くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「離婚しない女」「マルホランド・ドライブ」

kurawan2017-11-01

「離婚しない女」
神代辰巳監督の一番嫌な部分が前面に出た作品で、くどい、しつこい、間延びする展開が延々と続くのに、正直終盤は辟易としてしまった。しかし、これが目指した姿としての映画作りだったとしたら、成功かもしれません。倍賞千恵子倍賞美津子の姉妹共演という話題もあった作品。

事業で成功している山川という男の妻美代子は山川の友人岩谷に付きまとわれている。ここに、夫とはすでに夫婦関係も途切れた一人の女高井由子と岩谷は出会う。由子は美代子に似ていたことから、岩谷は彼女にも近づき、この三人の三角関係の話が展開する。

山川の娘や、山川の行きつけのバーのママなど脇役が何気なさ過ぎて、今ひとつ際立たないし、美代子や由子が岩谷と関係を持ちながら家庭を捨てようとせず、行きつ戻りつを繰り返す様が倍賞美津子、千恵子姉妹では今ひとつ迫力と妖艶さにかけ、ひたすら煮え切らないもどかしさだけ面に際立ってしまう。

結局、それぞれの家庭も破綻し、どうしようもないままに終わるのだが、なんともあっさり感のない仕上がりが後味が悪い。まぁ、これも又映画の在り方か、と思える作品でした。


マルホランド・ドライブ
これはものすごい映画だった。こういう映画を見ると、自分がいかに凡人か情けなくなってしまう。これが才能がなせる技というものだろう。カルトという部分もなきにしもあらずながら、常識の壁を超えた感性のみで描く傑作とはこういう映画を言うのだろう。監督はデビッド・リンチ、彼の傑作の一本である。

ブルーバックで踊り狂う人々のシーンから映画が始まり、まず圧倒される。マルホランド・ドライブの看板と夜道を走る車。後部座席に一人の女が乗っている。車が途中で止まるので、不審に思う女の言葉に、前に乗っていた男がピストルを向けようとする。

乱痴気騒ぎで疾走する車が二台、道端に止まっていたさっきの車に衝突して大事故を起こす。なぜか、乗っていた女は無傷で、夜道をふらふらと歩き、疲れはてて眠る。夜があけ、近くの建物に入る。その様子を一人の女が見ているのに不審に思わず出かける。

カットが変わり、憧れの女優になるためハリウッドにきたベティ。叔母の家にやってきて、案内されるままに離れに入ると、そこにさっきの女がいる。てっきり知り合いだと思い、会話をするが、実は全くの他人とわかる。しかし、心配なベティはその女を助けるため記憶を辿ろうとするのが物語の本編。

しかし、何かおかしい。どこかしこに意味ありげなカットが挿入され、女が住んでいたと思われた家に行くと、ベッドの上で女が死んでいる。住んでいたと思われた部屋に死体があり狂ったようになった女は髪を切り、ベティと同じ金髪のショートのカツラをかぶる。やがて、ベティと女は肉体関係になる。ベティはオーディションを受けるが、うまくいったのかどうかわからない。この辺りから不思議な空気が漂う。

映画の主演女優の件でプロデューサーと喧嘩した監督アダムが出てくる。そして一旦は会議の場を飛び出すも、のちにプロデューサーのいうままに主演女優を決める。

そして、ベティはキューブのようなものを手にして、女が持っていた鍵で開くと、カメラはその中に入って行く。そして、真相が明らかになってくる。

ベティは女優になるために入りウッドにやってきた。しかし、オーディションは別の女優カミーラに決まる。荒んでしまったベティは、叔母の遺産である大金でカミーラを殺すように頼む。それが車の場面。

しかし、次第に精神を病んでいったベティ、実は、別名なのだが、彼女はベッドで自殺してしまう。これがベッドの上の死体である。

ストーリーの骨子だけ書くと簡単なものだが、散りばめられる様々なシュールなシーンと伏線の数々に圧倒されてしまうのである。これが映像で語るということだろう。恐ろしいほどの映像世界にただただ圧倒される映画だった。凄い。