くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「葡萄畑に帰ろう」「サンタクロース殺人事件」「モンパルナスの夜」

「葡萄畑に帰ろう」

ファンタジーコメディという感じの作品で、寓話のような場面がいたるところに散りばめられているのですが、どこかテンポが悪く、正直面白くない仕上がりになっています。監督はエルダン・シェンゲラヤ。

 

空から一つの箱が落ちてくる。カットが変わるとこの箱を運搬してきた車から箱を下ろした先は「避難民を追い出す党」というところ。ここに大臣として就任したギオルギがこの椅子を注文したのだ。

 

この椅子、座りと宙に浮いたように浮かび上がるし、時々喋る。しかも勝手に動き回ったりもする。ある時、避難民を追い出す仕事をしていたギオルギは、ライバルの党の男を追い出してしまい大失敗、みるみる支持が落ちて、大臣を追い出される。

 

物語はここからが本編となり、大臣の職を追われ、やがて家も追い出されるようになる。娘は黒人の男と勝手に結婚、亡き妻の姉は何かにつけうるさく、そんな中新しい恋人ができてギオルギは結婚する。

 

やがて、娘も妊娠し、夫婦そろって帰ってくる。家を追い出されたので、実家のぶどう園をやっている母の元に住むことになるギオルギたち。そして5年経つ。ついてきていたギオルギの喋る椅子をギオルギが崖から突き落とし、バラバラになった椅子が自分で元どおりになり空に舞い上がりエンディング。

 

「いつもこういうことですよ」というセリフがかぶるが、つまりそういうことを言いたい風刺劇だった。とは思うが、全体のリズムが悪く緩急が見えないので、退屈なのだろう。まぁ変わった映画でしたね。

 

「サンタクロース殺人事件」

フィルムノワール特集なのですが、そんな空気のない不思議な一本。面白いというより珍品のような映画でした。監督はクリスチャン・ジャックとロジェ・シャバット。

 

山深い村で一学期の最後の日の小学校から映画が始まる。教会では、高価な指輪を飾り物につけるので誰もが心配をしている。地球儀を作るみせでは、夢のような恋に憧れるカトリーヌという娘がいる。何年ぶりかで、村の城に男爵が帰ってくる。村長がいて、巡査がいる。

 

一通りの紹介の後クリスマス。サンタクロースが教会に人々が集まった時に、各家を回ろうとするが、怪しい男が後をつけていて、気がつくと教会の指輪がなくなっている。しかも、子供達が雪原でサンタクロースが死んでいるのを発見。村中が大騒ぎになる。

 

憲兵を呼ぶが、雪が深くなかなか来ない。村人たちは疑心暗鬼に周りの人を疑うが、殺されたサンタは村人ではない。しかも、突然地球儀屋の看板の中に指輪が発見され、人を呼んで戻ってみると、看板が子供に持ち去られ、逃げる時に壊れるが、指輪がなくなっている。どうしようもなくなった頃ようやく憲兵がやってきて、実は真犯人を待ち伏せしていたといい、真犯人は薬屋だったという。

 

生まれてから、ベッドを出たことのない子供のところにサンタが来て、プレゼントの地球儀をあげてハッピーエンド。一瞬唖然とするラストだった。ただドタバタ劇を見るサスペンス?珍品でした。

 

「モンパルナスの夜」

なんともくどい映画だったし、遊んでいるとしか言えない展開が、若干呆れる。ただ見せるところは見せる影の演出の面白さは流石に一見の価値あり。監督はジュリアン・ディヴィヴエ。

 

あるバーで一人の男ウィルが酒を飲んでいる。しかし身なりはしっかりしているもののその日の酒代も払えないようだ。冗談半分に伯母が死んだら大金が入るのだがなどと言っている。ふと足元に紙切れが落ち、それを拾う商売女。そこには、「望むように女を殺すから、以下の私書箱に鍵と部屋の見取り図を送れ」と書いていた。それをさりげなくウィルに返す。

 

カットが変わると、ウィルの伯母の家に一人の男が忍び込んでくる。そしてベッドの上の女に手をかけようとするが、なんと既に死んでいて、思わず血のついた手で壁を触ってしまう。はいってくるときのゴム靴の跡もしっかり床に残っている。ふと奥の部屋のドアがあき、一人の男が入ってくる。その男は、証拠は消しておいてやるからと先に相棒を逃す。もちろん消す気は無い。

 

当然ながら、殺人犯として一人の男が捕まるが、メグレ警視は、共犯がいると判断し、その男をわざと逃し泳がせる。そして真犯人をおびき寄せるが、その男は余命半年で、完全犯罪をしてやろうと挑戦してきた男で、彼に殺人を依頼したのは、遺産目当てのウィルだった。

 

という真相は前半で大体わかってしまったが、ここから後、メグレ警視らと真犯人のやりとりがやたらしつこく、クライマックス、バーで真犯人はウィルらを脅し、ウィルの妻を部屋に引っ張りこんでしまう。そしてウィルはメグレらの前で自殺。真犯人は逃げるが車に引かれ死んでしまう。

 

とまぁ、くどいのだが、階段の映る影のショットの多用などフィルムノワールらしい画面がいたるところに登場、見ていて楽しめるのはさすがにディヴィヴエ監督ならではの手腕と言えます。

 

他の名作に比べ、どちらかというとジュリアン・ディヴィヴエの珍品という一本でした。