くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「桃(タオ)さんのしあわせ」「声をかくす人」

桃さんのしあわせ

「桃さんのしあわせ」
アンディ・ラウがノーギャラで物静かな役柄に臨んだ意欲
作で実話を元にした感動のドラマをみてきました。

淡々と語られる物語なのに、じわじわと迫ってくるこの感動は何なのだろう。そんな何ともいえない暖かくなるような感動に包まれる作品でした。

窓枠と枯れたような景色、まるでヨーロッパ映画を思わせるファーストシーンから映画が始まります。とある亜pーとの一室で一人の青年ロジャーが食事をとろうとしている。次々と運ばれる料理を作っているのはこの家で60んんちかく家政婦をしている桃さん。この桃さんを演じているディニー・イップという女優さんが実にうまい。解説によると往年の名女優だそうです。

物語はこの桃さんが突然脳卒中で倒れ、彼女をロジャーが介護をする物語なのですが、桃さんが入った介護施設の住人たちのさりげないキャラクター描写や高齢化社会の現実を写す画面も嫌みがなくていいのです。

それに時間の流れが本当にせせらぎが流れるようなさりげなさで、そのさりげなさが少しずつみている私たちの心の中に感動を埋め込んできてくれるのです。

脳卒中で倒れ、手足が不自由になった桃さん。しかしリハビリでわずかに回復するが、また次の数シーンの後には車いすに乗っている。さらに、数シーンの後には病院へ搬送される。その間にロジャーが見舞いにきて連れ出したり、家族と会わせたりするシーンが何とも心が暖かくなる。

家族の成長をじっと見守ってきた家政婦桃さんの人生が、家族の姿を通じて表現されていく様が実に良い。さらに、仰々しい演技を押さえ、じっと支えるように見つめるアンディ・ラウの姿も本当に心温まるものがあります。

実話の重みもあったかもしれませんが、全体のストーリーの流れが詩編のごとく洗練されていて、背後に流れる品のいい音楽も作品を盛り上げてくれる。派手さはないですが、心に何ともいえない感動を残してくれる秀作だった気がします。


「声をかくす人」
今日もリンカーン物の一本、監督はロバート・レッドフォードリンカーン暗殺の事件の裏に隠された史実を克明に描いていく。

重い内容であるが、重い内容はこれでもかと言うほどに重々しく演出していく演出スタイルはちょっと考え物かと思えなくもない。先日の「アルゴ」なども内容は重いが非常に優れた娯楽映画に仕上がっていたことを考えると、映画を娯楽だと言う大前提を忘れた作品が多くなってきた気がします。

南北戦争の後、まだ混乱さめやらぬ中で起こったリンカーン大統領暗殺事件。その流れが冒頭で描かれ物語はその大半を民間人として逮捕されたメアリー・サラットとその弁護を引き受けたフレデリックの法廷での物語に終始します。

民間人でありながら戦時下ということで軍法裁判に掛けられ、ただ一方的な意見のみの陪審員や判事たちが居並ぶ中で、ひたすら法の正義を貫こうとするフレデリックのひたむきさをじっくりとしたカメラワークでとらえていきます。

室内が中心の舞台であり、内容が理不尽な展開を覆そうとするも覆らないもどかしい展開でもあるので、ストレスが最高潮に高まっていってラストシーンを迎える。

史実であるから曲げようのないラストであるが、なぜ、息子のジョンが自首できなかったかの説明が不十分だった気がするのは私だけでしょうか?

処刑の16ヶ月後にジョンが捕まり、その後のことがテロップで流されるのみ。そのあたりの流れが今一つ弱いし、熱血漢で走るフレデリックの強い信念を支えるものの描写ももう一歩踏み込んで描ききればかなりの秀作になったかもしれません。

ロバート・レッドフォード自身は監督としての才能も十分ある人なので、もう一歩じっくりとした演出と、息抜きも必要だった気がします。疲れた。