くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「愛の勝利を ムッソリーニを愛した女」「4月の涙」「化身

愛の勝利を

「愛の勝利を ムッソリーニを愛した女」
ベルトリッチ二迫る映像を創造したといわれるマルコ・ベロッキオという監督の作品。内容的にあまり好みではないのですが、そのキャッチフレーズに期待して見に行きました。

物語はイタリアの独裁者ムッソリーニがまだ若き頃に愛した女性イーダの物語。一度は愛したもののやがて、ムッソリーニファシスト党の党首からやがて国の最高権力者へ上り詰めていく。そして、彼をひたすら慕うイーダを葬るべく彼女を、そしてその息子を精神病院へ入れ社会から抹殺しようとするのです。

もちろん、ムッソリーニが直接指図する場面は一度も登場しません。展開の中から伺いしれるストーリーですが、繰り返し病院での生活やらイーダのひたむきにムッソリーニとの結婚の事実を訴えるシーンの連続は次第に飽きてくるのは事実です。

字幕や映像を重ね写して独特の画面を作り出していきますが、キャッチフレーズにあるほどの独創性は見あたらないし、正直芸術的な格調の高さは見られない。ドキュメント映像を挿入したり、時に当時公開の映画が病院などで上映される様子が写されたりとかなり映像表現にこだわる演出は多々見られますが、息をのむほどの画面には最後まで出会いませんでした。

強いていうと、イーダが病院の柵に上って手紙を巻く場面は深々と降る雪の中での幻想的なシーンですが、同じシーンを少し前に描いているので、なぜまたここで繰り返すのかまったくわからなかった。

結局、ラストで修道女によって逃がしてもらったイーダは叔父の家にやってきて、大勢の人々に囲まれながら再び病院に戻されていきます。そして、その後のイーダ、その息子、そしてムッソリーニの最後がテロップされ映画は終わる。

何度も書きますが、圧倒されるほどの映像表現もないし、ストーリー展開にも今一つ秀逸なリズムは感じられない。駄作とはいいませんが、大した作品ではなかったというのが私の感想です。

「4月の涙」
フィンランドの寒々とした風景を背景に描かれるラブストーリーとも人間ドラマとも呼べる物語は淡々とした平坦な展開で正直退屈でもあるが、静かに流れる人間の感情がいつのまにか伝わってくる不思議な感動がこの映画の優れたところを訴えかけてくる魅力のある一本でした。

1918年のフィンランド内戦など日本人には全く知識のない歴史の一ページである。しかし、この映画にその史実の中身や背景はほとんど必要がない。物語は赤衛軍の女部隊のリーダーミーナと白衛軍の軍人アーロ、そして彼らが滞在した判事との物語である。いや、そこにミーナの同僚で戦死した女の子供のものが足りも絡んでいなくもない。それぞれの人物へのウエイトが今一つ焦点が定まっていないために、最後までどれが物語の中心かわからず始末に終わった。この映画の弱点はこの焦点がぼやけていることだろうか。

たまたま、白衛軍の銃撃から助かったミーナ、彼女を判事の元につれていって裁判を受けさせようとするアーロの二人の道行きの話かと想えば、判事のいる営舎に着いてミーナを預けてしばらく滞在するが、ミーナに頼まれてマーナの同僚の女の子供を捜してくれと頼まれ、アーロはその子供を待ちに送り届けたり、そのまままた判事の営舎二戻ってくるが、それとなくこの判事がゲイであるとにおわされてきて、最後にアーロと一夜をともにするショットまで登場。

結局、アーロはミーナを逃がすが、アーロの属していた元の軍隊がやってきてアーロを撃ち殺してしまう。アーロの市に悲観した判事は首をつって死ぬ。まんまと逃げたみーんは町に行って子供を引き取りボートに乗っていずこかへ。子供の笑顔のアップで映画が終わる。

結局、描くべき中心はミーナ?アーロ?子供?どっちつかずにポイントがわからずじまいだった。しかし、北欧映画らしいムード満載の秀作だったと想います。

「化身」
今東光原作の生臭坊主の物語。勝新太郎の小気味良い坊主姿が心地よい一品。まぁ、作品としては凡作だったかな。

二枚目で目の覚めるような容姿の比叡山の坊主が主人公。祇園やらから3年も通ってはこの坊主を見に来る芸者の姿、会ったとたんに惹かれてしまい、最後には還俗してしまう尼さん、次々と女たちに彫れられてしまうにもかかわらず、本人はそういった業から逃れるべく仏の道に信心する。

結局、この坊主と一夜をともにした芸者のだんなのバックにあるやくざどもと一騎打ちをするシーンがクライマックス。なんとも娯楽色満載のお気楽な展開である。

勝新太郎の目の覚めるような喧嘩シーンが爽快で、「薄桜記」以来彼の運動神経のすばらしさに惚れ込んでいる私にとっては彼のアクションも楽しみの一つでした。まぁ、ふつうの映画ですが、これもまた懐かしい一本だったかと思います。