くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「トキワ荘の青春」「竜馬の妻とその夫と愛人」「たどんとちくわ」

トキワ荘の青春

昭和のレトロ感がとにかくノスタルジックで素敵。まるでモノクロ写真を並べたようなフィックスの画面作りもなんとも言えない郷愁を感じさせてくれる映画でした。監督は市川準

 

今更説明もいりません。名だたる漫画家を生み出してきた安アパート、トキワ荘を舞台に繰り広げられる人間ドラマ。手塚治虫がこのアパートを出ていくシーンから映画が始まり。物語の主人公は寺田という漫画家。

 

このアパートに、赤塚不二夫石森章太郎藤子不二雄などが次々と入所してくる。誰もが貧乏でその日暮らし。そんな中、必死で漫画を描き、売れるかと思えば、てんでダメで、突然、出版社が倒産したり、食費がなくなり寺田のところに日銭を借りにきたり、家族が心配できてみたりという日々が描かれる。

 

そして突然売れっ子になり、寝る間もなく作品を描き続ける一方で、時代についていけず残されていく寺田。やがて、ある時アパートを寺田が出て行って映画が終わります。

 

日本の漫画史にその名を刻むトキワ荘を、実話とフィクションを交えたストーリーがとにかく素敵で、大きなカメラワークを排除し、素朴そのものの画面作りが胸に迫る熱いものを感じさせてくれます。本当に、心の片隅に残る一本、そんな作品でした。

 

竜馬の妻とその夫と愛人

なんともダラダラした脚本、ストーリー展開が繰り返しばかりで、しかもセリフにもテンポがない。三谷幸喜なのだが、彼の才能は私は買ってないのである意味納得。カメラが動き回ると市川準監督の個性が打ち消されてしまった感じだった。監督は市川準

 

坂本龍馬が死んで13年目、十三回忌をするべく相談している重鎮のシーンから映画が始まる。かつての妻おりょうを参列させるべくおりょうの妹婿の覚兵衛がおりょうを探しに向かう。

 

ところがやっと見つけたおりょうは呑んだくれていて、テキ屋の夫松兵衛と暮らしていた。しかも、竜馬に似ているという虎蔵とおりょうは懇ろになっていて、とても竜馬の妻と思えない体たらく。

 

そんなこんなでコミカルに物語は展開するが、どのネタも滑っている上に、演技にテンポがなく、だらだらと物語も進む。

 

結局、見た目は落ちぶれて見えるが、竜馬の妻としての心意気は無くなっていないおりょうに安心する覚兵衛。松兵衛と飯を食って、竜馬が殺された日に松兵衛がしびれ薬を飲ませたなどという話でオチを作るのだが、これもまた滑ってエンディング。

 

役者それぞれの演技もさることながら、一本筋の通った部分がどこにもないためにだらけた感じである。本来市川準はこれほどカメラを振り回さないのに、やたら動くカメラワークで、散漫な画面になってしまった。凡作でした。

 

「たどんとちくわ」

破綻した感性で描かれたブラックコメディという感じの一本で、原作があるのでなんとも言えないが、さすがにこれは個人的には好みにならない映画だった。監督は市川準

 

夜の道をタクシーが走っている。極端な斜めの構図で運転手木田がたどんやだという客の安西に詰め寄っている。そしてカットが変わると、木田がタクシーを流している。このオープニングから、どこか変である。

 

客に愛想を言っているようで、罵倒しているような態度の木田のシーンが続く。そして、安西を乗せる展開へ。最初は普通だが、いつのまにか勝手に走っている。そして河原に連れて行き、突然ピストルを出して安西を脅す木田。たどんを泥で作らせ、逃げる安西を撃って場面が変わる。

 

この作品は二部構成で後半はちくわの話になる。浅見という売れない作家の話。夜、おでん屋に寄ってちくわを頼むが、ないというので、自分の一物を鍋に入れてふざける。

 

知り合いの小料理屋に立ち寄り、酒を飲み始めるが、言動がどうも怪しい。周りの客への敵意を丸出しにした心の声、幻想とも現実ともつかない言動の映像が展開。

 

自分の一物がなくなったと大暴れし、店中の人間を殺して回る幻覚画面が展開。血だらけになった浅見が走り出す。

 

木田のタクシーが漫才の女が待つホテルに着き、浅見もそこに行き、安西の運転で安西の女と浅見がタクシーで走り出す。後ろの席で、浅見が自分の一物が戻ったと歓喜して映画は終わっていく。

 

まさに破綻した映画だ。変わった作品だとは思うが、同にも映画としてのめりこめない作品だった。