くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ゼロ・グラビティ」「ふたりのアトリエ〜ある彫刻家とモデ

ゼログラビティ

「ゼロ・グラヴィティ」
アルフォンソ・キュアロン監督が3D効果をねらって作ったスペースアドベンチャー。久しぶりに3D映画を見た。

物語は非常にシンプルで、しかも90分ほどしかないのだから、明らかに3Dを見せるだけの作品である。その目的を十分に果たしたなかなかのエンターテインメントでした。

地球上空に浮かぶスペースシャトルで作業をするストーン博士とマット。まるで日常生活のようにふざけ合いながら進める二人に、ヒューストンから、ロシアが自国の衛星を破壊したという無線が入る。最初は、心配無用ということだったが、予期せぬ出来事がかさなり、ストーン博士等のところへ破片の嵐が押し寄せることに。

何とか、通り過ぎたものの、ストーン博士等のシャトルは大破、自分たちは帰るすべを見つけるために、ロシアのステーションへ向かう。しかし、そこに脱出用のソユーズは役立たず状態。しかも、マットはそのステーションに到達するときのトラブルで、ストーン博士からとばされてしまう。

一人になったストーン博士は、何とか動くソユーズで、100マイル先の中国のステーションへ一人で向かう。そして、何とか脱出して帰還するというお話。

ラストはわかっているとはいえ、破片が飛び散る場面や、ステーション内の浮遊する物体の中を泳いでいくストーン博士のシーンなど、3D効果抜群に描かれていく。

特に、驚くほどの出来映えではないが、とにかく、息が苦しくなるほどの宇宙空間と、周りになにもないという孤独感がひしひしと伝わってくるし、3D映像も美しい。単純にエンターテインメントとしての映画を楽しむのにベストな一本でした。


「ふたりのアトリエ ある彫刻家とモデル」
これはいい映画だった。モノクロームの映像の中、淡々と進む物語のようなのだが、どこかに、生命の力強さを感じる。

監督はフェルナンド・トルエバである。

せりふから、背景は第二次大戦まっただ中のフランスのようである。一人の年老いた彫刻家クロスが、地面に落ちた木の枝や、大きく成長した木を見上げるシーンから映画が始まる。まるで、かつての自分の若々しい頃を思い出すかのような視線。

ある日、町で、妻が一人の娘メルセを見つける。早速夫に紹介し、クロスはその娘をモデルにすることを決意する。そして物語は、年老いた彫刻家クロスが、この娘の裸体をモチーフにして作品に臨む展開が中心になる。

純真で、何の汚れもなく、ケラケラとほほえみながら、クロスの指示にポーズをしていく。人生に枯れていたクロスは次第に、生気がよみがえってくるのを実感していく。

アイワイプという懐かしいフェードアウトフェードインを何度か使うという不思議な演出もこの作品の特徴です。

しかし、この娘は実はレジスタンスの一員で、森を抜ける人々を手伝っていたことが途中で明らかになってくるが、そんな中、密かにこの娘に女を感じてしまうクロス。そんな彼を暖かく受け入れる妻。なんと、リーを演じるのは、クラウディア・カルデンーレ。さすがに存在感と美しさで、目を奪われてしまう。

妻は夫クロスに、もう一度命を吹き込もうとしているかのようなのです。

やがて、完成、妻は弟が病気ということで一時クロスの元を去り、メルセも仕事が終わって自転車に乗って去っていく。残ったクロスは猟銃に弾を込め、完成した像を見つめていすに座る。木々の枝のショット。風に揺れる音、クロスの視線が木々をみると、そこにたくさんの鳥が。そして銃声。暗転。はたして、彼は自殺したのか。途中で、子供たちを脅すために銃を撃つシーンもあるので、決して自殺とは限らない。

命をもう一度再燃させて、その至福の時間の中で幕を閉じたクロスの姿が、衝撃であるとともに、何ともいえないほどに美しく、力強い。見事な作品でした。良かった。


「武器人間」
下手物趣味のB級映画の典型で、それを目的に見に行くのだから、納得の一本だが、とにかく疲れた。

つっこみどころ満載の、なんでもありか、なにをやりたいのか、目指したいものはああでもないこうでもない、という展開が何とも楽しい。しかも、絶対に眠くならないからいいのだ。・・・笑

映画は、ソ連軍の偵察隊を、本部の命令で記録フィルムにとるために、一人の男が参加するところから始まる。いかにもな、ナチスの旗を踏みつけて行軍していく様を、手持ちカメラが追っていって、とある村について、そこの教会で、何とも不気味な姿の人間が現れおそってくる。

頭にドリルの付いた人間、顔がプロペラになっていたり、手に巨大なはさみがついていたりと、何でもありの下手物世界。しかも、作っていたのがフランケンシュタイン博士の末裔で、結局、ソ連赤軍の攻撃で命を落としてエンディングなのだが、クライマックスで、レクター博士よろしく、頭蓋骨を切り開いたり、武器人間の本題を逸脱していく展開は、もうグロの極みである。

見終わって、ぐったり。そんな一本ですが、こういうジャンルも映画ファンにはたまらないから、すごい充実感である。