「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」
第二次大戦のポーランドワルシャワでユダヤ人を助けた動物園の経営者夫婦の実話の映画化で、映画自体は真面目な作品で仕上げている。まぁ、普通の映画という感じでした。監督はニキ・カーロです。
主人公のアントニーナは夫ヤンとワルシャワ動物園を経営している。アントニーナがベッドで目覚めると、ライオンの子供がふつうにベッドの上で寝そべっているシーンから映画が始まる。
動物園には半ば放し飼いにように動物たちが走り回っていて、その中を颯爽と走り抜けるアントニーナのショットがまず美しい。しかし、時は1939年、間も無くドイツ軍がポーランドに攻め入り、あっという間に爆撃で動物園は破壊されてしまう。
逃げた動物は射殺され、希少な動物はドイツの動物学者ヘックが連れ去ってしまう。アントニーナとヤンはたまたまユダヤ人をかくまったことから、動物園を中継にしてユダヤ人を脱出させる活動を始める。
こうして巧みに、ワルシャワゲットーからユダヤ人を連れ出し、動物園でしばらくかくまってから脱出させていくが、やがて戦況の悪化とともにドイツ軍のヘックも軍の上層部として目をつけ始める。
そして、ポーランド軍の反抗も激しくなって来た末期、とうとうヘックらは動物園に捜査に向かってくるが、すんでのところでかくまっていた人々を逃し、アントニーナらも見逃してもらう。そして一年、戦争も終わり、負傷で行方不明だったヤンも戻って来てエンディング。
歴史の史実ではあるが、それなりに丁寧に作られた絵作りは楽しい。動物園という舞台ゆえの動物を使った演出が、険しい話を緩やかに緩和していて良かったです。
「オレの獲物はビンラディン」
実話ではなければなんとも言えない物語、という感じだが、こういう人間がいたのだから仕方ない。
神の啓示だからとビンラディンを捕まえると一人パキスタンに向かったゲイリー・フォークナーという男の物語である。監督はラリー・チャールズ。
いかにも変人といういでたちのゲイリーは、自分のやるべきことはビンラディンを捕まえることなのだという神の声を聞く。というか画面にはキリストみたいなのが登場するから笑えてしまう。
なぜか日本刀を持って、パキスタンに乗る込み、現地の人たちと親しくなるわ、騒動を起こすは、一方アメリカでは一人の女に惹かれるわ、やりたい放題の展開なのだが、今ひとつ、細かいエピソードにインパクトがなくて、テンポが乗ってこない。
もっと面白くなりそうな掛け合いシーンなどもあるのに、テンポが悪くて、ただのおふざけにしかなっていない。
結局、最後は本物が捕まったというニュースを見るのだが、それを信じようとしない。しかし、最後の最後は女の元に帰ってくるし、一人で行ったというのが話題になってテレビに出るし、末は映画になるのだからアメリカは面白い国やなと思います。
「Mr.LONG ミスター・ロン」
なんとも下手くそな脚本と芸のない演出に辟易とした一本。観客が見えていないくどくどした展開がなんとも言えなかった。SABUという監督、こんなに下手くそやったかなという感じである。
男たちが、ヘマをした仲間の噂話をしている。どうやら死体の処理に失敗したらしく盛り上がっている。長回しとカットを繰り返して延々と語るこのファーストシーンは面白く、そこに噂の本人が帰ってくるが後ろから刺されてその場に倒れる。後ろにロンという殺し屋が立っていて次々と男たちを倒し、置いてあった大金を持って去る。
ロンに次に依頼されたのは東京での殺しで、ターゲットに近づいたときにふとしたことで気がつかれ追われる。なんとか逃げ果せたものの、傷ついて廃屋の脇で倒れているところに子供が現れ、服や食べ物などを持ってくる。この導入部もなかなか面白い。
やがて次第にその地域の人々が彼の周りに集まってくる。子供はロンと同じ台湾人で、母親はシャブ中毒である。ロンはその母親を助けてやり、地域の人々と生活するようになり、屋台を引いて台湾メンの店を始める。
この後、この女がいかにこういう境遇になったかを延々と描くのと、かつての恋人との経緯もくどくど説明する。ここが非常に良くない。ただまどろこしいようにしか感じられないのと、ロンの物語がぼやけてしまう。
なんとかロンの話に戻り、この女と子供と三人で平和な毎日がおとづれたかと思われたが、かつて女にシャブを教えたやくざ者の男が現れ、女は自殺、そこへロンを追って来たヤクザたちが襲いかかるが、全員ロンに返り討ちにされ、ロンは台湾に帰る。
元の生活に戻ったロンの前にかつての地域の人たちが訪ねて来て、子供を抱き上げて映画が終わる。
とにかく、ストーリーの構成が良くないし、それぞれの演出がなんとも素人臭くて見ていられない。前半は頑張って演出してるのだが終盤が適当に流した感じがある手抜きが目立った。ラストの車を止めるくだりなど学生映画のレベルである。
話が今ひとつ見せたいものが見えないのと、あまりに雑な脚本と演出に、たまらなく長く感じた映画でした。