くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「遊星からの物体X」「テルマ」

「遊星からの物体X」(デジタルリマスター版)

何十年ぶりかで見直したが、結構面白かった。公開当時見たときはこれほどと思わなかったが、話がスピーディでコンパクトにまとめられ、冒頭からラストまで走りきる展開が爽快。しかも、クリーチャーの造形がCG以上によくできているしキモい。この特撮場面だけでも値打ちがあるというもの。監督はジョン・カーペンター

 

地球に一機の宇宙船が落ちてくるシーンから映画が始まる。そしてときは20世紀、南極。一匹の犬が雪原を走っていて、それを追いかけてくるヘリコプター。必死で逃げる犬をヘリから撃つが当たらず、やがて犬はアメリカの南極基地までくる。この冒頭がとにかくうまい。

 

この犬にはエイリアンが寄生しているのだが、そうとは知らずアメリカの隊員が保護、撃ってきたノルウェーの隊員を射殺してしまう。

 

ノルウェーの基地に連絡するも通じず、主人公マクレディらが行ってみると、基地は焼失、隊員は不気味な姿で死んでいた。こうして物語は始まる。

 

次々と寄生して同化していくエイリアンに対し、最初はなすすべもないが、次第に対処する方法、見分ける方法を模索しながらのサバイバル戦が展開。一方、周囲を信じられなくなっていく疑心暗鬼の恐怖が隊員を襲い、極度な緊張の中、とうとうエイリアンは発電機を壊し、自ら冬眠に入ることで、春にくる救援隊をターゲットにしようとする。

 

そうはさせじと基地全てを焼き尽くす決心をしたマクレディが基地を爆破して、避難、そこにもう一人の生き残りチャイルズがやってきて、恐らく二人とも間も無く凍死するのだが、雪末を見守りエンディング。

 

本当にシンプルな話だが、次々と変身するクリーチャーの造形も気持ち悪いが面白い。単純に焼き尽くして対処するわかりやすさもこの映画の魅力。オリジナル版は、こういうクリーチャーは出てこず、ひたすら疑心暗鬼の心理ドラマだった気がしますが、カーペンター版はその独特の感性が光りました。B級映画ですが、その中でも秀逸な一本と言えます。

 

テルマ

非常に面白い話なのですが、中盤からの医療検査と両親の主人公の幼い日の説明がやたらくどくて、ここでリズムが狂ってしまいました。ただ、北欧のホラー作品らしい寒々としたスタイリッシュな怖さが漂っている前半は良かった。監督はヨアキム・トリアー

 

氷が張った湖の上を歩く父と娘のカットで映画が始まる。このオープニングの構図が実に美しく、北欧映画らしい空気を感じます。

 

森へ入ると一匹の鹿が目の前に現れ、父は銃を構えて狙いを定める。しかしその銃口はゆっくりと幼い娘に向けられるが、娘は鹿から目を離さず気がつかない。そしていまにも撃つかと思われた瞬間、銃口を下げ、タイトル。

 

大学の図書館で勉強する主人公のエルマのカット。そこに窓の外から鳥が窓に突進してくる。直後、エルマは発作を起こし床に倒れる。カットが変わり、プールで泳いでいるテルマに一人の少女アンニャが声をかける。

 

寮で一人暮らしするエルマには初めての友達で、ある時、アンニャの母の招待でコンサートを聞きに行く。ところが、横に座るアンニャがエルマの体に触れてくる。気持ちが高ぶるエルマ。天井の巨大な照明器具が揺れ始める。何かが起きている。思わずテルマは席を立ち廊下へ。追いかけてきたアンニャと濃厚なキスをする。

 

エルマは幼い頃から厳格にキリスト教の教えを受けていて、今回の経験を壁に頭を打ち付けて後悔する。一方彼女の先日の発作の原因を調べるべく、検査を進める医師は、精神疾患の精密検査を受けるよう提案。部屋に横たわるエルマに光の刺激を与えながら、様々な質問を投げ脳波を調べる。

 

その中、友達の話になった時、エルマの脳裏に浮かぶアンニャの姿。その時アンニャは自分の部屋で洗濯物を持ち帰ってきたところだった。窓に何かの気配を感じ、窓に近づいた途端、突然窓ガラスが割れ、彼女の姿は消える。

 

検査の後、エルマはアンニャに電話するも通じない。また、医師の説明で、エルマには施設に入院する祖母の存在を知る。

 

エルマが尋ねると、祖母は強い薬で、ベッドから起き上がれなくなっていた。しかもその薬を与えたのはエルマの父で医師のトロンだった。

 

エルマの幼い日、弟が生まれたが、ベッドに横たわり泣きじゃくる弟をエルマが疎ましく思った途端、ベッドから消え、ソファの下に移動しているのを両親が発見。エルマの力を知る。

 

検査を終え、アンニャに連絡を取れなくなったエルマは、父に連絡、自宅に戻ってくる。そこで父は、幼い頃の悲しい思い出を語る。

 

ある時、エルマの弟をお風呂に入れていた時、母が少し離れて戻ると赤ん坊がいない。エルマはベッドで眠っていて知らない。ところが、外を見ると凍った湖に何かある。エルマが向かう後を土地が走り抜け湖に行くと、なんと赤ん坊は氷の中に埋まっていた。そのショックで、母は橋から飛び降りるが、一命を取り留め、車椅子になっている。

 

父のトロンはエルマにも強い薬を与え、祖母と同じ状態にしようと考える。その思いを知ったエルマは、私を自由にしてと懇願し、ある時ボートで湖に出た父を炎で焼き殺す。そして、母に別れを告げ家を出る。

 

学校の校庭。エルマが何かを念じると、そこにアンニャが現れ、エルマのうなじにきすをする。そして二人は校庭を歩いて行き映画は終わる。

 

北欧らしい寒々とした絵作りになっているが、中盤の説明のくだりがしつこいので、やや間延びしてしまった感じです。駄作ではないのですが、もう少し、展開のバランスを練り直して欲しかった。ハリウッドリメイクが決まって入りらしいので、ちょっとそこを期待したいです。