くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「LBJ ケネディの意志を継いだ男」「プロヴァンス物語 マルセルのお城」

「LBJ ケネディの意志を継いだ男」

物語のほとんどがケネディ大統領の存命時代なので、ジョンソン大統領の話なのかケネディ大統領の偉業の話なのかよくまとまらないのですが、ケネディ暗殺事件は何度も映画になっていますが、その直後のジョンソン大統領については触れられることが少ないので貴重な物語を知ることができました。映画としては丁寧に作られた一本だったと思います。監督はロブ・ライナー

 

南北戦争が終わり奴隷解放になって百年経つのに今だに黒人差別が公に起こっている。それに対して、公民権法案を提唱して、混乱と半ば苦境に立つジョン・F・ケネディの今から映画が始まる。副大統領についているのは議会については知りすぎるほど熟知したリンドン・ジョンソン

 

巧みな人物関係と見事な懐柔策でケネディを支えているジョンソンの姿を丁寧に描きながら、やがて運命のダラスで、ケネディが車でパレードするシーンがかぶる。時にこれまでの二人の姿、何かにつけ、いがみ合うケネディの弟ロバートとジョンソンの姿を描く。

 

さらに、南部出身のジョンソンに歩み寄る南部の有力議員ラッセルの姿なども交え、当時のアメリカの複雑な状況を描写していく演出はなかなかのものである。

 

そして、運命の時間が刻々と迫り、銃声が響き、間も無くしてケネディが亡くなり、憲法通りジョンソンが次期大統領に昇格。誰もが公民権法案の頓挫を想像したが、ジョンソンは確固たる意志でケネディの願いを受け継ぎ、所信演説ののち見事に公民権法案を成立させるのがクライマックスとなる。

 

細かいシーンの繰り返しと時間を交錯させた展開で、緊張感が高まる様子を見事に描写し、ラストシーンで一気にアメリカの未来の希望を見せる一方で、泥沼化するベトナム戦争の危機をさりげなくテロップして映画が終わる。

 

流石にそれなりのクオリティの作品ですが、なんで今更という思いも起こらないわけではない作品でした。

 

プロヴァンス物語 マルセルのお城」

前作に引き続きのどかな物語が展開。原作が三部作らしいが、映画は二部作で終わるので、ラストはかなり端折ってしまうが、たわいのない人生の一コマが美しい自然の景色をバックに描かれる名編でした。監督はイブ・ロベール。

 

前作で夏休みが終わり街に戻ったマルセル達だが、再び訪れた休暇でマルセルの丘に戻る。そこでマルセルは一人の少女と仲良くなり、ほろ苦いながらも初恋を経験する。

 

やがて一家は母の計らいで毎週末をラ・トレーユ村の丘で過ごすようになるが、駅から非常に遠く、たまたま出会った父の教え子の計らいで、大きな屋敷の敷地内を無断で潜れるようになり助かる。

 

しかし、最後の最後、屋敷の管理人に見つかり、役人に報告するからと脅され追い返される。てっきり教師を免職になると嘆いた父だが、教え子の計らいで難を逃れ、やがて教育功労賞を受ける。

 

やがて時が経ち、マルセルの親友リリも銃弾に倒れ、母も亡くなり、マルセルは映画会社を起こして大成功する。そしてプロヴァンスの丘に映画村を作ろうと土地を物色、そして手に入れたのは、かつて、こそこそと通った大きな屋敷だった。

 

幼い日々がマルセルに蘇り、人生の機微を噛み締めながら、時の流れを実感して映画が終わる。

 

たわいのない話ですが、さりげない出来事に一喜一憂する微笑ましい家族の物語は、どこか人間の本当の姿を思い出すような感動を呼び起こしてくれます。名編というのはこういう映画を言うのでしょうね。