くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「シュトルム・ウント・ドランクッ」「ジャージー・ボーイズ

kurawan2014-10-09

シュトルム・ウント・ドランクッ」
こういう、映像詩のような作品は好きなので見に行ったが、どちらかというと、舞台劇のような作品だった。監督は天井桟敷出身の山田勇男である。

赤や青を多用した照明演出を施しているが、これは映画ではなく舞台の演出に近い気がする。
物語は大正を舞台に、時の権力に反抗する若者たちの物語である。繰り返されるシュールな会話と、カットの連続は鈴木清順の「ツィゴイネルワイゼン」のごとしだが、似ても似つかないと言えなくもない。この映像表現が、監督の個性だと言われれば、仕方ないのだが、映画としてスクリーンに写す姿になっているかは疑問。

有島武郎や甘粕大尉など、実在の人物を配し、物語に信憑性を生み出すが、いかんせん、時の追い詰められたムードがまったく迫って来ない。役者の演技にかかっている演出だが、どうもそれぞれの役者の迫力不足。中心になる主人公の存在感が、他の役者に食われていて、物語を牽引していかない。

面白く作れば、面白いレトロムード満載の一本になりそうだったが、ちょっと残念。いや、このムードを狙ったのかもしれないが、映画としては物足りなかった。


ジャージー・ボーイズ
さすがに、クリント・イーストウッド監督、うまい。素直にとってもいい映画でした。最近のイーストウッド作品の中では、一番良かったかもしれない。

なんといっても、妙なメッセージが見えない。ストレートにザ・フォー・シーズンズというかつての人気グループの物語として映画に仕上げている。それも、単なる成功物語でもなく、といって、よくある人間ドラマを前面にだすわけでもなく、程よいバランスで、栄光の軌跡とドラマ性、そしてエンターテインメントを組み合わせたストーリー構成が絶品なのである。

結果、嫌味のない、ストレートにラストシーンまで引き込まれる作品になった。エピローグの殿堂入りのシーンからエンドクレジットの群舞シーンまでの処理も見事。やはり、映画がエンターテインメントだとわかっている、イーストウッドならではの演出である。

映画は、後にザ・フォー・シーズンズとなるメンバーの、当初のリーダー的なトミーがスクリーンから観客に向かって語りかけるシーンに始まる。この作品、こういう風に、次々とメンバーがこちらに語りかけながらストーリーが進む。

当初、盗品をさばきながらの若き日々を軽く描き、やがて四人が揃い、奇跡の「シェリー」の誕生から一気にトップに躍り出て、やがて、グループ内の確執、家族とに軋轢ののち、ソロになったフランキーが、愛する息娘フランシーヌを失い、名曲「君の瞳に恋してる」を発表して、絶唱の中、エンディングへ流れていく。

主演を演じた四人、とくにフランクのジョン・ロイド・ヤングとトミーのビンセント・ピアッツァが素晴らしいが、脇に入ったクリストファー・ウォーケンが画面を締める。

どこがどうという際立った演出を排除し、職人技的な演出で貫いたイーストウッドの手腕に拍手したい一本だった。良かった。