くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「バーバラと心の巨人」「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」

バーバラと心の巨人

グラフィックノベルを原作にしたファンタジックな物語なのですが、ちょっと展開のリズムが悪いのか、間延びしてしまうのがとっても残念な作品。主人公を演じたマディソン・ウルフも周りの脇役もいい感じなのに、エピソードの配分と演出の畳み掛けが上手くテンポにのっていない感じでした。監督はアナス・バルター。

 

主人公バーバラはいつも耳にウサギの耳をつけて、自分にしか見えない巨人から町を守るために毎日、いろいろな仕掛けや防護策をしながら生活している。そんな彼女をクラスメートもおかしな子として扱っていた。そんな時、一人の転校生ソフィアが近づいてくる。さらに新任の心理学士モル先生も彼女に興味を持っていた。

 

バーバラは姉カレンが働きで生活しているが、カレンも奇行を繰り返すバーバラにうんざりしていた。さらにクラスのいじめっ子もバーバラを目の敵にし始める。

 

次第に巨人の脅威が迫ってくる中、たまたまバーバラはソフィアと喧嘩してしまう。しかもそれにつけ込んだいじめっ子がソフィアに付け入り、バーバラが海岸などに仕掛けた巨人対策の仕掛けを教え壊してしまう。

 

その現場に駆けつけたバーバラはいじめっ子に戦いを挑むが頼みにしている自分の武器が作用せず、返り討ちにあってしまう。気を失ったバーバラを自宅の二階に運んだソフィアはそこで、バーバラの母がベッドで寝ているのを目撃する。

 

バーバラの母は病気で余命いくばくもなく、その死を受け入れられないバーバラは、死を巨人とすり替えて、母を守らんとしていたのだ。モル先生もその事実を知り、バーバラに話すが、その場を飛び出してしまう。

 

ソフィアに秘密を見られたバーバラは学校へ行かず、廃線跡の隠れ家で間も無くやってくる巨人と戦うべく準備していた。やがて巨大な嵐がやってきて、海岸にきたバーバラは巨人と最後の戦いに臨む。ソフィアは、海岸にあるバーバラの隠れ家で息を潜め、時間の過ぎるのを待った。

 

やがて海から巨大なタイタンが現れ、バーバラは秘密の武器で敢然と戦いを挑み、見事に倒してしまう。そしてようやく、現実に目を向けたバーバラは、母のベッドに顔を埋める。

 

夏休みが終わり登校の初日、うさぎの耳もつけていないバーバラをモル先生が呼びに来る。間も無くお母さんが行ってしまうという。そして葬儀の場面にカットが変わり、葬儀が終わりカレンと一緒にバーバラは歩き去って映画が終わる。

 

一人の繊細な心を持った少女の、切ない心の葛藤の物語を、架空の巨人の存在というファンタジックな設定で描いた面白さは、本当にオリジナリティ満点なのですが、バーバラ以外のキャラクターの絡み方がどうも弱く、テンポに乗り切らなかった感じです。面白くなりそうで感動を呼びそうな展開なのにちょっと勿体無い感じの映画でした。

 

「音量を上げろよタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」

久しぶりの三木聡監督作品なので、かなり期待したのですが、いつものノリはちらほら見えるのですが、全体が一つにまとまらない上に、妙な間延びが目立ってしまって、入り込み切りませんでした。麻生久美子岩松了などいつもの常連が出てる場面は決まっていたのですが残念。

 

路上ライブをしているふうかのシーンから映画が始まるが、極端に声が小さくて、観客が聞こえない。という設定を全て台詞で見せているオープニングからまず弱い。続いて、人気のロックシンガー、シンのステージ、もう歌うのは控えたほうがいいと周囲に言われている。彼はその大音量の声を出すため声帯ドーピングという注射をしてステージに立っていた。そして、この日ステージで歌っている最中に血を吐いて倒れてしまう。

 

逃げ出したシンはバイクで疾走していて、帰り道を歩いていたふうかとぶつかる。そしてふうかはシンを病院へ連れて行くが、間も無くして行方をくらます。

 

ふうかが路上ライブしていると、しゃがんで聞いているシンを見つける。あまりに声が小さいふうかをなじるシン。口パク疑惑が起こって、またまた行方をくらますシン。次第にふうかとシンは何かにつけ会うようになる。

 

この辺りの流れが今ひとつまとまっていないし、時々三木監督らしいノリのシーンが挿入されるが、その場面だけが際立ってしまっている。シンの大音量の声も説明あっての迫力で映画になっていない。

 

ツアーさえもドタキャンし、追っ手たちといざこざの中で気を失ったシンを連れて、ふうかはかつて父が世話した韓国の花火工場へ行く。そして韓国でドーピングの回復手術を受けさせようとするが、またまた追っ手を争いになり、シンは花火で応戦。それが火薬取締法違反になりシンは逮捕される。

 

時が経ち、ふうかは絶叫ミュージシャンとして人気が出て、シンは韓国の刑務所にいた。ふうかはシンに声を届けるべく対馬でライブをする。シンは、刑務所内でふざけ、ライフルで撃たれる。

 

で、エンディングなのですが、ではシンに手術を受けさせる物語はどこへ行った?ふうかが絶叫を出せるようになったきっかけも弱い。何か、まとまりのない出来栄えが後から後から気になる作品で、これまでも、やや不条理な展開はあったものの、何か意味があったが、今回は完全に破綻してる気がします。

 

久しぶりの三木聡監督作品でしたが、不完全燃焼的に終わってしまいました。