くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「人生はシネマティック!」「ゴッホ 最期の手紙」

kurawan2017-11-14

人生はシネマティック!
台詞もいいし、物語もドラマティックなのに、何かが足りない。一本ズバッと抜けるものがないのか、とにかく、めちゃくちゃいいはずなのに、変に冷めてしまう。でもこの映画は好きですね。こういう作品は大好き。なのにもったいない。そんな映画だった。監督はロネ・シェルフィグです。

1940年ロンドン、画家の恋人エリンと一緒に暮らすカトリンは秘書として働いていたが、たまたま書いたコピーが情報局映画局のトムの目に留まり映画制作の脚本を書くことになる。題材は双子の姉妹がダンケルクで兵士を救った話を膨らませるというもの。

ところが、取材をして見たら実話ではなかったり、ベテラン俳優がわがままを言ったり、さらに政府によるチャチャが入ったりと脚本は二転三転して行く。しかしこの映画の良さはその一見コミカルな展開の中に人情味溢れる人間ドラマが隠されているところである。

ベテラン俳優アンブローズがさりげなく語る台詞が実に的を射ていて物語に箔をつけるし、さらに彼のエージェントが爆撃で死んで代わりに来た妹とのやりとりも、さらに、無理やり放り込んだアメリカ兵が大根であったり、カトリンの恋人エリンが別の女性と寝ていたりと、どんどんドラマティックに展開して行く。少々盛り込みすぎた感があるのが残念だが、アンブローズを演じたビル・ナイが実にうまく、どんどんその存在感を見せてくるあたりがなかなかの見どころ。

一方、カトリンに恋するトムは少しづつ彼女に近づき二人の間の愛もようやく現実になったかと思われたところで撮影所の事故でトムが死んでしまう。

その失意の中、映画は完成、引きこもったカトリンを連れに来るアンブローズがまたいいのである。そして彼は次の作品も頼みたいと語る。

こうして、紆余曲折のあった映画づくりの果てに、未来が見えて映画は終わる。カトリンたちの表情とエピローグのやりとりがなんとも素敵。いい映画です。映画作品としての完成度より、心に残る映画のような気がします。


ゴッホ 最期の手紙
こういう良質な映画はたくさんの人が見るべきだなと思います。ゴッホの絵のタッチで百人の画家が作画しそれがアニメーションとして動くという画期的な映像で見せるミステリー。美しい油絵が動いて行く様はとっても面白いし、ゴッホの有名な絵の人物や景色が所々に現れる様はワクワクしてしまいます。監督はドロタ・コビエラとヒュー・ウェルチマン。

郵便配達人の息子アルマンはゴッホが弟テオにあてた手紙を配達するように依頼されパリにやって来る。しかし、テオはすでにこの世になく、その未亡人に渡すべくゴッホが関わった人々と接するうちに彼の死の謎を探り始める。

膨大な量の油絵を元に、実際の俳優のモーションキャプチャーも絡めた映像はとにかく美しいし、まるでゴッホの絵が動き出して行く様は不思議な幻想世界に誘われる。

もちろん、ゴッホの死の真相は自殺なのだが、サスペンス仕立てで描いて行く物語の面白さと、油絵が動き出す不思議さ、そして、ゴッホの名画の数々が現れる面白さに魅入られていきます。

名画の色彩を完全に再現して行く画面づくりの美しさもあり、良質の一本という映画であり、必見の一本だった気がします