子のところにやってきて、出頭を促して帰る。

 

雪がしんしんと降る中、美佐子は縄を首吊りの木にかけ、自殺する。雪が積もれば容易に縄をかけることができるのだ。

 

春が来て、紀美子が墓参りにやってくる。映画は彼女の一人語りで終わる。単純なサスペンスの背後に、母の思いが錯綜するストーリー展開が素晴らしい一本で、グイグイと胸に迫ってきます。なかなかの力作、見事でした。