くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「眠れる美女」「エンリコ四世」「思い出のマーニー」

kurawan2014-07-23

眠れる美女
マルコ・ベロッキオ監督作品。と思って、見に行ったのだが、昨年見た作品だった。久しぶりに二重鑑賞。洋画ではあまりないのだが、油断してしまった。

しかし、前回みたときも、ちょっと眠かったので、しっかり見直すことができてよかった。それに、前回同様、質の高い作品であることは再認識できたので、それだけでも意義があったでしょうか。

物語は、尊厳死を巡る国会での議論の最中に起こる三つの物語で、それぞれの人間ドラマが、映像と音のしっかりした演出で描かれていきます。その、完成度の高さは、さすがに見応えのあるもので、細かいところは前回の感想で書いたので省略するとして、なかなかの一本でした。


「エンリコ4世」
戯曲の映画化で主演はマルチェロ・マストロヤンニである。

美しい景色が窓の外を流れていく車内のカメラ映像から映画が始まる。外の景色は朝焼けか夕焼けか、オレンジ色の空が写っている。中に乗る一人の女性の背後に、王冠をかぶり馬に乗る青年の姿がかぶる。彼はエンリコ4世に扮した彼女の恋人である。

20年前、仮装で扮した彼は、馬から落馬し、それ以来、自分を本当の王だと思いこんで城で暮らしている。いや、ここは精神病院なのかもしれない。その恋人のところを目指しているのだ。

狂人として男に接する友人たち、しかし、何とか彼を元に戻すために様々な演技をするのであるが、どこか、うまくかみ合っていないストーリーが展開していく。

時に、20年前のシーンが繰り返されたり、一瞬、現実とお芝居が交錯するのだが、実はこの男は正気に戻っていたのである。そして、20年前落馬の原因が、馬の後ろを剣で突き刺されたために落馬したのだと、その真相を語り、犯人と思われる男を剣でさしてエンディング。

めくるめくストーリーの交錯していく展開が、元の戯曲の優秀さを証明し、過去と現代を映像の中で繰り返しながら、どこか不可思議なこの主人公の男の心の動きを表現する演出の確かさが見事である。

映画としては、かなりシリアスなもので、非喜劇とはいえ、やはり戯曲であるというしばりがあちこちにみられる。それを映画として楽しめる空間のおもしろさを満喫できれば、この映画を楽しめたといえるかもしれない。


思い出のマーニー
なかなか良かった「借りぐらしのアリエッティ」の米林宏昌監督作品なので、ちょっと期待の一本。だったのですが、今回はいけません。まず、脚本がよくない。原作が外国ものなのですが、上手く翻案されていないために、どこかちぐはぐで、そこをカバーするようにストーリーを組み合わせていないために、気になって仕方がない。

まず、自治体から補助が出ていることに妙にこだわる杏奈、事故で両親をなくし、里子に出された彼女のいきさつが妙にしっくりこない。日本的に処理されていないのである。

舞台を北海道にし、そのどこかの片田舎にある巨大な洋館というのは、まだ許せるのですが、どうも奇妙なのです。いっそ、無国籍にして、設定は外国のどこかにしたほうが上手く処理でき、すんなり物語に入れたかもしれないのがちょっと残念。

そして、肝心のストーリーですが、これは原作があるので、この展開はこれでいいのですが、どうもアニメらしい夢が見えてこないし、感情移入できないほどに普通すぎる展開に終始して行く。

映画は、いまどきの友達のいない杏奈が、校庭の隅でスケッチをしているシーンに始まる。喘息もちの彼女は、医師の勧めで、養母の姉のところに夏休み遊びに行くことになる。いかにも田舎のその家で、例によって友達も出来ず、塞ぎこんでいると、入り江のかなたに美しい洋館を見つける。空き家だという説明だったが、明かりが見えたので、行ってみると、なんと、自分と同じ年くらいの少女マーニーがいて、友達になる。しかし、夕方、潮が満ちてきたときしか彼女に会えないし、なぜか夢の中にも出てくるし、どこか遠い記憶に彼女がいるような気がする。

前半は、マーニーが杏奈の記憶の中で作り出した少女のようなイメージで、非常にファンタジックに展開して行く。このまま、ミステリアスな展開も含めて、進むのかと思いきや、終盤で一気に全ての真相が明らかになり、実はマーニーは杏奈の祖母であり、寂しくしている杏奈の前に現れて、彼女を支えようとしたのだとわかるにいたり、一気に興ざめしてしまった。しかも終盤に登場してきためがねの女の子が、なんともとってつけたように杏奈と親しくなり、ことの成り行きに重要な日記を発見するなど、物語がここに来て荒っぽくラストシーンへ流れて行くのである。

声を演じた人も、いまいち、情感のない台詞回しも気になり、運く翻案されていないさまざまなエピソードも気になりと結局、ラストの感動は私には起こってこなかった。凡作ではないし、ジブリの力は見えるが、今回はダメですね。