「ファースト・マン」
手持ちカメラとクローズアップを多用した映像演出で重苦しくて仕方なかった。確かに人間ドラマとして描きたかったのだろうが、あれほどの偉業がアメリカではどのように捉えられているのかが前面に押し付けられてきた感じでしんどい作品でした。監督はデイミアン・チャゼル。
主人公ニールが成層圏を超えるマッハのスピードで運転するとジェット機にのっているシーンから映画が始まる。操縦が不能になりなんとか地球に帰還してカットが変わる。彼には不治の病の幼い娘カレンがいて、その治療に余念がないが、その甲斐なく彼女は死んでしまう。そして、先日来からの彼の操縦を問題視した上層部は彼をパイロットから外す。そんな時、NASAが宇宙パイロットを募集しているという記事を見て、応募、採用される。
時は1961年、ソ連との宇宙競争に必死だったアメリカで、ソ連に追いつけ追い越せで、ジェミニ計画を推進、月に人間を送り込む計画を進めていた。
しかし、多額の税金とパイロットを危険に晒すということで反対運動も激しかった。そしてジェミニ計画からアポロ計画へ、いよいよ具体的なプロジェクトが進みはじめるが、突貫プロジェクトであることは明らかだった。
友人がその計画の中で事故死をしたニールだが、指名されるままにアポロ11号の船長を引き受ける。カメラはほとんどが彼らのバストショット以上で捉えていくので、一見華やかなはずなのに内面の苦悩ばかりが前面に出る映像となっている。
クライマックスは、月面着陸のシーンとそれに沸く世界の人々を写し、帰還して隔離室にいるニールに妻のジャネットが面会する場面で終わる。
あれほどの偉業がなぜ今まで映画にならなかったかがどこかわかるような一本で、決して華やかではなかったのかもしれないが、現実にリアルタイムで見た私としては、もっとたたえてもいいのではないかと思います。確かにリアルを追求するのも正しいですが、夢を見せるのも映画の役割ではないかと思います。
ほとんどが手持ちカメラクローズアップなので、クライマックスの宇宙シーンも小さく見えてしまったのが残念です。とはいえ、これもまたアポロ11号の物語だと思うと、感慨深いものがありました。
「ゴッズ・オウン・カントリー」
元来ゲイの映画が嫌いなのです。この作品も評判なので見に行きましたが、どうも感情移入はできませんでした。ただ絵作りは美しいので救いでしょうか。監督はフランシス・リー。
農場を経営する父の元で、反抗的で行く末を模索しているジョニーが、この日も酒を飲みすぎて吐いている場面から映画が始まる。そして、バーに行って行きずりの男とSEXする。彼はゲイなのだ。
父は足が不自由でまともに仕事ができないのでジョニーに色々いうが、ジョニーがしっかり仕事をしないので苛立っている。さらに祖母もそんな孫に嫌気がさしている。
羊の出産シーズンが近づいてきて、父は勝手に手伝いの男ゲオルゲを雇ってしまった。最初はうけいれられないジョニーだったが、すぐにゲオルゲに惹かれ始め体を交える。そうなるとジョニーは今までと打って変わって真面目に仕事をするようになる。
しかし、息子の様子がどこかおかしいことに気がつく父と祖母。まもなく、父が発作で倒れる。甘えが抜けきれないジョニーは、なんとかこれからもゲオルゲにいて欲しいと頼むが彼は戻るという。自暴自棄になり、ゲオルゲと飲みに行ったバーで別の男と交わるジョニー。それに嫌気がさしゲオルゲは帰ってしまう。
やがて父は戻ってくる。気持ちを入れ替え頑張る息子を褒めてやり、息子の気持ちを認めてやり、息子のやりたいようにやることに賛成、ゲオルゲを迎えに行かせる。
最初は拒否するゲオルゲだが、ジョニーへの気持ちは変わらず、ジョニーの求めに応じて農場に帰ってきて映画が終わる。
ラブストーリーという触れ込みだが、要するにゲイの映画である。もろに男同士が抱き合うフルショットは見たくないし、どうもこの描写はいただけない。ただ景色の撮り方が美しいのでそれは救いという感じの映画でした。
「王朝の陰謀 闇の四天王と黄金のドラゴン」
全く、このシリーズにハズレはない。というよりツイ・ハーク監督作品にハズレがないというべきか。話はめちゃくちゃながら、勢いだけでどんどん見せてくるし、エンタメ性はハリウッド映画なんか足元にも及ばないから、とにかく楽しいのだ。
唐の時代、皇帝から、あらゆる人々を正義の元に罰することができる最強の神器降龍杖を判事ディーが授かるところから映画が始まる。強大な力を授けたことで自身の権力に災いが訪れることを懸念した皇后の則天武后は、降龍杖を手に入れるべく方術を使う怪しい異人組を雇い、司法長官のユーチに指揮させてディーを襲撃させる。
ところが、実は皇后は、封魔族に妖術で操られていて、巨大な龍が皇帝たちを襲ってくる。しかし、それも封魔族の妖術であるとディーたちが見破り、皇后の権力争いに乗じて自らの一族の積年の恨みを晴らし唐を滅ぼさんと画策していた封魔族と戦う決意をする。
ディーは親友のユーチと手を組み、封魔族の妖術を破るために三蔵法師の弟子であるユエンツオー大使に援護を頼む。一時は断ったユエンツオーであったが、自分の悟りの最後の試練こそ封魔族の積年の怨念を解放してやることだとわかり、急遽援軍として巨大な白猿に乗って現れる。
とにかく、オープニングから展開するワイヤーアクションの面白さに加え、CGで飛び交う飛び道具の面白さ、さらに龍や不動明王などの巨大な化け物の登場にスクリーンから目を離せないし、クライマックス、大理寺で、屋根の上を縦横無尽に舞う封魔族とその飛び道具を交わしながらのディーたちの攻防から、巨大な魔人の出現、そして白猿との一騎打ちなど、見せ場が目白押し。
ラストは、ユエンツオー大使によって封魔族の積年の怨念があっさりと解かれ、皇帝たちも無事王宮に戻るのだが、則天武后の権力欲は消えていなくて、その後皇帝となった旨のナレーションが入り映画が終わる。
面倒なサスペンスやミステリーはさておいても画面を見ているだけで面白い。こういう作品こそIMAXで見てみたいものである。さらなる続編を楽しみにします。