くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「パブリック・エネミーズ」

パブリック・エネミーズ

いい映画でした。マイケル・マン監督の映像芸術が満載、堪能した作品でした。
ジョン・デリンジャーに扮したジョニー・デップ、対するFBI捜査官パーヴィスのクリスチャン・ベイルがすばらしい。

冒頭から、刑務所をものの見事に脱獄する場面から始まるのですが、空が非常に美しい上に、非常にシャープな映像に引き込まれてしまいます。舞台背景は世界大恐慌時代の1930年代、しかしマイケル・マン監督は妙に古びた色彩加工はせず、まるで、その場にいたかのようなシャープな画面を作り出すことで、ジョン・デリンジャーをかえって神格化せず、スクリーンの中にリアルに浮かび上がらせることを試みたようですね。

デジタルカメラを有効に利用し、超望遠の遠景と近くの俳優のアップをひとつの画面にはめ込んでみたり、走ってくる汽車を接近でとらえてみたり、当時の飛行機の場面をまるでレトロ映画のように登場させてみたりとモダンでスタイリッシュな映像を創り出しています。

また、スローモーションや回転するカメラワーク、長回しで俳優の動きを捉える、窓の外に走る汽車の夜景をはめ込んだりを多用したテクニカルな撮影も見ていて本当に魅了されます。

モダンでスタイリッシュな映像はトニー・スコット監督もよく引き合いになりますが、マイケル・マン監督はあの殺伐とした都会が、どこにあんな美しい景色があったのかと思えるほどの美しい構図を捕らえます。しかも汽車や車、小道具への光の当て方も本当に美しく、独特の美しい陰影を生み出すあたり、息を呑みます。
今回の作品でも、銃をアップで捉えたときの立体感のある影、黒光りする輝きなどもまるでスチール写真のようです。

物語は実在の銀行強盗、ジョン・デリンジャーの半生を描いているのですが、一方に存在するFBI捜査官パーヴィスが、当時の上層部、フーヴァー長官のやり方などに複雑な矛盾を覚え、疑問を持ちながらデリンジャーを追う姿が見事な演技でこれも見所ですね。

さまざまなところに作為的な美しい映像を挟み込み、ラストシーン、デリンジャーのサングラスに写る捜査官のカットなど、背筋がぞくっとするほどの映像美ガ展開、そしてラスト、ビリー(マリオン・コテイヤール)がいる刑務所に最後の言葉「バイバイ、ブラックバード」を届ける捜査官の小粋な終わり方は、まるでロマンですね。

こうしたフィルムノワールのような都会的な映画を作らせると本当にマイケル・マン監督はうまいです。