「マチルダ 禁断の恋」
どこまでが史実なのかと思うほどにサスペンスフルだし、マッドサイエンティストみたいなのまで出てきてホラーのような空気感、さらにストーカーみたいなのまで出てくるのはどうなんだ。ただ、豪華絢爛、スピーディな展開で面白かった。監督はアレクセイ・ウチーチェリ。
ニコライ2世の戴冠式と結婚式、袖からバレリーナのマチルダが忍び込み、追いかける家来を振り切って、桟敷席からニキと叫ぶ。それを聞いて一瞬倒れるニコライ2世。
舞台はバレーの会場へ。ライバルに背中の紐を解かれ、踊ってる最中に胸があらわになるマチルダ。ひと目で惚れてしまったニコライは、猛烈にアタックする。
ところが、列車の事故で怪我をした父は間も無く死亡し、ニコライは次の王座を継ぐことになる。あらかじめ決められていたアリックス、そしてマチルダの三角関係になり、王位を継ぐ責任と自身の恋に揺れるニコライの姿が物語の後半になるが、この辺りから展開が雑になり、まるでカットされているかのように場面が飛び始める。
結局、冒頭の戴冠式の場面がクライマックスとなり、無事戴冠式は終わる。マチルダはニコライの従兄弟と結婚した旨のテロップ、さらにニコライらは1918年銃殺されたというテロップで映画が終わる。
大河ドラマの様相なのに薄っぺらいサスペンスを積み重ね、確かに画面が豪華だし美しいが、軽いタッチの作品になっていた。見やすいといえば見やすいが、もうちょっと重厚感があってもいいような気がしました。
「いつだってやめられる 闘う名誉教授たち」
ヒットシリーズの最終章。最後を飾ってまとめたサスペンスの面白さはなかなかの仕上がりでした。監督はシドニー・シビリア。
合法ドラッグを作って刑務所に入ったズィンニたちは、皆バラバラの刑務所に分散されていた。ある男が神経ガスを使った大規模テロを企てていることを知ったが、誰も信じてくれず、仕方なくズィンニたちは自分たちでそれを阻止しようと計画。
散らばっているメンバーを一箇所にまとめ、まず脱獄を計画。鮮やかに決めた後、自分たちの大学がテロの場所と突き止め大学へ。そこで、見事テロを阻止し、再び刑務所に戻ることになり映画が終わる。
派手さはないものの、それなりの痛快さは楽しめる一本で、三作品の中では一番わかりやすく仕上がっていた気がします。
「暁に祈れ」
実話を基にした原作を本物の監獄の中で撮影したことを売りにした人間ドラマ。確かに着想は面白いが、ほとんどがクローズアップで寄ったカメラ映像で、やや重苦しかった。監督はジャン=ステファーヌ・ソベール。
タイ、ボクサーだが、麻薬中毒で自堕落な生活をするビリーはある時警察に逮捕される。そして投獄されたところは暴力やレイプなどが日常茶飯事の荒れた刑務所だった。地獄のようなという表現の解説だが、そのあたりの描写が弱く、カメラが悪いのか、いまどきもっとえげつない場面がある中では、普通の監獄に見えた。
ビリーは監獄内にムエタイのジムがあることを知り、そこに入り、しだいに自分の中で何かが変化して行くのを知る。
やがて、外部の刑務所を交えた試合が迫るが、ビリーの体は麻薬と酒、ボクシングでボロボロになっていて、吐血してしまう。医師の厳しい診断もある中、最後をかけて試合に出て、なんとか勝利するがそのまま倒れ救急車で搬送される。
病院で目覚め、たまたまトイレに行ったが、誰も彼を監視していないことを知り、思わず病院を出て、そのまま逃げようとするが、思い直して病院に戻ってくる。彼に何かが変わったのである。
そして、刑務所に戻った彼に面会者がやってくる。それは彼のことに見向きもしなかった父だった。こうして映画が終わる。
一人の男の更正の物語ですが、とにかく全体が暗くてしんどい作品でした。