くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「THE PROMISE 君への誓い」「ぼくの名前はズッキーニ」「ベ

kurawan2018-02-13

「THE PROMISE 君への誓い」
これはなかなか見ごたえのある秀作でした。史実を元に作られた作品ですが、非常に脚本がしっかりしていて、エピソードの構成と組み立て、展開が見事。しかも、映像的にも時にセットを交えた美しい画面作りにもこだわり、映画としてもクオリティの高い出来栄えになっています。監督はテリー・ジョージ

シリルという村に住むアルメリア人のミカエルが地元の女性マラルと婚約し、その持参金でイスタンブールの医学校へ行くところから映画が始まる。そして下宿先の叔父の家で一人の女性アナに出会う。しかし彼女にはクリスというアメリカ人ジャーナリストの恋人がいた。時は第一次大戦間近、やがて、戦争に参加したオスマン帝国は極端なアルメリア人弾圧を始める。

物語はミカエルとクリス、アナの三角関係を軸に、アルメリア人弾圧から必死で逃亡するミカエルと妻マラル、そして家族の話。トルコ人アルメリア人弾圧を世界に訴えかけようと奔走するクリス、そしてアナとミカエルの恋の物語を軸に絡まって行くのだが、戦闘シーンや逃亡シーンなど見せ場を連続的に配置し、その先々で主要キャストが絡み合っては別れるを繰り返すストーリー作りが上手い。

また、夕焼けのシーンや夜の海などセットと思われる撮影を屋外シーンの合間に挿入した画面作りも美しく、2時間以上あるにもかかわらず、退屈しない。

クライマックス、追い詰められたミカエルたちアルメリア人にトルコ軍が襲いかかり、一方アルメリア人を助けるために奔走したクリスの尽力でフランスの戦艦が救助にやってくる。

そして、その救助の中、アナは死んでしまい、ミカエルは、やがて姪っ子の結婚式の場に立つ。クリスは第二次大戦前に死んだというテロップが出て映画が終わる。

非常に見ごたえのある作品で、史実に詳しくなくても十分に入り込むことができました。


ぼくの名前はズッキーニ
スイス製のストップモーションアニメの秀作、なかなか美しいし、ストーリーもシンプルながら奥が深い。監督はクロード・バラスという人です。

主人公の少年、ズッキーニが父親の姿を絵に書いたタコを飛ばすシーンから映画が始まる。部屋の中に散乱する空きカンはアル中の母親のものだが、ズッキーニにとっては大切な品物。ふとしたことでその缶を階下に落としてしまい、それに怒った母親が上がってきたのを誤ってズッキーニは入り口を閉めて突き落としてしまう。その結果母親は死んでしまい、ズッキーニは施設に預けられることになる。

そこで、個性的な子供たちと仲良くなり、新たにきたカミーユという少女と恋に落ち、ズッキーニを連れてきた警部に引き取られるまでを描いて行く。

ストップアニメとはいえ、しっかりとして映画の構図を取り、アニメ独特に美しい色彩配分した画面がとっても楽しい。しかし描かれる物語はそれぞれの子供達の悲しい境遇であり、決してほのぼのしたものでもないのがまたすごい。

一方で根幹に流れる話は子供たちの友情の物語であり、そのヒューマニックなあったかい展開がこの映画のみどころかもしれません。

空きカンや船の折り紙、ミュージックプレイヤー、タコなど小道具を効果的に使い、またさりげない動物のショットでほのぼのさせる画面も素敵。良質のアニメという感じの一本で楽しめました。


ベロニカとの記憶
青春時代の切ない物語をミステリー仕立てで描いた作品なのですが、どうも物語がレールに乗ってこなくて、うだうだと展開を繰り返すために、やや焦点がぼやけてしまった。ただ、ミステリー部分の整理はきっちりできているし、ストーリーは混乱することはないし、冒頭の映像から映画としても仕上がっていると思います。監督はリテーシュ・バトラ

主人公トニーの学生時代の映像から映画が始まるが、間も無く老年を迎えた彼の姿に場面が移る。ある日、見知らぬ弁護士から、学生時代の恋人ベロニカの母セーラの遺品の一部がトニーに残されたという連絡を受ける。しかし、その遺品は娘ベロニカが管理していて引き渡してくれず、どうやら学生時代の友人エイドリアンの日記であるとわかる。

こうしてトニーの学生時代の記憶に物語が進んで行く。

ケンブリッジ大学の学生時代、トニーは一人の女性ベロニカと恋に落ちる。当時、トニーにはエイドリアンらの友人がいた。 ベロニカの家に招かれたトニーはその母親でセクシーなセーラと出会う。

現代のトニーは、なんとか遺品の日記を知ろうと現代のベロニカに会い、話を進めるが、日記はすでに焼いてしまったという。

かつて、ベロニカはトニーと別れエイドリアンと付き合い始めたという知らせをトニーが受ける。その手紙にトニーは皮肉交じりのひどい返信をしていた。その直後、エイドリアンは自殺をする。果たしてその手紙の何が原因だったかというのが後半。

現代のトニーがある時、ベロニカが親しく話す青年エイドリアンを見つける。てっきり、エイドリアンとベロニカの息子だと思って接触していたが、実は彼はベロニカの弟で、母親はセーラだったことを知る。つまり若き日のエイドリアンが妊娠させたのはセーラだったという真相なのである。

一方この物語には現代のトニーが元妻との間にいる娘の出産という出来事も控えている。原作はそれなりに筋が通ってメッセージが伝わるのだろうが、映画になってやや散漫になり、最後あたりでは年老いたトニーの醜態ばかりが目立つようになった気がします。悪い映画ではありませんが、ちょっと惜しい感じです。