くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アバウト・タイム 愛おしい時間について」「ファーナス 

kurawan2014-09-30

「アバウト・タイム 愛おしい時間について」
本当にリチャード・カーティスという人はストーリーテリングがうまい。というか、脚本のうまさは毎回感心してしまいます。

今回も、ちょっとしたラブストーリーかと思ってみていると、いつの間にか人生賛歌に変わっていって、ラストシーンを迎える頃には、すごく深い内容の物語を体験した充実感に浸ってしまう。

物語は実にシンプル。軽いテンポで今回の登場人物たちが紹介された後、ある日、父親から、実は当家の男性にはタイムトラベル能力があると告げられる主人公のティム。それも、暗闇で念じるだけで過去に移動できるというこれまた単純なもの。

よけいな理屈を排除して、いきなり本編へなだれ込む。

まずティムの最大の望みである、恋人を手に入れるために、まずは、一夏遊びに来たシャロンにタイムトラベルを駆使してアタックするが結局ふられる。

そして、しばらくして、一人のキュートな女性メアリーと知り合い、細かく繰り返すタイムトラベルで、失敗をカバーしながら、次第に彼女と恋を深めていく。もちろん、最初、父の知り合いで劇作家の人に訪れた不幸をただすために、タイムトラベルを使い、メアリーを見失うのだが、それも、時せずして再会、物語はティムとメアリーの二人の物語に、ティムの家族がからみ、愛する妹キットカットの人生も絡んで、単なるティムのラブストーリーから、次第にティムの家族の話、子供の話、父との物語へと流れていくのだ。

ティムの子供が産まれたら、その生まれた年寄り以前に戻れない、というルールなどを駆使し、やがて、父の死期が近づき、最後の思い出をはぐくむ、ティム。そして、メアリーの望みで、三人目の子供ができ、その子の誕生により、それより以前に戻れなくなり、父と会うことができなくなるというクライマックスへと流れていく。

一日を二度繰り返しなさい、という父のアドバイス。それは、毎日というのはこんなにすばらしいものなんだと、見つめ直すきっかけを与えてくれるし、なぜか、気持ちが豊かになってくるのを実感する。

やがて、父の死、三人目の誕生、妹キットカットの幸せ、ティムの家族のその後など、とってもハートフルなラストシーンからエンディング。

前半、細かくタイムトラベルするティムの行動が、ちょっとしつこく感じられたが、さりげなく挿入するタイムトラベルを、効果的に物語に生かしていく脚本のうまさに、引き込まれてくる。

なにか、とってもいいメッセージを受けたようなすてきな作品でした。


「ファーナス 訣別の朝」
カメラもいいし、ストーリー展開もいい、演出もしっかりした作品であるが、いかんせん、暗い、重い、しんどい。見終わった後、ぐったりするほどの充実感を味わう作品である。

監督は、スコット・クーパー。さすがになかなかの映像を見せてくれました。

物語はドライブインシアターに始まる。いかにも悪そうな男が車の外に吐いていて、横の女を罵倒し、隣の男と喧嘩をして去る。この男がクライマックスで主人公ラッセルに撃ち殺されるデグロートだ。

物語は、非常にまじめなラッセルと、ちょっと向こう気が強すぎる弟のロドニーの物語。
常に弟思いのラッセルは、ロドニーの尻拭いばかりしていたが、ある夜、事故を起こし、子供を死なせてしまう。刑務所にいる間にロドニーはイラクに出兵し、帰ってきたときは人間が変わって、違法なボクシングで金を稼いでいる。出所してきたラッセルのいうことも聞かない。

半ば自暴自棄のロドニーは、ペティという元締めに、さらに危険な格闘戦への出場を頼む。その主催者こそ、冒頭のデグロートである。

試合は無事終わったが、帰る途中ぺティとロドニーはでグローと立ちに殺される。しかも、デグロートたちが住む地区は警察もうかつに入れない場所なのだという。それでも、命がけでラッセルはデグロートに接近、その復讐を遂げるクライマックスとなる。。

違法なボクシングに出かけたロドニーとぺティの車のシーンと、ラッセルが叔父のレッドと鹿狩りにいくシーンで交互に映像を重ねるという手法で、ストーリー転換のきっかけとする演出はなかなかである。たしかに、あれほど入り込めない地区にすんなりと入って、デグロートに近づく展開はやや甘い。
さらに終盤、ラッセルに呼び出されて、のこのこでてくるデグロート、という展開は、あれほどもったいぶった無法地帯のボスという紹介を揺るがす荒っぽい展開なのはちょっと気になる。結局、のこのこ出てきたデグロートはラッセルに殺される。

終盤がかなり荒っぽいのは気になるものの、それを脇に置いても、作品としてはしっかりとした佳作だと思います。美しい景色のショットなど映像の美しさも意識した演出になっており、重苦しい物語を保管するという意味で、バランスは取れていたのかもしれません。もう少し脚本を丁寧に締めくくれば、秀作の域に入ったかもしれない一本でした。


「記憶探偵と鍵のかかった少女」
さすがに、私のようにすれた映画ファンにとっては、途中でだいたいの謎がわかったが、それを疑ってかかりながらみる、という感じでラストまで楽しむことが出来ました。その意味で娯楽映画としては成功作品かもしれません。

この手のミステリーは、映像のおもしろさ、カメラワークの凝り方などがポイントになるが、今更ながらの使い古されたアングルやカットのみだったので、目新しさはなし。気追い込んでみた割には、普通だったという感じでした。

映画は、一人の女性が、洗面所にいると、物音で玄関へ。背後に人影、傍らに主人公ジョンの姿。彼は人の記憶の中に入り込んで真相を探る能力があるという説明映像である。最後にジョンがかつて妻を死なせてしまった時のバスタブの場面になって、現実に戻り、発作を起こしてしまうジョンのカットからタイトル。

タイトルの後、しばらく仕事から離れていたジョンの姿。彼に一つの依頼が舞い込む。アナという少女が食べ物を食べないので、記憶を探って助けてほしいというもの。軽い仕事ということでジョンがアナの家に行くと、両親の説明で、彼女はずばぬけた知能指数と知力があると説明されるので、ここでだいたいストーリーが読めてしまう。

ジョンがアナの記憶の中に入って、心の中を探ると、とたんに食事をとるアナ。これで、さらに物語の展開が見えてくる。あとは、アナの学生時代の友人や、かつての先生などに会い、アナは恐ろしい少女だったというような感想を聞く。

ジョンの周りに謎の人影や、アナの姿が見えるところから、さらに、謎が見えてきたりする。

結局、アナは被害者ではないかという結論に達したジョンだが、ある夜、アナから電話で助けてほしいということで、いってみれば、両親が殺されていて、自分は閉じこめられて、やっとでたと思ったら、アナは森へ逃げて、警察はジョンを殺人で逮捕。気がつくと、ジョンが記憶探偵に調査されていたという画面になり、アナから「ありがとう」の写真が届きジョンは無罪に。かつて、アナを治療のために訪れたときに親しくなった女性の家に入っていってエンディング。

つまり、殺害したのはアナで、実はアナは恐ろしい少女だったという真相なのだ。

つまらないというわけではないが、すでに使い古された手法で、よくある映像演出では、すれた映画ファンは楽しませられないかもしれない。とはいえ、楽しみましたけどね。

こうして、みてみるとヒッチコックはすごかったと改めて思ってしまうのです。まぁ、気楽に見るミステリー作品だった感じです。