くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「天国の門」【デジタル修復完全版)「人類資金」

kurawan2013-10-30

天国の門」(デジタル修復完全版)
30年ほど前に短縮版は見ているのですが、今回、再見。
膨大な製作費と公開後の不評でユナイティッド・アーチストを消滅させたマイケル・チミノ監督の歴史的な超大作が、ついに、デジタル修復され、しかも当初の公開の150分弱から、オリジナルの216分の完全版になって帰ってきた。

確かに、膨大な費用と、時間を費やして撮影しただけのことはある雄大な映像が所狭しと展開し、無駄にでかいのではないかと思えるようなセットも圧倒的な迫力でスクリーンから迫ってくる。しかし、「ディア・ハンター」で見せた美学があまり感じられないのが、やや不満といえなくもない。

物語は私たちには余り馴染みのない「ジョンソン郡戦争」というアメリカの歴史の一ページをクライマックスに、そこで生きた主人公たちのドラマを描いていく。

物語は1870年、主人公ジェームズがハーバード大学の卒業式に駆け込んでくるところから始まる。延々と卒業式のシーンを描写し、この物語の主要人物を紹介する冒頭部からこれ見よがしに大作であることを伺わせる。

大学の庭で展開するワルツのダンスシーンも、実に優雅で、ゆったりとした時間が映像の余裕も相まって、いつの間にか1870年の時代へと誘ってくれるのである。

そして、20年後、ジェームズはワイオミング州の保安官としてやってくる。そして、学生時代の友人ビリーから、この地の牧場主協会を仕切るカントンらが、東欧から増えてくる移民を粛正するために、125人の一斉抹殺を計画していることを知る。

物語はこの一斉抹殺に抵抗する移民たちと、カントンが雇った50人ほどの私兵との壮絶な戦いをクライマックスに私、ジェームズと、この地の娼館を営むエラとの恋、さらに移民であるが、牧場主に雇われ、殺し屋となって、冷酷にも牛泥棒を容赦なく殺す正義感のあるネイサンとの三角関係を描きながら、歴史の一ページを叙事詩のごとく語っていく。

初めてジェームズが降り立ったキャメル駅の壮大なセットの偉容にまず目を奪われ、霞がかかったような風景に非k利の反射で白をオーバー露出させた画面に、輝く太陽を感じる。しかし、道行く移民たちの姿は生活に疲れ、その日の糧のために命を削っている様子もしっかり描く。さらに、こうした移民たちを目の敵にする牧場主等の非道も暴騰から描かれるのだ。

移民たちが、何かにつけて集まるスケート場の名前が「天国の門」で、ここから題名がきている。

迫ってくるカントンに、ネイサンも殺され、いよいよ町に迫ってくる。そこで、住民等はジョンを中心に、カントン等に攻撃を仕掛ける。最初は、蚊帳の外のジェームズだったが、最初の戦闘の後、参加し、2000年前にローマ軍がとった戦法でカントン等に迫る。しかし、情勢が不利になったと思ったカントンは州軍を呼んできてことを終収させる。

ジェームズはエラとこの地をでることにして、家を出たとたん、恨みを持っていたカントン等に銃撃され、ジョンは死に、エラも死んでしまう。

時は1903年、船上、年老いたジェームズはエラ屁の想いと一緒に船に乗っている。エラは寝たままであるところから、あれは、ジェームズの幻影なのだろうか。暗転エンディングである。

横長の画面を最大限に利用した広大な景色の描写が、圧倒的な迫力であるが、物語はその壮大さに追いついていないほどにややこじんまりしている。確かに、一段落した後のエピローグはショッキングなエンディングですが、これもまた歴史の一ページだといわんばかりである。

とはいっても、映画としてはちゃんと完成されているし、少々の難点は多々あるかもしれませんが、噂されているほどに悪い映画ではないように思えます。3時間を超える大作にもかかわらず、ストーリーの展開はしっかりしているし、見せるべきエピソードの羅列もきれいにリズムを生み出している。ただ、何度も書きますが、ストーリーに広大さが見えないのがちょっと残念な一本ですね。でも必見の一本です。


「人類資金」
お話が壮大すぎて、出演陣が押しつぶされた感じの作品でした。今更ながら、日本映画界の演技陣の層の薄さを実感しましたね。森山未來君がんばってるけど、さすがに体が小さすぎて、スクリーンを押さえ切れていない。ラストの一番の見せ場なのに、やっぱり演技力だけでは太刀打ちできなかったかな。

世界中をロケして、国連ビルまで使っての鳴り物入りのドラマですが、阪本順治監督の骨太演出はさすがに見るべきものがあったけど、ストーリーが、出だしとエンディングでテーマがずれてしまった。

音楽の使い方はサスペンスを盛り上げるのには見事に成功していて、映画にリズムを生み出しましたが、いかんせん、仲代達矢もさすがにへたくそになったし、それ以外のキャストも、貫禄がなさ過ぎで、世界中の経済を動かしている膨大な資金が裏にあるという物語なのに、その不気味さがスクリーンにでてきていない。

日本軍が、終戦間際に隠した金塊を元手に、世界の経済が動いている。その金は日米が共同で管理しているのだが、実は日本の運用会社は、いつの間にか本来の目的を離れて投機資金として運用している。その現状を本来の目的にするために、そのM資金を盗み出してくれと、ある男から依頼されるというのが物語の発端。

これで、ストーリーはサスペンスフルに展開して行くのかと思いきや、途中からなにやら小国の貧困の現状が描かれ、その国をテロ国家として攻撃されそうになるのを森山未來扮する石優樹が国連で大演説をするクライマックスへとなだれ込んで行く。

つまり、ストーリーの視点が二転三転してしまい、当初のサスペンスはどこへやらなのである。

非常に面白いわけでもなく、面白くないわけでもなく、だからどっちなの?という感じの作品で、なんとも不完全燃焼だった。