くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「グリーン・ホーネット」

グリーンホーネット

この手の映画に妙な理屈をつけるのはよくない。単純に楽しめればいいのである。とはいうものの、やはりどんな映画にもおもしろい、おもしろくないがあるように、できばえが悪いとつまらない退屈な映画になる。
と、こう書き出すとおわかりかと思うが、この映画、なんともテンポの悪い娯楽映画だった。何がどうというのは無いのだが、登場人物に魅力がない。もちろん、オリジナルなストーリーや登場人物はずっと昔のテレビヒーローである。そして、オリジナル版で助手のカトーを演じたブルース・リーが後にカリスマ的な大スターになったことでも有名な作品である。

それゆえか、オリジナルではあくまで主人公であるグリーン・ホーネット(ブリット・リード)が正義のヒーローであり、そこに付属的に個性的なカトーが存在するという構図でストーリーが展開する。ところが、今回のリメイクではオリジナルのカトーがブルース・リーであったいうこだわりか、グリーン・ホーネットとカトーの掛け合い漫才のように対等にヒーローとして登場させている。しかも、ブリット・リードを演じたセス・ローゲンも微妙に髭を蓄えやや中年太りの様相が顎に見えるどう見てもヒーローになり得ない貧弱さであるし、カトーを演じたジェイ・チョウも今ひとつカリスマ性にかける上に、ブルース・リーほどのアクションの切れがない。結果、このふたりの掛け合いヒーローのおもしろさが全くつまらないのだ。

しかも、この手のヒーロー物に必要な悪役がなんとも線が細い。先頃「イングロリアスバスターズ」でアカデミー賞を取ったクリストフ・ヴァルツがチュドノフスキーという悪役のボスを演じているのだが、何ともスマートすぎて、クライマックスで妙なことを言い出して、赤いジャケットにマスクをして登場しても狂気的に見えない。冒頭の登場シーンからしてありきたりだったので、これは雨だなと思っていたらやっぱりだめで、とてもこの一体を牛耳っている大ボスにみえない。

さらに、広いんで登場するキャメロン・ディアス扮するレノア。彼女も全く生かし切れていないのである。この手の娯楽映画には常連でかつ彼女の魅力が映画を華やかにするのだが、今回はなんの効果も無し。

ストーリーについても、ブリット・リードがグリーン・ホーネットになるまでの下りが何ともしつこい。さらにその後の宣伝行動もやたら工夫がない。そしてクライマックスの愛車ブラックビューティを乗り回して大暴れする下りもいかにもいまさらありきたりなのだ。というより、グリーン・ホーネット暗殺のためにチュドノフスキーが号令をかけて、スプリットイメージで次々と女たちにナイフなどを配っていく様子、当然、彼女たちが個性あふれる殺し屋として登場するのかと思いきや、あの後なんにもなし。??という感じである。

結局、せっかくUSBに録音したはずの暴露音声も録音されていないという落ちの上にさらにドタバタがあって結局エンディングって、いったいそれぞれのプロットやシーンはなんのためにあるのというできばえである。
ここまで適当に作られると、まいってしまうのだ。いくらB級エンターテインメントを思ってもひどすぎる。
車から脱出してシートにつながったパラシュートで降りてくるホーネットとカトーの下りやラスト近く、オリジナルテーマが流れてブラックビューティが白から黒にハイテクで変わるシーンは楽しいのだが、いかんせん何ともしがたいできばえだった。とても名作「エターナルサンシャイン」を監督したミシェル・ゴンドリーの才能と思いがたい一本でした。残念、