くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「デトロイト」「日本殉情伝 おかしなふたり ものくるおしき

kurawan2018-01-31

デトロイト
1967年にデトロイトで起こった暴動事件の時にアルジェ・モーテルで起こった警官の暴行殺人事件を描いた作品ですが、手持ちカメラと寄りを中心にした構図にドキュメントタッチで描く迫真の画面は胸に迫ってくる緊張感が途切れず、2時間以上あるのに見入ってしまいました。ただ、事実とはいえ、後味の悪い作品であることは確かです。監督はキャスリン・ビグローです。

デトロイトの夜、あるカフェではパーティが行われていたが、そこに警官が踏み込む。裏口から客だけを出して尋問するはずが、裏口が開かず表から出したために付近の黒人たちが集まって来てトラブルになり、そのまま暴動事件へと発展していく。

収取のつかない州は軍隊も導入し鎮圧にかかる。

ここに血気盛んな一人の若い警官と相棒がいて、たまたま見つけた略奪犯を追っていくうち銃を撃ってしまい殺してしまう。

一方、レコードデビューを目指す新進の黒人グループ、ザ・ドラマティックスが今にも初ステージを行おうとしていたが、暴動の知らせにコンサートは中止になる。そしてメンバーは散り散りにデトロイトの街を逃げ、一軒のアルジェ・モーテルに泊まる。

そこで知り合った黒人たちといいようにしていたが、一人がおもちゃの銃で州兵たちを撃ったことから、兵隊や警官がモーテルに押し寄せてくる。

そして、踏み込んで来た警官が、冒頭で黒人を撃った差別主義的な意識の強い若い警官と相棒だった。彼らは、モーテルの黒人たちを壁に立たせ、強硬的な暴力、さらには不当な殺陣をはじめ、徐々にエスカレートしていく。

物語は、暴行を行う警官たちとモーテルの前で警備員をしていた正義感溢れる黒人の男、ザ・ドラマティックスのメンバーでたまたまモーテルに泊まった人物などを中心に描いていく。警官の暴行に対する州兵や州警察の態度などもさりげなく挿入し、告発的なメッセージも垣間見られる。

人物に寄ったカメラが半端ない緊張感を生み、手持ちカメラによるドキュメンタリータッチが、リアリティを増していく映像作りはさすがである。ただ、事件が終わり、裁判が行われ、暴行した警官たちは無罪になるラストは事実とはいえ後味が悪い。しかも作品自体が、当事者たちによる証言をもとにした物語で、真相が調査されなかったというテロップもまたスッキリしないが、映画としての完成度は一級品だったと思います。


「日本殉情伝 おかしなふたり ものくるおしきひとびとの群」
一人の男の空想の物語として映画が始まるので、ファンタジックでやりたい放題の大林宣彦監督の世界が展開する。そこに詰め込まれたのは二人の青年と一人の女性の青春の物語。描かんとするエッセンスは理解できるが、自主映画のメジャー版という感じの構成が流石に長さを感じさせられた。

一人の男山倉が、列車に乗り永遠の理想の女性を探し求める妄想の世界を作り出すところから映画が始まる。

ピアノを運んでいるところへ一人の青年成田が刑期を終えて帰ってくる。彼は若き日同じ組の若者室田と一人の女性夕子を愛していた。しかし、刑務所にいる間に室田は夕子と結婚、娘もいた。

傾きかけている組の姿、かつて愛した女性との思い出、三人の青春の日々を、まるで夢の世界のように次々と目まぐるしく変わる映像で山倉が作り出していく。

細切れのシーンの連続に見える外連味溢れる演出はまさに大林宣彦ワールド。しかし、細切れのつなぎ合わせはさすがにそれほど長尺の作品ではなくても、やや単調に慣れてしまい、長さを感じてしまいました。

もう少し、物語を整理してもよかった気がします。大林宣彦監督の悪い面が表立った感じの一本でした。