「はじめてのおもてなし」
ドイツの混沌とした難民問題がそのまま映画になったという感じの今、ひとつわかり切らない映画。どこか嫌な描写も散見され、外国人の私たちには理解し難いところもあるのが事実という映画だった。監督はサイモン・バーホーベン。
大病院の院長をする夫と教師を引退した妻、31歳の大学生の娘、仕事一筋の弁護士の息子など、いかにも上流階級の家族。妻のアンゲリカが難民を受け入れると勝手に決め、ディアロという黒人青年がやってくるところから物語が始まる。
あとは、彼がくることで巻き起こる騒動の数々が描かれるが、娘をストーカーするタクシー運転手の男が、反イスラム派で、異常だったり、夫リヒャルトがやたら強健な父親で、誰も彼もが、ステロタイプ化されているとはいえ、どうも入り込めない。
結局、ディアロは亡命申請が一旦拒否されるが、家族の熱意で申請が通ってハッピーエンド。このくだりも唐突に締めくくる。
確かに難民問題は現地の人にとっては問題なのだろうが、この作品はその問題を上から目線度捉えすぎている感じがどうも受け入れられなかった。
「早春」
イエジー・スコリモフスキ監督が1970年に撮ったいわばカルトムービーのような作品で、1人の青年の盲目的な片思いがどんどんエスカレートして行く様を描いた映画。ストレートなラブストーリーに捉えづらい、奇妙な作品でした。
主人公マイケルが公衆浴場に就職するところから映画が始まる。そこにはスーザンという魅力的な女性がいて、彼は一目で彼女に思いを抱いてしまう。しかし彼女には婚約者がいて、しかも、キュートなので男たちにモテる。
そんな彼女への思いがどんどんエスカレートして行くマイケルは、とうとうラスト、プールで彼女を引き留めようとするあまり、殺してしまって映画が終わる。
途中のセリフやシーンの数々はかなり即興的に見えるところもあるが、マイケルか異常なほどに彼女に迫って行く感情の変化は確かに圧倒される。
ラストシーンの、プールで全裸の2人が抱き合い、その後、引き留めようと照明を彼女にぶつけ、彼女が頭を抑え血を流す。真っ赤なペンキがプールに流れ、彼女が着ていた黄色のレインコートが浮かぶ。
色の使い方もふくめ、イエジー・スコリモフスキ監督の感性が光る一本ですが、仕上がりの空気感はカルト映画の感じでした。
「52Hzのラヴソング」
バレンタインデーの1日にさまざまな恋の物語が交錯する台湾製ミュージカルですが、ちょっとそれぞれのエピソードがバランスが悪く、全体に乗り切らないところが惜しい仕上がりになっています。監督はウェイ・ダージョン。
花屋を営むシャオシンの忙しい1日の始まりから映画が幕を開ける。一方でパン屋でチョコレートの配達をすることになるシャオヤンの姿が描かれ、花屋に訪れるレズの恋人たちの結婚式や、老年2人の恋など絡まって行く。
終盤の売れないミュージシャンと彼を10年支えた恋人のエピソードがややくどいために、全部がバランスが悪くなった。もうちょっと作りようによっては面白くなるのだろうが、今一歩勿体無い。そんな映画でした。