くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「不機嫌なママにメルシィ!」「レッド・ファミリー」

kurawan2014-10-08

「不機嫌なママにメルシィ!」
イヴ・サンローラン」のギヨーム・ガリエンヌが、自らの自伝的な物語を、主演、監督をこなした作品。非常に、個性的な構成で描いていくが、どこかまとまり辛さがあり、導入部からイマイチ入り込めなかった。

映画は開演5分前、今から主人公ギヨーム・ガリエンヌが一人舞台で、自分の半生を語るというシーンで始まる。

この舞台のシーンを交互に挟みながら、物語は彼の青春時代へ。娘が欲しかった母は、彼を女の子として育てるが、一方に父親は男らしく育てようとする。

学校や友達の間でもホモだとからかわれ、女の子達からもからかわれる日々を、コミカルな演出で見せていく。

カメラが移動とカットバックを繰り返し、独特のリズムで繰り出される台詞の面白さは、なかなかオリジナリティ溢れるのだが、どこか乗り切れないテンポが存在するために、のめり込んでいかない。

自分が女の子なのか、ホモセクシャルなのか悩む日々、確信が持てずに、あれこれ試してみたり、助言を求めたりするが、最後に一人の女性に巡り会い、結婚を申し込む気持ちになって、ようやく、母親の魅力ゆえに、自分に女性を愛する心が生まれたことを母に語ってエンディングとなる。
母親もギヨーム・ガリエンヌが演じるという見せ場が、最初は気になって仕方なかったが、乗り切れなかったとはいえ、ちょっとした一本だった気がします。


「レッド・ファミリー」
鬼才、キム・ギドクが脚本編集をした作品であるが、演出が違うと、これほどパンチがなくなるのか思える出来栄えでした。

ただ、非常によく構成された脚本ゆえか、見事に映画になっている。極端に韓国側の家族をダメ家族にし、北朝鮮工作員家族を理想的な形に描写して進む物語は、非常にメッセージが浮き上がってきます。ただ、北朝鮮の家族の苦悩の描写が、もう少しドロドロと深みを帯びさせれば、さらに良かったのですが、いかんせんイ・ジュヒョン監督では力不足でしたね。

一方の韓国側の家族も、もっと極端にしたらもっと笑いが取れ、ラストシーンも生き生きしたろうにとも思えます。

クライマックスは、北朝鮮の家族が、韓国側の家族を殺すのを見張っている工作員を説き伏せ、そのまま船に乗り、ミジョンを残して自害する場面へつながる。韓国側の家族が言い合いをした終盤の会話を自分たちが再現する場面の切なさは、胸に迫るものがありますが、後ろの女性がわんわん泣き始めたので、こちらが興ざめしてしまいました。

脚本の良さが作品を維持した感じの一本で、やはりキム・ギドクに演出して欲しかった気がします。