くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「顔役」(中村登監督)「バレット」

顔役

「顔役」
痛快な展開と観客の心をしっかりとつかんだ演出のリズムの妙に、日本映画黄金期の余裕を感じさせるちょっとした一品、そんなとっても楽しい映画でした。

物語は一見、とっても単純。田舎の風呂屋の主人輪島八十吉。堤防に防犯の街頭をつけたことで警察から表彰を受けることになり、親戚中を集めて祝賀会を開く。東京から息子一夫が戻ってくる電車の中で映画が始まる。一夫はそこで、大学の先輩泉川に出会う。

この泉川、代議士の秘書をしていたという事で、輪島を市会議員に担ぎだそうとする。こうして始まるどたばた劇が物語の中心。輪島を演じた伴淳三郎、いつものずーずー弁ながら、田舎の風呂屋の人の良いおっさんが、いつの間にか市会議員になる夢で鬼気迫っていく下りの演技がすばらしく、今更ながら見直してしまいました。

選挙の途中、輪島が使用人の女花枝に手を出し、花枝が妊娠したところから物語はあらぬ方向へとさらにどたばたが広がり、花枝の兄と称する弁護士北川が金をゆすりにくるし、花枝の母親が何かにつけ謝りにきては小金を持って帰るし、輪島の妹が泉川と組んで輪島から金を絞り出す。

ところが、当選し、何もかもうまくいくかと思われたところへ、なんと泉川は輪島の対立候補選挙参謀の女とできていて、輪島の妹をふってどこかへいくし、花枝は実は北川等と組んでいた詐欺師で、輪島のところへやってきてすべてをばらして警察に捕まっていく。

一時は、家族がバラバラになり、輪島という男のどたばた劇でまくをとじるかとおもわれたが、なんの、少々無理のあるどんでん返しであるが、いわゆる二転三転のラストシーンでにんまりさせてエンディング。何とも、余裕のある娯楽映画に思わず拍手したくなりました。本当に観客を心をつかんだような娯楽映画でしたね。


「バレット」
ウォルター・ヒル監督作品という名前だけで見に行ったのですが、なんともふつうのアクション映画でした。

脚本が荒っぽいし、悪役にも魅力がない。ただ、スタローンが例によって肉体アクションを繰り広げるだけの余りに平凡なドラマ。ウォルター・ヒルもかつての切れはありませんね。

モノクロの画面に一人の東洋人が車に乗り込む。ところが運転手が彼に銃を向けたとたん、別の誰かがその運転手を撃ち殺し、窓からスタローン扮する主人公ジミーがでてきて、刑事は嫌いだとか何とかいって回想シーンが始まり。

プロの殺し屋のジミーと相棒が、依頼された仕事を勝たず蹴るためにホテルの一室へ踏み込んでターゲットを殺し、仕事を終えてバーに行ったところで、ジミーが席を外したときに相棒が殺される。ジミーは危うく逃れたが、罠にかかったと知ったジミーは、韓国からきた刑事テイラーと組んで真相に迫っていくというお話。

冒頭の部分は、ちょっとおもしろいかなと思われたけれど、すぐに、これはちょっとかなという展開になるのが残念。ラストも、なるべくしてエンディング。格好を付けて去っていくスタローンのショットで暗転するが、以前のウォリター・ヒルなら、何とも粋なラストやねと思わせるだろうが、それもちょっと物足りなかった。

それほど期待していたわけでもないので、これはこれで良いかなという感じです。