くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想[タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」「50/50 フィフティ

タンタンの冒険

「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」
スピルバーグ印のエンターテインメントとしてはさすがに楽しい。映画が始まってからあれよあれよと次々とストーリーが前に進んでいく。しかも、一つ一つのカットやシーンが本当にファンタジックで美しいし、カットからカットシーンからシーンへのつなぎも引き込まれるように移り変わっていく様はまさに芸術的、これこそスピルバーグの才能の真骨頂なのだ。

しかしながら、いまさら、なぜコンピューターグラフィックなのかと思えるのです。この作品でアニメチックなのは双子の警官とスノーウィーという犬だけで、あとは別に実写であろうと何の意味もない。しかも、アニメ制作に酔ってしまったのか画面演出が実に味気ないのです。もちろんパフォーマンス・キャプチャーなので俳優がいったんは演技をしてはいるのですが。

実写フィルムとCGアニメの決定的な違いはハプニングの有無なのだと思う。CGアニメは演出家が指示したとおりの動き、シーンが何百回でも再現できる。しかしディズニーのアニメもそうだが、実際の俳優が演じるシーンは絶対に同じものは二度とない。つまり非常に人間味あふれるシーンが生み出される。何度も取り直したシーンの中から監督が最良のものを選ぶ。時には偶然の演技が最高だったりするというハプニングも起きる。しかし、CGアニメにそれはない。だから演出の手法も、またその才能のあり方も違うはずなのだ。

アニメの演出家(たとえば宮崎駿ウォルト・ディズニー)は実写の演出はしない。つまりにているようで異なるからだ。

確かに、スピルバーグの才能は今更いうまでもない。しかし、なぜ、ここでアニメを作ったのだろうか。実験的ならすでに「ジュラシックパーク」でそのCGの可能性は実験済みである。今回のフルCGのアニメのなかでスピルバーグらしいものはあるものの、どこかカットからカットのほんの一齣二駒の微妙なリズム感が生み出すおもしろさが感じられない。だから、全編ドタバタと見せ場の連続が最後まで途切れずに展開していく。おもしろいのだが何かが違うと感じるのはそこにある。

出だし、イラスト的な2Dアニメでタイトルか語られ、軽快に始まる導入部。犬のスノーフィーだけがスリを見つけていたり、模型に隠された手紙をとらえていたりと、主人公タンタンの相棒としてのおもしろいキャラクターが見事に描かれるのに、その後、船長が登場し、次々と謎を解きながら物語が進み始めるとこの犬の存在が消えていく。

しかも、どのシーンもショットもほとんど同じパターンと長さでつながれ、CGアニメのために寸分の違いもなく同じ繰り返しが続くためにいつの間に見せ場が見せ場でなくなり、単調にさえ見えてくるのである。

結局、宝の在処を発見し、地球儀の中に隠された200キロ以上の金塊が海の中にちりばめられているというラストから次の冒険へのプロローグさえ精細を欠いてしまって終わるのだ。

本当に全編おもしろいのに、どこかおもしろくなく単調に感じられるのはそのあたりではないかと思う。スピルバーグなのだから、もっともっとあっといわせられるCGアニメを見たかった。

「50/50 フィフティ・フィフティ」
難病ものというのは苦手なジャンルなのですが、宣伝をみた限り、そう陰気な物語でもなかろうという予感で見に行きました。

軽いテンポの音楽をバックに主人公アダムがジョギングをするシーンから映画が幕を開けます。交差点でも車がきていなくても信号無視しないほどの几帳面な性格の描写、テレビ局で勤めている設定、恋人レイチェルの存在と悪友に近いがどこか頼りになりそうなカイルという同僚が紹介され、続いて病院で検査の結果ガンであることが判明し一気に本編へ。

最初は「あなたといっしょに・・」といっていた恋人のレイチェルは「看病のプレッシャーに耐えられない」と浮気を始めるという何とも小憎たらしい女として物語から消えていくが、一方24歳の研修医のセラピストキャサリン、〜このアナ・ケンドリックという女優さん、「マイレージ・マイライフ」で機関銃のようにしゃべる女性を演じていた人で、大好きなタイプなのですが〜、この彼女が素直で頼りないながらピュアな存在として描かれ、一方やたら女をナンパすることばかりするカイルの親しみやすさが物語を明るく牽引していく展開が心地よいのです。

ただ、途中でなぜか突然スプリット映像が入ったり、アダムがすれ違う人々がピンぼけさせたりと技巧的な演出が挿入され、しかも中盤の本の一瞬だけという意味不明な演出はいただけません。

抗ガン剤治療で老人と知り合うも、やがて亡くなってしまったり、しだいにいらついてきてキャサリンに当たったりとふつうの展開でストーリーが進む。一見、無神経なカイルが、実は自宅に「ガン患者とつきあう方法」なんていう本があるのをアダムが見つけたりとホロリとさせるシーンも挿入し、ふつうに展開していく。

そして、抗ガン剤治療が限界がきて、難手術に望む主人公がクライマックス。誰もが死を覚悟するが、無事終了。回復したアダムはキャサリンと自宅でほほえんでエンディング。脚本家の実話に基づく物語であるのでハッピーエンドは予想していたが、全体に悲壮感が中途半端で、ラストを目指して展開していくのはちょっと甘いですね。

とはいえ、特に可もなく不可もないふつうの作品で、ふつうによかったよかったと終われる一本でした。