くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「百円の恋」「幸せのありか」

kurawan2015-01-05

「百円の恋」
安藤サクラ全開!とにかく、彼女の個性で最後まで引っ張るバイタリティの固まりのような映画。

脚本が「松田優作賞」なるものをとったという話題なのだが、監督は「イン・ザ・ヒーロー」の武正晴ということで、この点は期待薄でしたが、ワンシーンごとに間延びするように思えるが、クライマックスのボクシングシーンはなかなかのものである。

32歳にもなって弁当屋を営む母のところで、引きこもっている主人公一子。出戻りの妹と大喧嘩して、家を飛び出し、深夜のコンビニバイトを始める。

とにかく、うっとおしいほどに沈み込んだ前半部分も、安藤サクラのあのままの個性と思えば映画としてみていられるから大したものである。

やがて、通り道のボクシングジムの狩野に興味を持ち、恋のような視線を送り、彼とささやかなデート、試合観戦ノアと、風でダウンした彼を看病したことから一緒に住み始める。

しかし、狩野が別の女と浮気したことから、本気でボクシングを始め、試合にでるというクライマックスへなだれ込む。

とにかく、不器用な二人のドラマが、まるで紗幕で覆われたように、津々と展開し、クライマックスのボクシングシーンだけ、一気にはじける展開は、脚本のうまさである。

全体にやや切れの悪い作品であるが、安藤サクラの個性と脚本の出来映えで、最後まで持った感じの一本、ネットでの評価ほどの傑作には思えないが、それなりの佳作の一本だった気がします。


「幸せのありか」
モントリオール世界映画祭でグランプリを取った実話に基づく物語である。元来、障害者を扱った映画は嫌いなのであるが、それなりの評価があるので見に行った。

不思議なほどに、心に訴えかけ、暖かくしてくれる秀作でした。確かに、脳性麻痺で不自然な動きになる主人公の物語なので、ちょっと最初は入りにくいのですが、終盤になり、気持ちを伝える、意志を伝えることができることがようやく周りが気がつくことになり、意志疎通が繰り返され始めると、だんだん、心に灯火がともったような感動が芽生えてきます。

さらに、知的障害者ではないから施設を移らないといけないことになり、その判断の面接で、障害の振りをして、元の施設に戻ってきて、顔見知りの人たちとふれあうシーンになると、何ともいえなく、人間っていいなぁと感じて感動している自分がいました。

映画は、終盤の施設移動の確認の面接シーンから始まります。そして時は子供時代にさかのぼり、医師や療法士から、意志を伝えることができないから、仕方ないと見放されるところから始まります。

愛する母でさえも、意志が伝えられることに気がつかず、ただ優しさのみで接する。映画は、主人公マテウシュの心の台詞で展開していきます。

向かいに住む女性と初恋を経験し、やがて姉の結婚と母が腰を痛めたため、知的障害者のいる施設に入ることになる。絶望するマテウシュですが、そこでマグダというボランティアの女性と知り合い、大人の恋を知る。

しかし、彼女も去り、ある日、障害者向けの記号の本で会話をする女性が来所、マテウシュの必死のアピールでようやく彼女に気が疲れ、26年たって、意志が伝えられることが理解されるのである。

淡々と展開する物語だが、マテウシュの心の葛藤が、劇的なドラマとなってストーリーを展開していく様が見事で、映像より心の言葉がスクリーンからあふれだしてくる様はすばらしいヒューマンドラマである。

最後は、じっとこちらを見つめるマテウシュの視線でエンディングだが、何ともいえない心が洗われたラストシーンに浸ることができました。