くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ロックアウト」「みんなで一緒に暮らしたら」

ロックアウト

ロックアウト
退屈はしないのだがどたばたとスピーディな物語があれよあれよと進んでいってエンディング。リュック・ベッソンが製作側に回った作品のほとんどがこのパターンになっている。

途中眠くなることはないが、見終わって、あのシーンがよかったというシーンは一つもない。しかし、単純におもしろいのである。いや、おもしろいというより退屈しなかったのである。

物語はジョン・カーペンター監督の「ニューヨーク1997」のごとくで、舞台は近未来、宇宙にある監獄に偵察に行った大統領の娘が、ふとしたトラブルで帰れなくなり、なかは囚人たちが解放されてパニック。そこへ送り込まれる元CIA局員であるがぬれぎぬで犯罪者として捕まったスノーと呼ばれる主人公。

その前に、彼が捕まって尋問されるシーンで映画が始まる。どうやら重要機密事項を納めたケースを隠したために政府の上役はその在処を彼に聞き出そうとしているらしい。しかし、彼は持ち出す寸前のところで捕まり友人のメイシーに投げ渡す。彼もまた宇宙の監獄にいるという設定。

このケースがどこに隠されたのかというミステリーのおもしろさと宇宙での脱出作戦という派手なアクションが組み合わされてとにかく見所がてんこ盛りなのだが、今一つ主演のガイ・ピアースに迫力がないし、大統領の娘エイミーを演じたマギー・グレイスがもう一つセクシーさにかけるために映画が盛り上がってこない。

囚人のリーダーらしき男やその弟のちょっと頭のおかしい男の存在をもっとステロタイプ化したえぐい描写すればもっと楽しいB急映画になった気もする。

退屈こそしないが、演出のうまさなどというものはかけらも見えない。つまり、リュック・ベッソンの脚本をとにかく忠実にハイスピードで撮り上げただけという感じなのが本当に残念。

最後にケースの在処をエイミーが解明してさらに真犯人をスノーが見つけるという下りもそれまでのテンポとほとんど同じ尺で描かれていくので、なんの爽快さもない。もっと、ストーリー全体に流れを生み出していればかなりおもしろい物語だと思うのだがその辺がもったいない一本でした。


「みんなで一緒に暮らしたら」
非常に引き際のよいしゃれたフランス映画という感じ、二時間足らずにこの物語をまとめた脚本と監督に拍手したい一本でした。

物語はアルベールとジャンヌ、アニーとジャン、そして若い女性を撮る写真が趣味で女好きの生涯独身のクロード、それぞれがすでに70歳を越えているという老人たちが一緒に共同生活をすることになるという物語。正直、前半はめんどくさい話である。やたら高齢者のSEXの話がでてくるし、手伝いにきた若い男性ディルクとべたべたするジャンヌのシーンもしつこい。アルベールが犬の散歩中に転倒したり、クロードが心臓発作で入院したりとどたばたと物語が進んでいくが、たまたまクロードがアニーとジャンヌそれぞれと40年前に浮気していたことがばれて物語は一気に終盤へ進む。

普通ならどろどろになるところだが、やはり70歳も越して人生の終盤ではそういうこともなく、すぐに仲良くなって握手。ここが老人たちの話という前提が最大限に生かされる部分である。

映画の冒頭で描写されたジャンヌの病気で彼女がとうとう死んでしまう。しかし映画はその最後を描写せず、突然埋葬のシーンと彼女の回想のナレーションで処理する。ここは見事。その後、痴呆気味のアルベールがジャンヌを探し始め、それにつきあってアニーたちも一緒に公園の彼方に消えていってエンディング。この引き際の小粋さがこの映画の最高の部分ではないかと思う。余韻を残し、彼らのこれからをあれこれ想像させる。これが映画のエンディングである。このラストシーンを見ただけでもこの映画を見た値打ちがあるというものだった。ちょっとした佳作でしたね。