「ダウンサイズ」
軽いSFコメディかと思ったら、意外に地味な哲学的内容を含んだ映画だった。中身がどう解釈するのかと思うほど一昔前の真面目な映画という印象。ただ、やや鼻につくような風刺も気になる作品でした。監督はアレクサンダー・ペインです。
ノルウェーで生物の縮小実験が成功する場面から映画が始まり、世界中に流れたニュースを主人公ポールが見つめている場面に移る。そして五年が経ち、人類の縮小が可能になり、しかも、縮小された人々が住むコミュニティも世界中に出来上がっていた。
身近な友達もダウンサイズしたことを知りポールは妻と決断し、縮小されることを決意、手続きに進むが、なんと縮小した後、妻は直前で断念したことがわかり、ポールは一人でコミュニティに住むことになる。
コミュニティで隣人ドゥシャンと知り合い、やがて、運動家で有名だったベトナム人のノク・ランとも知り合う。ノク・ランは理想郷のようなコミュニティの壁の少し外で暮らす貧民たちの世話をしていた。
ノク・ランの義足の修理に失敗したことでポールはノク・ランと行動を共にし始め、たまたまノルウェーに商品を持参する仕事を計画したドゥシャンとノルウェーに向かう。そこにはダウンサイズ研究の発明者アスビョルンセン博士がいて、彼と彼に賛同したひとびとは、やがてくる人類の滅亡に備え、建設した巨大シェルターに移る計画をしていた。
結局、一時はシェルターに行き、ノク・ランやドゥシャンと別れを決意したが再度戻ってきて、ポールはノク・ランと貧民窟の世話をするようになるシーンでエンディング。
南極で発生したメタンガスでいずれ人類の滅亡が危惧されたというニュースも台詞の中に聞こえ、冒頭の経済的な窮乏の問題など社会テーマがあちこちに挿入された展開がやや重い。
しかも、ダウンサイズされた人々への偏見や、普通の人々の辛辣な意見なども組み入れられ、単純なSFドラマにしていないところはややハードである。ラストのノアの方舟のような展開もやや哲学的で、軽い気持ちで見ていると、どんどんしんどくなってくる。長らくお目にかからなかった真面目なSF映画という感じの一本でした。
「ザ・シークレットマン」
それほど期待もしていなかったが、なかなかサスペンスフルな展開が面白かった。史実というリアリティも効いているし、リーアム・ニーソンの存在感が画面を引き締めた気がします。監督はピーター・ランデスマン。
FBI長官のフーパーが死ぬところから映画が始まる。死の知らせと同時に彼が保管していた数々の機密書類の破棄を命じたのがFBIに30年勤務し、正義のために戦ってきた副長官マーク・フェルトだった。
時はベトナム戦争真っ最中、人気抜群だったニクソン大統領が次期大統領選を迎えようとしていた。そんな時ウォーターゲート事件が起きる。一方FBI長官代理としてグレイが赴任してくるが何かにつけてFBIはホワイトハウスの干渉を受け始める。
何かの裏を感じ取ったマークは捜査員を独自に動かし真相を突き止めようとするが、グレイが捜査に力にならないと考え、マーク独自にマスコミへのリークや盗聴の指示などを行う。
ニクソン大統領は一旦は再選されるが、マークのリークにより、ついに真相が明るみとなりニクソンは辞任に追い込まれる。
サスペンスフルな演出を主眼に、マークの娘のエピソードなども挿入して深みを持たせようとしたが、ここは今ひとつ効果が出なかった。とはいえ、サスペンス映画としては十分に楽しめる映画でした。