くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「手紙」

手紙

かなり迷っていたこの「手紙」、まもなく公開終了というところで満を持して見に行きました。
重い、確かに重厚なドラマである。

たった一人の弟の学費を作るために、出来心で空き巣に入ったところで誤って老婦人を殺傷してしまった兄。刑務所に入った兄と残された弟との手紙のやりとりを中心に物語は進んでいきます。

この映画で知りましたが、刑務所からの検閲済みの手紙には桜の印が押してある。冒頭シーン、わざとらしい桜の木の下で兄からの手紙を読む弟の持つ手に桜のは案ビラが落ちて手紙の桜の印に重なる意味がようやく後半部でわかるのです。

直木賞作家東野圭吾原作のドラマに「白夜行」に続いて主演したのが山田孝之。そして、共演は沢尻エリカ。この沢尻エリカがいい。関西弁でしっかり者の女性を演じるのだが、今まで、関西弁が似合う若手女優は池脇千鶴だけかと思っていたので、再発見。しかも、テレビドラマではぱっと思っていなかったが、スクリーンでh亜実力を発揮することも再発見。考えてみれば「パッチギ!」で初めてみたのを思い出しました。あのときの彼女もかわいらしかったのにね。

で、出身はと調べてみると、これが東京都出身、しかもお母さんがフランス人というからいわゆるハーフなのだ。にもかかわらず見事な関西弁、しかも情感満点。そういえば「パッチギ!」では在日朝鮮人二世を演じたのだからお得意中のお得意なのか?

話は戻って、映画についてですが、そんな重く、まじめな作品なのですが、まっすぐにみることができました。やはり、まじめにみてまじめに感動する。そしてまじめに涙するのが一番ですね。

冒頭からデジタル処理された映像が続くので、これはまた、技巧に凝っただけの若造の演出の映画かと思いきや、そんな冒頭シーンはあっけなく終わって、本編はひたすら、犯罪者の兄を持ったゆえに差別に苦しむ弟山田孝之のうつむいたドラマに終始します。

たった一人の兄、その兄は刑務所の生活にただ一つの希望としての弟からの手紙を楽しみに毎日を送っています。弟も、自分の学費のために犯罪まで犯してしまった兄を慕いながら手紙を送る一方で、差別に苦しんで、胸を張って生きられない自分が歯がゆく、兄を恨むでもなく恨んでいる自分に矛盾を感じて生きています。

そこに絡んでくるお金持ちの令嬢吹石一恵、ひたすら見守る沢尻エリカ。そして、漫才のコンビである尾上寛之との友情。さりげなく絡んでくる人間関係の中に手紙というアナログな通信手段が非常に存在感を持って、じわじわと胸に迫ってくるのは何ともいえない。しかも、主人公の素性がばれる原因がネットの掲示板等の演出もみられて、この好対照もなかなかのものですね。

何のわだかまりもなく、素直に物語にのめり込んで作品を楽しむことが本当にすばらしいことを再発見知るとともに、映画って本当にすばらしいなぁって改めて感動しました。

もちろん、ラストはハンカチで涙を拭きましたよ。