くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「脳内ニューヨーク」

脳内ニューヨーク

マルコヴィッチの穴」のスパイク・ジョーンズが製作に回り、名脚本家チャーリー・カウフマンが初監督に回った作品である。というより、宣伝フィルムを見たときから興味を引かれていた作品でした。

現在の生活に凡々たる物を感じ、しかも物事があまりよいほうに進まない。そんな時、手にした演劇の優秀賞受賞による大金。その大金を元に自分が理想にするニューヨークを巨大な倉庫の中に作り上げようというのが物語である。
現代と、劇中劇が絡み合い、さらに空間と時間が複雑に交錯する物語は、一見わけが判らなくなるようでありながら、いつの間にかその不思議な世界へ引き込まれてしまいました。

非常に短いカットをつなぎ合わせていく映像スタイルは、冒頭部分はかなりせわしない感じがしますが、計算されつくされたシーンごとのカットの連続はすんなりと私たちにこの物語のシチュエーションを飲み込ませてくれるからすごいですね。このあたりチャーリー・カウフマンを天才脚本家と言わしめるだけあると思います。人物関係や設定がわからないと、本編に入ってからの劇中劇が訳がわからなくなるのですから。

現実の登場人物のなかに劇中劇で演じる自分が登場し、一人が二人に、そして本人と物語の中で演じる俳優たちが絡み合って、そこへちりばめられたさまざまな物語の伏線は正直なところ、一回見ただけではすべて把握したとはいえないように思います。作品としては明らかに一級品で研ぎ澄まされた秀作というべきものですが、この作品のよさをさらに理解するにはもう2回は見ないと難しいかもしれません。

とはいえ、次々と物語が進み、やがて張り巡らされた伏線が解きほぐされて、エンディングの白い画面が出ると、なんともいえない素晴らしい感動が呼び起こされます。
主演のフィリップ・シーモア・ホフマンが素晴らしいうえに、周りを取り囲む女優陣サマンサ・モートンミッシェル・ウィリアムズなどが非常に魅力的で複雑なストーリーを引っ張っていく力になっていますね。

本当に完成された良い映画でした。もう一度みたい。