くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「灰色の石の中で」「長い見送り」

kurawan2017-06-12

「灰色の石の中で」
非常に絵作りの美しい映画で、淡い緑や黄色の色彩を中心に、綺麗に配置された構図で描かれるスタンダードな画面がとっても素敵なのです。ただ、作風は非常にシュールな形で、物語はあるものの、どこか抽象的に訴えるような演習が見られます。監督はキラ・ムラートワです。

一人の少年ワーシャの母がなくなり、非常な孤独感に落ちていく。さらに判事でもある父も妻が亡くなった孤独に苛まれていく。

そんなワーシャの前に兄と妹の二人の子供と出会い、物語は動き始めるのですが、展開がワーシャの心象風景のごとしで、時にジャンプカットされたり、斜めの構図が挿入されたり、やや抽象表現のようなカットも入るので、面白いのですが、わかり辛いといえばわかり辛いです。

ラストも紋切り型で終わり、あっけないエンディングで、あれっと思わせる下りが個性的な作品でした。


「長い見送り」
夫と離婚した母は、その孤独感もあって、執拗に息子にまとわりつく姿と、そんな母を疎ましく思いながらも、慕う息子の姿を描いたドラマですが、モノクロなのに美しい構図とカットの繰り返しがちょっとした見どころでもある一本でした。監督はキラ・ムラートワです。

夫と離婚したエフゲーニャが何かにつけ息子サーシャにまとわりついてくるシーンから映画が始まる。電車に乗れば隣に座り何かと声をかけてくる。そんな母にうんざりするサーシャは離れて暮らす父親に連絡を取り、父と暮らすことを望んでいる。さらにガールフレンドと遊び、母から少しでも離れようとするが、母親は息子の行動が気になり、関わってくる。

物語はその繰り返しをシチュエーションを変えて綴っていき、細かいカットの切り返しなどを交えて展開していく。

最後は二人で見に行ったパフォーマンスの舞台で、母親が執拗に席にこだわり、息子が去っていくというのを知って苛立つ様子を露骨に見せつける。

そんな母に息子サーシャは、離れないよと優しい声をかけて映画が終わる。
紋切り型でエンディングという形をとるが、何かこの先に余韻が残る。

ロシアで作られたという背景を見るとなかなかのチャレンジ精神が見られる一本で、画風といい、ちょっとしたクオリテイの作品だったと思います。