くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「霧の中の男」「俺は待ってるぜ」「風速40米」

kurawan2017-07-31

「霧の中の男」
モノクロームの影絵のような絵作りがとにかく映画的で美しい作品で、前半のサスペンスフルな展開と後半のくどいほどの回想シーンが完全にバラバラなのは別とすればちょっとした作品でした。監督は蔵原惟繕です。

車の後部座席からのカメラで前に座る二人の男と、ワイパーの動きを捉えるシーンから映画が始まり、この二人のやくざ者が一人の女を交えて、或る人殺しをする。

一方ガソリンスタンドを営む若者の恋人の父親は警察官で、たまたま娘が恋人のスタンドに出かけていく。霧が深く身動き取れないまま、泊まることになるが、そこへ、無理をして逃亡してきた冒頭の二人の殺し屋ガソリンスタンドに立ち寄ることになり、とサスペンスが盛り上がるが、実はこの殺し屋の一人がスタンドの若者の兄貴と戦友で、過去に撃ち殺したことがありという回想シーンが膨らみ、どんどん話があらぬ方向へ行って、最後は、悪者は死んで大団円。

ストーリーの組み立てはどこかちぐはぐながら、横に長い画面を見事な分割で捉え、影絵のような画面作りがとにかく美しい。霧の中でどうしようもない閉塞感と陰影が醸し出す独特のサスペンスが絶妙。終盤の回想シーンを思い切って外せば傑作だったのではないかとさえ思える映画だった。


俺は待ってるぜ
とにかく、構図が抜群に美しい。バチっと配置された街灯や彼方の船、人物を手前と奥に置いた岸壁など恐ろしいほどに見事なのです。どこか日本離れした作品作りに引き込まれる。しかも、喧嘩シーンやあ回想シーンのオーバーラップとカットバックの見事な編集にも感動。蔵原惟繕監督のデビュー作、素晴らしかった。

一人の男の足元を追っていくオープニングからポストにエアメールを投函してタイトル。汽車が近くを通るカフェを経営する主人公は一人の女と出会い、自分のカフェに泊まらせてやる。しかしこの女は以前いたキャバレーで襲われそうになり逃げてきた女。

一方主人公の青年は元ボクサーで、喧嘩で人を殺したため、ボクシングの夢を捨て、ブラジルにいる兄貴から呼ばれるのを待っている。しかし出せども出せども返事のない手紙。

やがて物語は女が勤めていたキャバレーのボスが主人公の青年の兄貴を殺したことがわかり、その復讐をして終わる。

モノクロームの陰影の使い方のうまさ、みごとな構図、とにかくこれが映画の画面だと言わんばかりの傑作だと思いました。見応え十分な日活全盛期の一本と言えます


風速40米
映画の出来栄えは普通ですが、やはり石原裕次郎が出るとそれだけで映画が大人びて華やかになります。この存在感はすごいなと思う。監督は蔵原惟繕

大雨の山小屋から映画が始まる。雨宿りに入ってきた女性登山者に先に小屋にいた不良若者が絡み、それを裕次郎扮する主人公と友人が助けて物語が始まる。

帰ってみれば、就職活動で父親から大手建築会社に入るように勧められていて、父の再婚相手に娘がいて、その娘が先日の山小屋で出会った女性で、父は自分の務める建設会社に息子を勤めさせたがらない。

その理由は、父がわざと工期を遅らせ株の値打ちを下げて大手企業に吸収させられる手助けをしていて、といろいろあり亭の適当なストーリー展開。しかも舞台は田園調布のセレブ家庭という、まさに映画のロマンいっぱいの夢あふれる空気がたまらない。

結局目が覚めた父の手助けをして工事を予定通り終わらせ、大手企業の妨害も新聞沙汰になり、何もかもハッピーエンドで、なぜか父は咎められず円満退職と、ツッコミどころ満載ながら、まぁいいやと終わる。

高度経済成長真っ只中の日本の、ある意味がむしゃらな社会情勢を背景にしたほのぼの映画で楽しかった。古き良き時代だね。見所がクライマックスの台風の中のシーンという売りもまた苦笑いしてしまうけど、これが全盛期の映画だと思う。