くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「若き日の信長」「銭形平次捕物控 からくり屋敷」「銭形

若き日の信長

「若き日の信長」
竹を割ったような小気味の良い映像とストーリー展開に爽快な思いで映画を見終えることができる、そんな傑作がこの作品といえる。

物語は今更言うまでもなく、尾張のうつけ者といわれる織田信長の若き日の物語、クライマックスは桶狭間の戦いであるが、その直前で映画は終わる。

静と呼べる映像で淡々と信長の日常を描き、奔放な性格である一方で諜報術策を巡らして敵を攪乱する信長の名将たる部分もしっかりと描く。そして、じわじわと迫ってくる今川義元の脅威。

いよいよその危機が目の前にきたとたん、映像は一転して動へと変換される。雷が鳴り響き、稲妻が信長を照らす、そしてその様式美の世界が最高潮に達したところでいっきに馬に乗った信長、そのほかの武将が桶狭間へ疾走するクライマックスは見事と言うほかない。

走る走る、野を駆け、山をかけ、そしていよいよ今川義元の本陣の真上に、広がる軍勢をシルエットでとらえ、頂点に達したところで終の文字がでる。

まさに、竹を割ったごとく一刀両断で締めくくる森一生の演出にうならせられる一本。これが映画全盛期の時代劇である。みごと!

銭形平次捕物控 からくり屋敷」
銭形平次シリーズの一本であるが、なんともふつうの娯楽時代劇でした。テレビレベルのストーリー展開、これといって目を見張る画面もありません。森一生らしい切れの良さも見られません。正直退屈なところもなきにしもあらずだったのは、フィルムが古いために見苦しかったことも関係があるかもしれない。

見せ場の投げ銭シーンは取り立てるほどのショットでもないのは、今の映画がやたら懲りすぎているといえなくもない証拠かもしれない。

銭がなくなった平次が小判を投げるクライマックスはとにかく笑えます。それに、途中で歌が入ったり、おふざけというか、この時代の映画は娯楽のムードがそのままの単純な娯楽映画でした。

銭形平次
長谷川一夫銭形平次の第一作目、正当な推理ドラマの形式をとった娯楽映画でした。

映画が始まって、橋の上から川で死んでいる男をみる群衆シーンで幕を開けます。そして、続いて第二の殺人が起こり、下手人と思われる関係者を平次が次々と尋問するハイテンポな場面が続きます。この展開は実にスピーディで、それぞれのアリバイやらを問いつめる下りはなかなかのものです。

ところが、真相はいっこうに明らかになってこない。そして三人目の犠牲者。次第に見えてくる事件の真相。そこへ関係者の一人の女が密かに平次に想いを寄せる下りやら、妻お静の嫉妬やらも絡んできて物語に深みが備わってきます。

正当な推理ドラマとして運んでいく展開がいよいよクライマックスになって、やはり銭を投げるシーンがなければ銭形平次ではない。とってつけたようなクライマックスの乱闘シーンですが、めったやたらと銭を投げる長谷川一夫がどこかコミカルでさえあるところがなんとなくユーモアもあっていい。

そして、平次に想いを寄せる女はお静を助け、お静の腕の中で息絶える。手には銭が握られているというちょっと切ないショットも交えて、めでたしめでたしで映画は終わります。

さすがに第一作の貫禄というか、出来映えは「からくり屋敷」より格段にレベルが高い。そして、当時の娯楽映画らしい貫禄も備わっている。のですが、スターは長谷川一夫だけというちょっと寂しいものがないといえなくもないのですよね。それが物足りない一本でした。