くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「結婚式・結婚式」「千客万来」「エンド・オブ・ホワイトハ

結婚式結婚式

「結婚式・結婚式」
中村登監督の才能が爆発したホームドラマの傑作。松山善三の脚本場絶品ですばらしいのだが、それを見事に演じきった豪華な名優たちのプロの仕事に感服してしまう。さらに、カメラ演出がこれまた目を見張るほどに見事であるし、木下忠司の音楽も作品のリズムを見事に増幅させて、テンポよく、笑いと涙を織り交ぜながらラストシーンまで一気に引っ張っていく。すばらしい絶品に出会いました。

物語は一人の女性岩下志麻扮する典子が歌舞伎の舞台をみているシーンに始まる。今日は見合いらしい。

変わると、列車の中、父親浩蔵の喜寿の祝いのために実家へ急ぐ買わず祐介扮する三郎、騒ぎ始めたところで父の反対で駆け落ちしていた岡田磨莉子扮する夏子が登場し、駅で紀子と出会い、一緒に父の家に行く。そこでは受験生の史郎、長男浩一、次女秋子がいて、北海道の次郎を待っていた。

こうして、登場人物を見事に紹介した後、子供たちのお祝いのお金で両親は京都見物へ。ここまでの浩蔵の入れ歯のエピソードと掛け合いも絶品。

その一方で三郎と紀子が結婚することになり、秋子とアメリカ人の恋人の結婚が決まり、一気に展開していく様、一度は反対し駆け落ちした夏子をちゃんと式を挙げてやろうとする父の心遣いをへて、クライマックスは三組の披露宴の式場でエンディングである。

会話の応酬のテンポがリズミカルですばらしいし、それを絶妙の間合いで語る俳優たちの演技もすばらしい。カメラアングルも見事で、家族が交わしている奥で障子のガラス窓に見える岡田マリコのショットなどは絶品。さらに次郎が両親のことについて語り始める下りで、縁側に座る両親にカメラがゆっくりと寄っていくシーンでは、それまでフィックスでカメラを構えていたのに、ここで初めて動きのあるワーキングになる。そして、思わず胸が熱くなるのである。

軽快にどんどん展開するドラマが、クライマックス三人の披露宴でさっと終わらせるあたりのうまさもうなってしまうものがある。主役級の俳優をちりばめるように次々とスクリーンに登場させ、おそらく、他の作品のスケジュールの合間を割いて出演しているのだろうが、それでも見事な演技を見せる。まったく、この余裕には頭が下がる。すばらしい一品でした。


千客万来
これまた、軽いタッチのホームドラマで、二組のカップルの恋愛と結婚がつづられていく。当時の若者たちや親たちの考え方も随所に挿入され、時代を感じさせるものの、それが今となっては見所の一つになるのだから、良い映画というのは色あせないものだと思う。

山肌をハイキングするカップル銀之助と多佳子のシーンで映画が幕を開け、どうもぎくしゃくする二人はやがて頂上あたりで大学時代の同窓生らしいグループに出会う。こうして、登場人物をさりげなく紹介。

続いて、とある会社の社長室に従業員で、親戚でもある岩下志麻扮する啓子が呼ばれ、続いて、川津祐介扮する謙太郎が呼ばれ、と若者たちの恋や結婚に大人たちがさりげなく立ち入る当時の世相で物語が展開。とはいっても、そこに古き封建的なものが見えるわけでもなく、といって、若者が自己主張で押し切る風情もそれほどでもない。その微妙な人間同士の暖かさが実に心地よいのである。

二組のカップルが、それぞれに成就していく中で、その周辺の熟年の夫婦の存在感、さらに飲み屋の女性との色恋沙汰なども挿入され、不思議なムードを映画に与え、深みを増していく。

ラストは、それぞれがそれなりのハッピーエンドを迎えていくのだが、俳優たちのしっかりした演技力と落ち着いた中村登の職人肌の演出が絶妙に無難な小品として完成させる。この心地よさはなんだろう。そんな佳作に出会った気がします。


エンド・オブ・ホワイトハウス
とにかく、スピーディでおもしろいストレートな娯楽映画でした。
映画は、別邸でくつろぐ大統領の家族。外は夜で、雪が深々と降っている。傍らには敏腕でかつ大統領の一人息子コナーにも好かれているシークレットサービスのマイクが寄り添い、まもなく出発するパーティへの準備をしている。

雪の降る中、やや強行ながら、車に乗り別邸を出た大統領一行だったが、突然、先頭車のフロントガラスになにやら落下し、急ブレーキしたとたん、次々と車が横滑り、大統領と妻が乗ったリムジンはがけに半分突き出して止まる。今にも落ちるリムジンを必死で支えるシークレットサービス。コナーと乗っていたマイクはリムジンに駆け寄り、何とか大統領を助けるが、妻は車とともにがけ下へ。それから1年半後が物語の舞台になる。マイクはこのときの事件で今は財務担当のデスクワークである。

序盤もスピーディな導入部で、どんどん先へ進む演出は、アントワーン・フークワ監督お得意の演出スタイルである。

そして、物語はホワイトハウス。韓国の首相を迎えるために緊張した面々の中、母をなくしたコナーに寄り添うアッシャー大統領。しかし、まもなく韓国の首相が到着する。一方、不穏な爆撃機ホワイトハウスまで60分の距離に迫ってい折る。時間的な展開もハイスピードにどんどん緊張感が高まる。

首相がホワイトハウスへ。直後に爆撃機も接近、スクランブルで発射した迎撃機が撃墜され、ホワイトハウスは緊急事態へ突入。韓国首相らとともに大統領は地下にあるオリンポスと呼ばれるところ移りロックされる。地上ではみるみる爆撃機が接近、さらに地上から次々とテロリストたちがホワイトハウスを襲い、あっという間にほとんどの護衛部隊は殲滅させられる。しかも、韓国首相と一緒に来た東洋人はテロリストの一味で、一気にオリンポスも占拠されるのだ。

ここまでの展開のすばやいこと、もう目にも留まらないほど鮮やかで、ここから、マイクが見方がいなくなったホワイトハウスへ潜入し、臨時政府と交信しながら、まずコナーを助け、大統領を助けるべくオリンポスを目指す。このあたりはありきたりといえなくもないが、一方で、アメリカの核ミサイルを自爆させるためのケルベロスコードをカンを首謀者とするテロリストのリーダーが聞きだそうとし、三つのコードを入力するまでのサスペンスフルな展開や、占拠まもなくテロリストたちがとる防御システムの無効しょりなどハイテク戦のおも白さも作品に厚みを生んでいる。

あとは、なるべくして、大統領は救出され、テロリストのリーダーのカンは殺され、めでたしなのだが、マイクの恋人とのエピローグは、それまでほとんど映像に出てこなかったので、唐突すぎて、必要なのか不明だし、ホワイトハウスの中を熟知しているコナーが、かつて増改築された壁の間に隠れているというのをカンがいきなり見破るも、すんでのところでマイクに助けられているサスペンスフルな展開も、もっと面白く挿入しても良かった気がする。全体が、冒頭のあざやかなほどの派手な銃撃戦と、ケルベロスコードのくだり、マイクが行う救出劇という派手な部分に集中しているために、せっかくの枝葉の面白い伏線が潰れてしまったのは残念でしょうかね。

でも、かなり面白い映画でした。