くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「グラン・ブルー デジタルリストアバージョン」

グラン・ブルー

リュック・ベッソンが1988年に監督した「グレート・ブルー」にシーンを追加し、さらに傷を取り除いたリマスターバージョンの作品を見てきました。
美しい海、空、ブルーを基調に描かれた画面は透き通るような印象を持つほどにすがすがしく、ストーリーの展開も妙にくどくなく淡々と展開していくのは爽快感を覚えます。

2時間40分以上の長尺作品であり抑揚のない展開なのですが、それぞれのエピソードが妙にこだわらずに描いていくので作品としてのまとまりが非常に優れています。

物語は伝説のダイバー、ジャック・マイヨールの物語なのだそうですが、イルカと戯れる幻想的なシーン、ラスト、ベッドで寝ていたジャックの天井が海に変わるシュールなショットなどのオリジナルな画面がすがすがしいほどに美しかった。

映画が始まると1964年、画面はモノクロームジャック・マイヨールとエンゾの幼い日々が描かれます。ガキ大将のエンゾとおとなしいジャック、お互い泳ぎに関して子供心に競争心はあるものの同じ色を持った仲の良さも見えている。そんな誰にでも覚えがあるような懐かしい関係をこの冒頭のシーンで見事に描いていきます。

時は移って1988年。ここから画面は完全にカラーに。美しいシチリアの海、透き通るようなブルーの空、そんな中、不燃に閉じこめられた潜水夫を助けるために自慢の巣潜りをするエンゾと弟の姿で始まります。そして、その報酬で1万ドルを稼いだ彼らは幼なじみで今はどこにいるかわからないジャックのことを探すことに。

一方のジャックはアンデスで氷の湖に素潜りをしています。そこへアメリカからやってくる保険の調査員ジョアンナ。やがて、ジャックはコートダジュールで20年ぶりにエンゾに会いフリーのダイビング大会に出るように勧められます。
天性の才能を持ち、まるで海の申し子のようにイルカとも心を通わせるようなジャックの人柄、こちらも運動能力の才能でフリーダイビングの世界チャンピオンになっているエンゾ。エンゾは幼き日からの何気ないライバル心を持ちながら一目置くジャックを弟のようにかわいがります。

ここにジャックに一目惚れしたジョアンナがからんで物語はいつしかどこか切ない青春ラブストーリーの様相も帯びてくるあたりの展開は何とも美しいです。

ラスト、人間の限界に臨んで自ら死を選んでいくエンゾ、彼の死を見送り天性の感覚で海に関わっていくジャックの姿で映画は終わりますが、ラスト、イルカと一緒に深い海に泳いでいくジャックの姿はまるで幻想的な人魚の姿のごとしです。
所詮、人間の恋人としていられなかったジョアンナが岸辺で泣き崩れるショットと対比してよりいっそうファンタジックに見えるラストシーンです。

海と空の美しい映像と若者たちの青春の一齣のようなすがすがしさ、イルカのシーンを多用した幻想的な海洋シーンの数々、海に対する並々ならぬ思い入れが手に取るように伝わってくる作品でした。