くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「キャバレー」(角川春樹監督版)

「キャバレー」(角川春樹監督版)
角川春樹といういわば素人監督の作品ながら、映画として仕上がっている気がするちょっとした作品でした。フィルムノワールの空気を漂わせながら、甘ったるいジャズのメロディを背景に展開する男と女、人間同士のドラマはなかなかの出来栄えだった。

モノクロームの画面でサングラスの男が一人の青年を撃ち殺す。カメラはゆっくりとその男を追っていき、その行く彼方にあるのは、スターダストという名前のキャバレー、男がフレームアウトすると、ゆっくり色がついて本編が始まる。延々とした長回し、フィックスで据え付けたフレームの中で会話が進み物語が流れる。

スターダストという一軒のキャバレーで展開するヤクザ同士の抗争や、男と女、ジャズへの思いなどが描かれて行く。ややレトロな味わいを見せながらの甘ったるい物語は、まるで、一昔前のニューシネマの様相でもある。そう捉えると、つまりは亜流と言えなくもないが、亜流といっても、過去の名作を踏襲した演出もまた映画の味わいであり、魅力である。

一通りの物語がそれなりの終焉を迎え、スターダストの閉店の日、主人公たちが店を去り、画面はゆっくりとモノクロームに戻って映画が終わる。うん、うまい。多分、作った角川春樹自身も自己満足出来たのではないかとおもいます。好きですねこの映画、そんな一本でした。