くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「愛される方法」「列車の中の人々」「フランケンウィニー」

愛される方法

「愛される方法」
ワインのグラスのアップから物語が始まる。舞台女優として成功したメニツェフがファンの招待でパリへ向かう飛行機を待っている。

飛行機に乗り、彼女は第二次大戦下、一人の男性を匿いひとときの恋心を感じていた時代を思い出す。

飛行機の中で回想するという形式で一人の男性を愛しながらも報われることなく、成功はしたものの切ない過去を思い出すというのが物語の中心である。

アパートの隠し部屋に男性を匿い、ナチスの捜査には体を与えてさえも守り抜く。ばかばかしい戦争の姿を窓の外から見下ろしながら、ただ一人の男性のために尽くすということで生き抜いていく彼女の姿はけなげな中に女性特有の強さがしっかりと見えてくる。そこには夢や信念だけで子供じみて生きる男たちへの蔑視さえも見えてくるのである。

戦争などにうつつを抜かし、対ドイツで反抗する男性の姿にふがいなさを覚えながら、自分を愛してもらうために必死で尽くす彼女の姿。女性側から見つめるという視点を変えて描く戦争映画というべきかもしれないが、ここにポーランド映画の一つの形があるしこれもまたポーランド映画の個性なのである。

結局、男は彼女の元に戻らず、彼女は一人パリへ旅立つ。

物語は飛行機がパリについてエンディング。映像に特異なものはないものの、ほとんどが部屋の中のシーンを中心に描かれる演出スタイルはどこか舞台的でさえもあるし、女性の視点を中心にしているのがはっきりと伺える。

女性のひたむきさと男性の幼さを対比し、そこに戦争というリアリティを盛り込んで描く男と女の物語で、しんみりと心に残る作品でした。


「列車の中の人々」
先日見た「沈黙の声」のカジミェシュ・クッツ監督作品
田舎の駅の一日をリアリティ豊かに描く一品でした。どこかファンタジックな彩りも見えるのがなんともいい感じの一本でした。

列車が近づいてくる。駅長と女性の駅員が迎える。列車から花束が落とされ、女性がその意味を駅長に問いただすと彼は1943年、この駅で起こった出来事を語り始める。

車両の故障でこの駅で二両を取り残すことになった列車から大勢の人々が降りてくる。駅長は次に来る貨物列車に彼らを乗せるべく画策するが、同乗してきた鉄道警官が反対する。そこで彼に酒を飲ませ、酔わせた間に客を乗せてしまおうと考えるが、よった警官はその勢いでドイツ軍にこの駅にパルチザンがいると電話してしまう。

ドイツ軍がやってきて乗客を取り調べ、緊張の一瞬が訪れるが、たまたまでてきた警官の機関銃の持ち主を巡って一触即発。ところがすんでのところで警官がでてきてめでたしめでたし。

降りてきた客の中に、彼氏を追ってきた若い女、犬を連れた少年、幼い少女、旅芸人風の男などの様子が陽気な効果音で語られていく。一瞬コメディなのではないかとさえ思う映像なのだが、ドイツ軍の登場で緊張感が走る展開に、どこかポーランド映画らしさを感じたりもする。

結局花束は誰が投げてよこしたものかはよくわからないラストだが、どこか夢のあるエンディングに心引かれる一本でした。最後に列車を見送る駅長たちの後ろ姿をとれたショットが印象的。映画らしい寓話のような世界だった気がします。


「フランケンウィニー
ティム・バートン監督の真骨頂ともいうべきマペットアニメの新作がやってきた。

いやぁ、楽しかった。やっぱりティム・バートンマペットアニメに限るなという感じです。出だしからラストまでもうにこにこわくわく、にんまりと彼の毒ににやけてみたり、ほんのりとした気持ちに引き込まれてみたり、夢のようなひとときを過ごすことができました。

物語は基本的に「フランケンシュタイン」なのですが、学校の理科の先生がいかにもユダヤ人ぽくて、アメリカ人は科学者が少ないとかいってのけるし、どこかで見たようなホラー映画のシーンがちりばめられているかと思えば、日本人らしき生徒が日本語しゃべるし、よみがえった亀はガメラになるし、猫とコウモリで化け物になるし、シーモンスターは明らかにグレムリンのパクリで水に弱かったり、クライマックスは風車を舞台にして焼け落ちるなんて名作「フランケンシュタインの花嫁」やし、もう拍手喝采

しかも、町の町長の姪っ子は頭にろうそくを立てて歌を歌う(なんと声はウィノナ・ライダー)。町の町長らしき人間も結局、いい人になって一つになるラストはもうほんのりとさせてくれる。

そんなちりばめられた遊びの世界の中に潜む毒もさることながら、最初に生き返った犬のスパーキーだけはまともなのは愛があったためで、後によみがえった化け物がそのまま邪悪なのはよみがえらせる理由が邪悪故だったとかいうところなんかもティム・バートンらしいユーモアに見えてくる。

音楽のテンポも実にいいし、ぜんぜんだれるところがない。これでもかこれでもかとブラックユーモアが満載で遊び回ってくれるやんちゃな映画、本当に楽しかった。最近見たティム・バートン作品ではダントツの出来映えでした。