くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「リミット」

リミット

棺桶のような木箱の中に手足を縛られて生き埋めにされた男の奮闘劇を描くサスペンスミステリー。と、宣伝フィルムを見たときからおもしろそうなイメージで期待もしていたが、よく考えると、あの閉鎖空間のシーンだけでどれだけ見せるのか不安もありました。
映画が始まると、まるでヒッチコック映画のように、ソウル・バスのイラストよろしく、バーナード・ハーマンの音楽がごとく線に彩られたイラストが縦横に流れ、スタッフキャストのロゴが現れては消えていく。このタイトルシーンは近年のサスペンス映画の中で卓越した場面といえ、これはなかなか過去の名作を熟知したスタッフの力量かと期待を持たせてくれます。

タイトルが終わると画面は真っ暗になり、しばらくなにも映りません。しばらくして物音がし、続いてライターの炎に男の顔が浮かび上がって映画は本編へ。
縛られていた縄をほどき、見つけた携帯で外部へ電話をしながら、救出を求める一方で、本国に残してきた妻への想いや犯人とおぼしき人物とのやりとりなど緊迫感あふれる展開という筋立てなのですが、いかんせん、退屈。一本調子に展開する電話でのやりとりが続きすぎる上に、頭上の爆破による砂が流れ込んでくるサスペンスや蛇が忍び込んでくる緊張感などのプロットの挿入部分のタイミングが悪い。90分あまりというのにやたら長く感じるのは、前半の電話でのやりとりがしつこいためではないかと思う。

主人公ポールはどうやらイラクで拉致され、その身代金のために生き埋めにされたというのが物語らしいが、よく考えるとなんで生き埋めに?という矛盾が生じてくる。ストーリーを追っていきながら、ただ、閉鎖空間の狭苦しい展開のオリジナリティに注目しているにもかかわらず、どこか入り込めないのはこの物語の矛盾であった。名作「セルラー」とある意味同様の組み立てであるが、あの作品はストーリーにちゃんと必然性があった。ところがこの「リミット」にはそれがない。

「ソウ」のように、訳もわからず生き埋めにされて、いわばミステリーホラーのように仕上げていけばもっとおもしろかったと思いますが、イラクFBIなどが登場して、リアリティな部分が組み込まれると矛盾が生じてきて、それ以上入り込めなくなってしまったのでしょう。
結局、ラストはかなり前から予測がつく展開であり、FBIが突き止めたポールの居場所、掘り進む様子の電話でのやりとりから、ラストシーン、実は掘っていたのは別人のところ、ポールは入り込んでくる砂に生き埋めにされてしまうエンディングまで、あまりにも伏線が弱い。

興味を引かれる物語にもかかわらず、今ひとつ盛り上がらないのは結局その点だったようです。残念。