くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「エンジェル・ウォーズ」「ザ・ライトーエクソシストの真実

エンジェル・ウォーズ

「エンジェル・ウォーズ」
ザック・スナイダーが描くSFアクション。当然、所狭しと展開する3D映像が最大の見せ場である。

映画が始まるとスローモーションの画面と映像にマッチングした音楽で物語の前提が語られていく。突然、死んでしまった大富豪の母親、そしてその遺言を開いている義父が、すべての財産を二人の娘に譲るという文言に激怒、娘二人を襲うために迫ってくる。そして、それに対抗したブロンドの少女ベイビードールとなる主人公が謝って妹を撃ち殺してしまい、これ幸いと義父に精神病院へ送れられる。ここまでの映像は実に見事で、一気に引き込まれる。

ここから、物語は現実ともフィクションとも呼べない不思議な世界へ入り込んでいく。あわやロボトミー手術を施される寸前で舞台は精神病院からいかがわしい売春宿に。そこからの脱出をするために作戦を練っていく主人公たちの少女の物語が本編となる。

主人公のベビードールが踊り出すと画面は完全な3Dゲームの世界に変わり、そこで次々とバトル戦が繰り返される。一つ終わると次のステージへ進む下りやベビードールの衣装がミニのセーラー服で、その上おさげ髪となれば明らかに日本のロールプレイングゲームの主人公である。その彼女たちが、武者と戦ったり、ドイツ軍の基地を攻めたり、列車から爆弾をとりださんとしたりと完全にゲームワールド。そしてその画面が圧倒的な3D映像で迫力満点に描かれるから正直楽しい。

そんな世界以外の部分の物語は何とも適当なストーリーで、なんのドラマ性も感じられないし、人物同士の感情の行き交う展開もほとんどリアルに伝わらないけれど、派手な3D画面を楽しむだけでも十分値打ちのある映画だったと思います。

結局、ベイビードールはロボトミー手術をされ、唯一生き残って脱出したメイプルがバスに乗っていずこへともなく去っていくのがラストシーン。

ただ、主演のエイミー・ブラウニングが何ともかわいらしくないし、老け顔なのですよね。小柄で目も大きいし、まさにゲームのキャラのごとくなのですが、きりっとしたかわいらしさが全くないために最後まで彼女に入り込めませんでした。

とはいえ、大画面で3Dのオンラインゲームを楽しんでいるという感覚の映画で、十分楽しめる作品であり、これこそ大スクリーンならではの一本かもしれません。


「ザ・ライトーエクソシストの真実ー」
ひさしぶりにすばらしい映画に出会いました。画面の調度品や、壁の汚れ、模様に至るまで計算された映像、さらに階段や窓から見下ろした地面のカット、さらに孤独感にさいなまれてたたずむ子供を真正面からとらえたショット、そのほかカメラアングルやカメラワークが実に美しい。

さらにシーンとショットの編集のうまさも絶品。
若きマイケルが神学校を卒業し、悩んでいるところ、夜の町で、目の前で女性が交通事故に遭う下りの見事なカットつなぎ、冒頭の死体を洗うショットから縫うようにカメラが流れる水をとらえるショットのく見立てのうまさにも驚いてしまいます。

さらに、丁寧にプロットを積み重ねていくマイケル・ペドローニの脚本のすばらしさにも感嘆します。
ルーカス神父につれられて少年の悪魔払いをしにいくくだりで、ルーカス神父が枕から蛙をだし、それをまるでフェイクのように扱った後、帰ってからその鞄にもう一匹の蛙をマイケルが見つける。実はルーカス神父はフェイクでも何でもなく、ついてきた蛙は本物の悪魔であるという伏線から、しだいにルーカス神父が悪魔にとりつかれていく下りまでの見事なドラマ展開は絶品です。

物語は題名からはホラー映画の名作「エクソシスト」の亜流のごとく感じられますが、全然違います。
葬儀屋を営む父から逃げるように神学校へ入り、やがてバチカンエクソシズムの研修にでることになる若き神父マイケル。そこで熟練のエクソシストであるルーカス神父とで会う。

しかし、エクソシズムを信じがたいマイケルは常に疑いの目でルーカス神父につきそう。
しかし、妊娠していた少女を救えなかったルーカス神父が、失意の中、心の透き間に悪魔に入り込まれ悪魔に疲れてしまう。その現実に目を背けることができず、悪魔の存在を信じざるを得なくなったマイケルは必死でエクソシズムをおこないルーカス神父を救う。

実話にも続くリアリティもすばらしいが、ルーカス神父がマイケルに「首が回ったり、ヘドを吐くと思っていたか?」と茶化す下りがなんともユーモアが聞いているし、前半、どうにも悪魔を信じられないマイケルが、いかにして信じるように心が変化していくかを描く展開が実に自然で見事である。

さらに、百戦錬磨でスーパーマンのように見えるルーカス神父が悪魔に見入られ、豹変して罵る下りのアンソニー・ホプキンスの演技も鬼気迫り見事で、これといった派手な特撮がないにも関わらず寒気がするほどに怖くなってくる。

最初に書いたが、マイケルが窓から見下ろしたときに雪景色の地面に見えるロバの足跡、さらに真っ赤な目をしたロバ、さらにいつのまにか雪景色が消える幻想的なショット、助けを呼ぶために教会へ駆け込んだときの階段から見下ろす独特のアングルショット、母親の棺が埋葬される時の真上からのショット、挿入される人物のクローズアップ、ルーカス神父が拘束された部屋で倒れたライティングデスクの右端に斜めにおかれたアングル、マイケルを最後に見送るルーカス神父の背後のイエローの壁の模様のショットなど、実にみごとである。

なんといっても、この作品の秀逸な点は、映像づくりのすばらしさの上に登場人物の心の変化が見事に描かれている脚本のすばらしさとミカエル・ハフストローム監督の演出にあると思います。

もう一度ゆっくり見てもまた何か発見できるのではないかと思われる一級品の作品であり、ホラー映画のゲテモノのように仕上げていない格調の高い芸術作品であったと思います。すばらしい。