「パリ、恋人たちの影」
本当にシンプルな話なのに、いつの間に心に響き渡って来る大人のラブストーリーでとってもいい映画でした。監督はフィリップ・ガレルです。
ピエールとマノンは二人三脚でドキュメンタリー映画を作っている。お互いに愛し合う夫婦だったが、ある日、ピエールは研修生のエリザベットと恋に落ちてしまう。
ところが、エリザベットはマノンが男性とあっている場面に偶然にも二度も目撃したとピエールに告げる。こうして夫婦お互いに浮気をする結果、当然、あるとき二人は諍いを起こし、言い合った末に離れ離れになる。
そして一年後、彼らが取材した戦争の英雄の老人が死に、その葬儀の席で再会するのだ。お互いにお互いの相手と別れ、今はそれぞれが一人。死んだ戦士も実は戦士を装っていただけなのだというより真実が見える。
そしてピエールとマノンはお互いにお互いがいないと生きていけないことを知り、しっかりと抱き合って暗転エンディング。本当に大人の愛のハッピーエンドである。
モノクロームで捉える街並みが美しいし、さりげなくテーブルに置かれたワインボトルと果物の配置など絵画のごとくである。そして、二人の間に溝ができ始めるときの会話の絶妙さにも唸らされる。以前と何か違う。いや、そんなことはないのに、お互いに相手を見る目が変わってしまっているのである。その溝が次第に広がり破綻。
そして、再会して、お互いを再度認め合ったときの微笑み、笑顔が最高に美しいのです。素敵な大人のラブストーリー、そんな一本でした。
「愛の誕生」
淡々と描かれる中に、男と女のさりげないラブストーリーが詩的に語られる作品で、大きな展開がなく、次々と描かれる恋の物語が不思議と引き込んでくれる空気のある作品でした。監督はフィリップ・ガレルです。
二人の中年男が繰り返す家庭と恋の物語。明らかに不倫ドラマが展開するのですが、なぜかフィリップ・ガレルが描くとドロドロにならずに実にピュアな感覚で映像になるから不思議です。
シンプルな物語なのですが、画面が本当に詩的で美しいし、大人の恋の物語という空気が決して途切れないので見ていて爽やか感があります。
ラストが悲劇でも喜劇でもなくポツンと終わるエンディングが実に清々しい。こういう詩的な画面が日本映画ではなかなか出ませんね。綺麗な一本でした。