くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「暗くなるまでこの恋を」「ウォールフラワー」

暗くなるまでこの恋を

「暗くなるまでこの恋を」
ご存じ、フランソワ・トリュフォー監督のラブミステリードラマである。ヒッチコック敬愛者でもあるトリュフォーらしく、ヒッチコック映画のオマージのようなシーンや設定が随所に見られる。

ジャン・ポール・ベルモンド演じるルイが、文通での知り合い、そして出会う女性ジュリーは、写真では栗毛であったが、港で出会ってみると金髪のカトリーヌ・ドヌーヴ扮する女性と変わっている。まさに「めまい」である。しかも、カトリーヌ・ドヌーヴ扮する女の本名がマリオンなのだから、なんとも見事なものですね。

文通で結婚相手を捜す記事のナレーションが流れる中、タイトル、そして物語は主人公ルイがこれから文通で見つけた許嫁とあうために出かけるシーンへ続くのです。

写真で見ていた女性が見あたらないと困っていると、目の前に金髪の美女が。そりゃあ、本人の写真でなかったと言われても、ドヌーヴならOKになりますよね。ところがこのジュリーと名乗る女はミステリアスなところがありと、サスペンスが盛り上がってくる。

姉からの不審な手紙で疑いはじめて、実は彼女は愛人と船の中で本物のジュリーを殺したらしく、探偵のコモリを雇って、金を持って逃げた偽のジュリーを追いかけるが、たまたまニースの病院で、テレビで、いかがわしいクラブで働く彼女を発見して、居場所を突き止め、殺すために拳銃を持っていくが、結局殺せず二人で逃避行。ここから後半になる。

二転三転するとってつけたようなストーリー展開だが、カトリーヌ・ドヌーヴという絶世の美女ゆえに、男が血迷うのも無理はないという納得が、この映画のすごさです。

そして、追ってきたコモリを撃ち殺してしまうルイ。二人はつかず離れず、頻繁に言い合いをしながらも、結局離れられず、二人で雪山への死の旅立ちを後ろからとらえてFIN。

ドヌーヴという存在ゆえに成り立つドラマが、まさに映画の世界で、ルイの別荘で暖炉を挟んで二人で延々と語るシーンがいかにもトリュフォー的な画面づくりで美しい。

雪山に真っ赤なコート、赤いオープンカーなどフランスの監督らしい色彩演出もふんだんに登場し、当時のトップ人気の二人が繰り広げるラブミステリーの世界は、映画の出来映えの云々よりも、スクリーンを見る値打ちが十分な一本でした。


「ウォールフラワー」
1999年発表されたベストセラー青春小説を原作者であるスティーブン・チョボウスキー自ら脚本を書き、監督をした作品であるが、これがまた、感性で描かれた映像詩のような作品で、とても素人監督とは思えない出来映えでした。映像感性、音楽感性が優れているのでしょうね。全体が、リズムに乗っている。

主人公はチャーリーというちょっと内気な少年。ヒロインのサムに大好きなエマ・ワトソンがでているので見に行ったのですが、ちょっと好きな映画になりました。ややプラトニックな物語ですが、ピュアな青春ラブストーリーとして、とっても清潔なイメージと、ポップな展開が素敵なのです。

主人公チャーリーは、先日まで心の病で入院していたが、高校入学の日を無事に迎えることができた。そして、初日、誰からも相手にされず、壁の花(ウォールフラワー)にごとくの存在だったが、ちょっとひょうきんなパトリックという青年に声をかけ、その義理の妹で陽気なサムとも親しくなる。こうして、殺風景なはずの高校生活に一気に彩りが加わり、サムの彼氏のクレイグ、パトリックたちの友人のアリスやメアリーとも親しくなって、次第にふつうの高校生活を送り始める。

しかし、時折、チャーリーの子供時代のカットがさりげなく挿入され、大好きなヘレンおばさんとの楽しいエピソードが描かれるが、実はそれはチャーリーが幻覚を見ることになる原因を作った女性だった。一方、密かに恋心を寄せるサムも幼い頃に父の友人たちからひどいことをされていたという過去が明らかになる。パトリックも実はゲイであることが表沙汰になる。

一見、ストレートでピュアな物語になるところが、様々な出来事や過去が、ストーリーに次第に不可思議な深さを生み出してくるあたりが実にうまい。さらに、レコードやカセットテープという、一昔前の時代設定故に、どこか素朴にさえ見える彼らの毎日がみずみずしいのである。

高速のトンネルをくぐりながら、荷台に立ち、両手を広げて風を受けるサムのショットがとっても初々しい。

小さなカットや、幻想的な演出を随所に施した映像づくりは、なかなかの感性がなせるものだと思うし、一本の作品が、一つにきれいにまとまっている。

そして、サムたちは大学へと進学、チャーリーが今のような心の病気になったことが両親も知り、休みに戻ってきたサムたちと一緒に高速道路をぶっ飛ばす。チャーリーはサムがしていたように、荷台にたって風を受けてエンディング。

それぞれに、言葉にできない過去がありながらも、必死で、青春を謳歌し、恋をし、進学を考える。チャーリーの心の病が微妙なニュアンスをストーリーに生み出すが、それに固執しない脚本が実にうまい。

本職の映画監督でないながらも、なかなかのクオリティに仕上がった秀作だった気がする。それにしても、エマ・ワトソンは素敵になりました。