くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「クロニクル」「陽だまりの彼女」

クロニクル

「クロニクル」
ブレア・ウィッチ・プロジェクト」以来一種のジャンルになっている、ドキュメントタッチで描く映画、これもまたそういう一本である。

主人公アンドリューが自分のカメラで生活を写し始めるところから映画が始まる。病気でベッドに寝ている母、やたら暴力を振るう父と三人家族の彼は、学校までいとこのマットの車で通っている。

いつも内気で、学校でもいじめられるようなアンドリューをマットが友達のパーティに誘う。そこで学校の人気者スティーヴにで会う。

彼は、森の中に妙な穴を見つけたから見に行こうと二人を誘い、アンドリューがカメラを持って、三人入っていくと、そこには水晶のかたまりのような物体が。それに近づくと、その物体が光り、三人は、サイコキネシスの能力を身につける。最後までこの物体の正体が不明なのもこの映画の謎として楽しめる。

こうして始まる物語は、最初はありきたりのいつのもパターンかとみている。

アンドリューのカメラが、三人の悪ふざけを次々ととらえていくが、次第にエスカレートしていることに気がつくのは、雲の上まで彼らが飛べるようになってくるからである。

そして、彼らは三人で世界中を旅行しようとか、学校のタレントショーでアンドリューが能力を使ってアクロバット的なパフォーマンスをし、女の子にもてはじまるのだが、初体験でゲロをはいて大恥をかいたアンドリューはみるみる内的な思考に閉じこもりはじめる。

ここから物語は暗転して、どんどん暗い方向へ流れ始める。このストーリー転換のうまさがこの作品の最大の長所である。しかも、手持ちカメラばかりだとぶれた画面ばかりになるところを、カメラをテレキネシスで空中に浮かばせて撮影するというアンドリューのアイデアを盛り込んだために、ふつうにカメラワークとして映像がとられていくのが実にうまい。

やがて、どんどん自意識に閉じこもるアンドリューの姿に、心配したスティーヴがはなしにいくが、雷が鳴る中での説得で、雷に打たれスティーヴが死ぬ。いや、実はアンドリューに殺されたのかもしれない。そして、アンドリューは母親の薬の金のために、力を使ってカツ上げしたり、スーパーをおそうのだが、誤ってやけどを負って病院へ。駆けつけた父親がアンドリューをののしると、アンドリューの怒りが爆発。彼に近づくものを破壊し始める。

目立たない主人公が力を身につけ、一端は人気者になりかけるが、ふとしたことで奈落に落とされ、怒りが爆発して行くというのはまsない「キャリー」である。

駆けつけるマットの制止も聞かず、化け物のごとくあばれる。ビルが破壊され、パトカーが吹っ飛び、どんどん、映像はスペクタクルを増していく。しかし、肉体は傷だらけになるアンドリューに、マットが、仕方なく、銅像の槍を突き刺しとどめを刺す、そしてマットはその場を逃れチベットへいってエンディング。

ストーリーが、軽いノリの学生の悪ふざけから、夢のある未来の希望に輝く中盤、そして、力を得たことにより化け物のような性格になる後半部と、実に組立の構成がうまい。いまさら際だったカメラワークでもないのだが、ストーリーテリングのおもしろさで、ぐいぐいと見せる作品でした。驚くほどの出来映えではないけれどかなりおもしろかったですね。


陽だまりの彼女
上野樹里の演技力で支えた感動のラブストーリーでした。脚本や演出は甘いところがたくさんありますが、好きなお話だし、無難に完成されていて、ラストはしんみり、いや切なく涙してしまいました。こういう映画は作品の質やクオリティ云々より、素直に涙すればいいと思います。だって、何度も書きますが、あまりに切なくて、泣いてしまいましたよ。

映画はホームムービーのような画面から始まります。どこか大林宣彦の「時をかける少女」的ですね。そして、少年が猫を拾ってきて両親のところにくるのですが、猫は逃げてしまって、猫の首にはお守りが、そして物語は現代へ。

主人公浩介が目覚ましで目を覚ますと、横に酒を飲んで帰ってきた弟が布団に入ってきて、あわてて、会社へとでていく浩介。会社でエレベーターに乗ると、ちょっと気のある女性が乗っていて、そこへ出ましたぁという感じで谷村美月扮する女性が乗り込んで、コミカルなシーンノアと、上司とプレゼンに出かけた先で10年ぶりに、中学時代の彼女真緒と再会する。こうして、ありきたりかもしれないラブストーリーが始まるのですが、ここまでのテンポが実に軽快。

そして、中学時代、いじめられていた真緒の様子や、浩介とのなれそめなどが軽いタッチで語られ、現代の二人の交際が始まって、深まって、ラブラブになっていく。なんといっても上野樹里の愛くるしいほどのかわいらしさを見せる演技が抜群にすばらしく、彼女の愛くるしさでストーリーを牽引していく感じです。

そして、とんとん病死に二人の関係は流れて、真緒の両親のところで結婚を報告し、実は真緒は記憶喪失であると父から聞かされる下りへ。でも、どこか不自然な病気の描写に、なんか引っかかるものを感じながらみていく。

江ノ島へデートに行ったときに、不可思議な老婆と真緒が目を合わすシーンなどもあり、何か謎がありそうに見える。夜、全裸で歩いていた真緒を父の渡来幸三が警官時代に保護して養子にしたとかいうエピソードもさらに謎が絡んでいく。

原作があるので、省けない部分だったかもしれないけれど、真緒をいじめていた中学時代の女の子が大人になって、出会って真緒に絡むシーンや真緒の会社の上司が執拗に真緒を気にする場面など、ほかに映像にする方法があるだろうにと思うが、ちょっと芸がない。

しかし、真緒が髪の毛が異常に抜け、CTをとっても以上話で、医者が訳の分からない病状をはなしたり、と謎がだらだらと繰り返すのは、ここも脚本の無駄になっている。しかし、見る見る体調が悪くなり、真緒が江ノ島の老婆の元を訪れて、なにもかもが明らかになる。この前後からだいたい見えてきたが、やはりそうかという謎解きの場面。まさに「人魚姫」「鶴の恩返し」的な切ないお話である。

かつて、岩場で瀕死だった猫を助けた浩介。その猫が、浩介に会いたいと人間にしてもらったものの、猫の寿命はせいぜい12、13年。つまり真緒は恋する浩介と再会するために人間にしてもらった猫なのである。というのがクライマックスで、いよいよとなって、浩介の前から姿を消した真緒。その前に、極めつけに、隣の男の子がベランダから落ちるときに、真緒が飛びついて、猫のように助ける下り。果たして必要かな?と思えるエピソードはちょっとねぇ。

真緒が死期がせまるにつれ、関係した人々から真緒の記憶が消え始める。最後の場所に、浩介に助けられたところで座っている真緒に浩介が会いに来て、二人で、かつての中学校へ行ったり、ファーストキスしたジャングルジムの公園に行ったり。でも、次第に記憶が薄れていく。

やがて、すべてが消えて、再び目覚ましで目覚める浩介。会社に行き、帰りに猫を抱いた女性が顔を上げると、真緒の姿・・・・・エンド。
まるで「時をかける少女」的な流れでお話が運びました。でも好きですね、何度も書きますけど。

少々、終盤はしつこいと思えなくもないけれど、とにかく上野樹里ががんばっている。彼女がここまで演技力があるかと感心するほどの熱演で、作品を支えましたね。思わず原作を買ってしまいました。