くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「シンデレラ」(ケネス・プラナー監督)「王妃の館」「フォ

kurawan2015-05-01

「シンデレラ」
すばらしい衣装デザイン、見事な美術セット、ため息のでるような色彩演出。さすがにケネス・プラナー監督の「シンデレラ」はひと味もふた味も違う傑作でした。

本来の物語を丁寧に膨らませ、見せるべきところは思い切りスペクタクルに、語るところは徹底的に感動的に、そして、オリジナルの名作アニメへのオマージュも忘れない配慮に、圧倒されてしまった。

最初も書いたが、特筆されるのは、サンディ・パウエルのデザインしたすばらしいドレスの数々ある。ケイト・ブランシェットのドレスに最初に目がいくが、周辺の人々のドレスも、主役を引き立たせるようにデザインが工夫されている。さらに美術のダンテ・フェレッティの、さりげない、シンデレラの家の中の調度品をはじめ、壁のデザイン、シャンデリア、部屋のドアの配置なども見事。

そして、シンデレラが、ヘレナ・ボナム・カーター扮する魔法使いによって変身する場面の見事さ、お城の中の豪華絢爛たる演出、そして、12時を回って、魔法が解ける間際のシンデレラの脱出シーンのはらはら感、このあたり、明らかにケネス・プラナーの力量が光る。

そして、魔法使いが靴を作るときに「靴は得意なの」というせりふで、靴だけが魔法が溶けないという細やかな配慮のある脚本。

見せ場のバランスの配置や、カメラの使い方のうまさも光る。

シンデレラと王子は、すでに観客が作り出したイメージがあり、それを実写化する際には非常に難しい物があるが、そこはさすがにケネス・プラナーはみごとな演出で処理した気がする。

シンデレラと王子がダンスする場面は二人の衣装が浮かび上がるように、周辺の人々は暖色で、二人はどちらかというと寒色にするなどの配分もすばらしい。

久しぶりに、名作というなのおとぎ話を見たような気がします。本当にすばらしかった。


「王妃の館」
浅田次郎の原作を橋本一が監督をした作品だが、とにかく、脚本が雑なこと、細かい演出が荒いこと、わき役が弱いこと、で面白くなるはずのコメディが、全部滑っていく。

主演の水谷豊のカリスマ的な存在感が光らないために、ストーリー全体が散漫になってしまったし、脇の登場人物の背景が描ききれなかったために、物語が実に薄っぺらくなった感じでした。

物語は、フランスパリのホテルに、あるツアー客がやってくるところから始まる。高級ホテルで、リムジンで乗り付けた客は、夢を持って、パリを満喫しようとする。ところが、みんながでていくと、やすいツアーでこのホテルにきた別の客が、同じ部屋に泊まる。

夫婦で仕掛けた旅行ツアーで起こるどたばた劇だが、あくまで、北白川右京という小説家の書いている小説が劇中劇として、舞台風に登場する。

前半は、パリの観光映画的で、あえて安っぽい衣装と、適当で軽いせりふ回しが続くが、それが、わざとではなく、意図しない荒さに見えてくるのが、後半部分、それぞれの人物背景を挿入し始めてからである。

結局、劇中劇と一つになるラストシーンでエンディングだが、どうもうまくまとまっていないし、エピソードの配分も悪い。面白いはずなのに残念。


「フォーカス」
なるほど、この映画は相当面白かった。期待していなかったので掘り出し物を見た感じです。監督はグレン・フィカーラジョン・レクアである。

映画は、一人の男ニッキーがレストランに予約を入れるところから始まる。最初の電話で断られ、別の電話をした後、食事のシーンへ。そこで男に絡まれている女性ジェスと出会う。

どうやってこのレストランの予約を入れたかを、さりげないせりふで説明する脚本のおもしろさもなかなかの作品。

ジェフは実は、スリの常習者。ニッキーは彼女に誘われホテルの部屋へ。そこで、ジェフの相棒の男が飛び込んできたのを巧みにかわしたニッキーに、ジェフはすっかり惚れ込み、弟子にしてくれと頼む。

ニッキーは、祖父の代からの詐欺師集団のリーダーで、今回もスポーツの試合に集まる人々をカモに、大金を稼いだ。そして、その大金を持って、ジェフとアメフトの試合観戦へ。そこで妙な中国人とギャンブルをはじめ、持っている金をすべてすられたあげく、さらに好みの選手を当てる賭を申し出る。しかもジェフに答えさせるというニッキーにあきれるジェフ。しかし、それも、あらかじめ仕込んでいた物で、ジェフをもだまして巻き込み、見事に金を奪い返し倍にする。しかし、分け前をジェフに渡し、別れてしまうニッキー。そして三年がたつ。

カーレースの会場で車を見定めるニッキーの姿。そこに一人の男ガリーガが近づく。彼はライバルのチームをけ落とすために、嘘のプログラム機械を与える計画を持ちかける。ガリーガの腹心の老練なオーウェンズという不気味な男も登場。

相手のマキューエンに近づくためのパーティで、ニッキーは、成長したジェフに再会。ジェフはガリーガの恋人だった。

こうして、新たなニッキーの計画がスタート、一方で、やはり愛しているジェフとよりを戻すべくかつての相棒たちが力を貸す。この、次々と展開するストーリーに、どこまでがニッキーの計算なのかと必死で追いかけていくあたり、全く息をもつかせないのだ。

そして、計画は成功、マキューエンから大金を手にするが、一方様々なレースチームからも同様に金を得るニッキー。実は、すべてのチームにガリーガの本物のプログラムを売り渡したという種明かし。ところが、ガリーガが、ライバルチームに忍ばせていたスパイが真相を暴き、まんまと逃げるニッキーとジェフの車に体当たりし二人を埒する。

ここで、ニッキーはどうやってプログラムを盗んだかを白状するが、実はジェフはガリーガの恋人でも何でもなく、息詰まって追いつめられるニッキー。そこへオーウェンが発砲し、ニッキーは倒れる。当然ガリーガはうろたえ、その場を去り、ジェフもうろたえるが、実は、オーウェンはニッキーの父親で、かつて、会話の中にでてきた方法で、安全なところを銃で撃ち抜いたのだ。

二転三転、計算され尽くされた脚本のおもしろさ、ラストまで手を抜かない緻密な演出、ここまでやられると、面白かったと答えざるを得ない。

最後に父は金をすべて持って去り、ニッキーはジェフにつれられて病院へ向かって暗転エンディング。

エンドクレジットの最後に「華麗なる賭け」のテーマが流れる凝りようは、もう半端ではなかった。本当に久しぶりに楽しんだ、面白い映画だった。