「風ふたゝび」
今や東京フィルムセンターにしかない作品で、いわゆる恋愛メロドラマ。監督は豊田四郎であるが、彼の作品の中では凡作のレベルでしょう。
原節子扮する主人公が、山村聰、池部良の二人の男性の間で揺れる女心を描いた物語で、特に秀でた映像や演出は見られるわけではない。
大きく展開する物語ではなく、原節子のはしゃぐような初々しい演技と、一方で一度結婚に失敗した女という複雑な心境を二重に演じる姿はさすがに見事なものである。
今となっては、若干鼻につくキャラクターですが、極端な演技わけで存在感を出した豊田四郎の演出は成功していると言えます。
名作とかのジャンルではありませんが、丁寧に作られた古き良き日本映画の一本という感じでした。
「殿様ホテル」
珍品と言える一本、とにかくたわいがないというより荒唐無稽なコメディである。原節子がゲスト出演として女スリとして登場する。久しく行方不明だった映画である。監督はクラタ・フミンドという。
元華族のの大富豪の豪邸の門から映画が始まる。これから家族旅館として、宿屋を始めることになったここの主人、今日がその開業日である。慣れない半纏を着て、電話応対やチラシ張りをする。やがてお客が次々とやってくるが、妾連れだったり、待合まがいだったり、闇屋だったり、末は女スリまで泊まる。
そんな姿に嫌気が刺した妻は出ていく。
次々とトラブルが起きて、最後には、偽物売りと詐欺師が取引をし、そこに関わった宿の主人は、もみ合いの中で、せっかく復員してきた女中の兄を死なせてしまうし、執事長の番頭は気がふれるしと、支離滅裂なクライマックスへ。
結局、主人は北海道で心機一転と出て行く。彼を追って女中が後を追い、恋愛成就でハッピーエンド。って、一体なんなのという映画である。
とにかく、珍品で、出ている役者はさすがに当時の映画全盛期の顔ぶれだが、作品は、なんともコメントしようがない映画だった。