くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ブライト・スター〜いちばん美しい恋の詩(うた)〜」

ブライト・スター〜いちばん美しい恋の

19世紀イギリスの天才詩人ジョン・キーツの最後のひと時を恋人ファニー・ブローンの視点からつづったラブストーリーです。

二人の恋物語の起伏に添って色彩が変わっていくという本当に美しい映像で、しかもジェーン・カンピニオン監督の女性らしい優しい画面の展開が本当にうっとりさせてくれる映画でした。

キーツとブローンが出会うまでの出だしの画面はほとんどモノクロームに近いほど背景は薄いブルーで、不似合いなほどけばけばしいブローンの真っ赤な服装などでアンバランスな画面作りになっています。そして、やがてキーツと知り合い、愛がはぐくまれていくと、背景に美しいはるの草花が咲き乱れ、登場人物の服装さえ、温かい色調が中心になって、画面全体から暖かさが伝わってくるほどに変化していきます。

そして終盤、病魔に冒されながら、引き裂かれていく二人の運命を象徴するように次第に画面から色彩が失われていき、そしてキーツの死によって喪服となったブローンが闇に包まれんとする森の中に消えていくラストで完全に色がなくなる。

二人のラブストーリーはほんの2年間しかなかったということですが、そのはかなさの中に次々と挿入されるキーツの詩が物語を運んでいく展開は本当に女性の目から捕らえた繊細な演出ですね。

ただ、それぞれの登場人物がいまひとつ人間味を感じさせない、ちょっとあっさりと描きすぎた感じもしないでもなく、キーツと同居しているブラウンという人物も物語の本筋にかかわり方がもう少しあってもいいのではないかと思います。
その点は終盤で登場するキーツの友人の描き方にもその辺の弱さがあるように思えました。

全体には無難な映画で、英国の風景の描写も美しく、一見の値打ちはあったと思います