くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ダイナマイトどんどん」「童年往時 時の流れ」

kurawan2015-01-28

ダイナマイトどんどん
岡本喜八監督の見逃していた一本を見る。

とにかく、あわただしいほどにバイタリティにあふれたカメラワークと展開、縦横無尽に走る演出の迫力に、圧倒されるというよりも、爽快感に覆われていく。

無用な理屈などさておいて、一瞬の隙も見せずにどんどん先に進んでいく勢いがとにかくたまらない。これが岡本喜八の魅力でもある。

映画は、昭和25年、進駐軍の車の前を、やみ物資仕入れのためにやってきたトラックのシーンから始まる。そのトラックを花火やダイナマイト、鉄砲で襲いかかる主人公の加助たち。業を煮やした警察とMPはやくざ組織同士、野球大会で親睦を深めるという突拍子もない企画を計画する。

こうして、やくざ同士の任侠物語を、野球の試合に置き換えての抱腹絶倒な物語が始まる。

血の気の多い男たちが、なにかにつけて、殴り込みや喧嘩に発展しながらも、草野球の試合に素直に応じるあたりのコミカルさがとっても楽しい。

カメラは、手持ちを有効に利用し、人と人の間を好きなように移動しながら、どたばた劇のようなやくざ同士の喧嘩を映し出していく演出が見事。

間に、加助が密かに思いを寄せる小料理屋の女お仙と、かつての夫銀次とのほのかな男の恋物語を挟み、どこか現実離れした中に見せるやりたい放題の男の物語に、映画の醍醐味を見るのだから、全く岡本喜八の色というのは、ある意味映画黄金期の輝きを放っているのだと思う。

やたらうちにこもってこじんまりしている現在の若手映画人には、こういう映画こそ勉強してほしいと思えるのです。


「童年往事 時の流れ」
アハという少年の物語を描いた。ホウ・シャオシェン監督自伝的作品であるが、なんとも見事なリズム感を持った秀作だった。

物語はいともシンプル。一人の少年アハの少年時代から青年時代までを、アハの家族の物語として描いた作品である。台湾の物語にも関わらず、どこか自分の少年時代に重ね合わせてしまうほどに、郷愁を誘うストーリー展開で、時折挿入されるインサートカットや、そこにかぶる静かな音楽が時の流れを緩やかに語っていく演出がすばらしいのである。

アハのおばあさんとのさりげない思い出、少年時代に母にしかられたり、兄弟とのお話。青年になってからの恋や友達との日々など、台湾に限らず、誰にでもあるような幼き日々、青春の日々の物語が、本当に美しいくらいに切なく語られるのである。

父の死、そして母も病気になり、やがて死を迎える。最後に、とうとうかわいがってもらったおばあちゃんが老衰で死んでしまって映画はエンディングを迎えるが、本当にどこにでもあるある家族の物語なのだ。しかし、映像のリズム、静かに構えるカメラアングルの美しさが、映像表現として完成されているために、心に感動を呼び起こすのである。

さすがにホウ・シャオシェン監督、その才能を垣間見た気がする一本でした。良かった。