くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ネムリユスリカ」

ネムリユスリカ

海外のローカルな映画祭で絶賛されたという話題作。であるが、こういう映画が評価される環境があるのはある意味いったいどうなっているのかと思えなくもない。

間延びした脚本と無駄なカットの連続でつづるだらだらとした映像。確かに夜景をバックにした橋の下のショット、それに重なる列車が疾走していくシーンの繰り返しは実に美しいし、スポットライトを多用した映像づくりは独特のファンタジックな世界観を生み出している。そんな作りごとのような背景で描かれるあまりにもリアルで悲惨すぎる物語のアンバランスがこの映画の魅力でもあるのかもしれないが、それでも低予算の自主映画の域を越えていないのである。

主人公の琴野は学生時代レイプされ、そのときの結果夏芽という娘を生んだ。そして17年後が物語の中心となって描かれる。琴野の母は死んで、父は下半身不随である。この三人で車のバンで生活しながらかつての犯人を探偵に依頼して探している。その費用のために家を売り、夏芽と琴野は売春まがいのマッサージをしている。

そしてとうとう犯人が見つかるがすでに末期がんで入院している。しかも妻も子供もいる家庭なのである。夏芽が犯人に間違いないことを確認して琴野に報告すると琴野はショックに動揺する。

ある日、夏芽が戻ってみると琴野が橋の袂にいつもキャッチボールをして遊んでいる少年に殴り殺されていて祖父も倒れている。夏芽はその遺体を背負って父の家庭にまでつれていく。琴野にとってはにくい相手かもしれないが夏芽には父なのである。この複雑な状況が後半の見せ所となる。

琴野を焼いて、骨を川に流し、車で夜の街を走っていく姿でエンディング。この手のどん底映画はたいていレイプが絡んでくるというなんともありきたりな不幸な設定である。見所といえば、夏芽らが暮らす鉄橋の上をなんどもなんども明るい光を放って列車が走り去る。それが川に映り、かなたに夜景のビルが見えている。時のシンメトリーに時にいずれかに配置した構図をバックに、夏芽や琴野たちが会話するシーンは最初にも言ったがスポットライトによるライティングで本当に美しい。そんなところを楽しめればこの映画はその価値を持ってくるのかもしれない。ただ、暗い。個人的には見ても見なくても良かった気がする。