くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「恐怖省」「飾り窓の女」「M」「上海ジェスチャー」

kurawan2018-04-11

恐怖省
面白い。しかも光を有効に使った見事な演出に舌を巻く。映画を作る人はもっと勉強すべきだと思う。どんどん巻き込まれて転がるように展開するストーリーに引き込まれて行く名作でした。監督はフリッツ・ラング

主人公ニールが時計をじっと見つめている。目的の時間が過ぎ、やっと退院。彼は精神病院にいたのである。のちに分かるが、彼は妻を安楽死させたかどで捕まっていたのだ。

退院した帰りロンドンへ向かうまでに慈善パーティをしている会場が有り、主催の母の会の会場へ。そこでケーキの重さを当てるゲームをするが、そのあと占いの館で正確な答えを知り、見事ケーキを手に入れ列車へ。そこへ盲目の男が乗り込んできて、空襲で列車が止まった時、殴られてケーキを奪われる。ところかその男は爆撃で死んでしまう。

ニールは真相を調べるため探偵事務所へ。そこから母の会の事務所に行き、ヒルヘと妹のカーラと出会う。ところが、パーティで出会った夫人の元へ行くと、別人がいて降霊会をしていて、参加して見たら盲目の男がコストという名で参加していて、電気が消えた途端、銃声。コストが死に、ニールに疑いがかかりニールは逃げる。こうしてどんどん巻き込まれて展開する。

実は母の会はナチスの潜入スパイに利用されているらしく、ニールはその旨を警察に話し身の潔白を証明しようとする。最初に手にしたケーキの中には極秘フィルムが隠されていて、パーティの場で別の男に渡すはずが、占いの女がニールをその男と勘違いしたらしいことがわかる。

しかも母の会のカーラの兄ヒルへもスパイに関わっているという真相が明らかになり、最後はハッピーエンドの結末。カーラとニールのハネムーンのシーンでエンディング。

よくできたスパイ映画の傑作と呼べる作品で、ストーリー展開、影を多用した画面づくりの面白さを楽しめるフィルムノワールの代表作にふさわしいものでした。


「飾り窓の女」
はるか昔、テレビの洋画劇場で半分だけ見てその面白さにのめり込んだ記憶があって長年の夢の一本でした。監督はフリッツ・ラング、フィルムノワールの傑作の一本です。

主人公リチャードは犯罪心理学の准教授で講義のシーンから映画が始まる。堅物で真面目な彼は妻と息子を送り出し、友人とひと時の歓談をサロンでするが、そのあとは付き合わず、一人本を読んでサロンを後にする。

サロンの隣のショーウィンドウに女性の絵が飾られていて、いつも見入っていた。その日も見ていると、ガラスにその女性が映る。

なぜか、話が弾んだ二人は、そのまま女の家に行き、さらに盛り上がるが、突然一人の男フランクがやってきてリチャードともみ合いになり、リチャードは手にしたハサミで誤って殺してしまう。

リチャードは犯罪を隠す計画を立て、死体を車に乗せ森の奥に捨てるが、よく日、知人の地方検事から、様々な証拠が出てきて、犯人に近づいていると雑談の中で聞く。また知人の医師からきつめの鎮静剤などももらう。

そんな時、ハワードの用心棒で小悪人の男が女をゆすりにやってくる。リチャードは医師にもらった薬で殺すことを考えるが、その手に引っかからず男は金をもらい去って行く。

計画の失敗を知ったリチャードは薬で自殺を図るが、折しも男は警察に追われ射殺されてしまう。意外な展開に女はリチャードに連絡するが時すでに遅し、と思いきや、実はリチャードがサロンで居眠りして見た夢だった。

夢落ちというありきたりの展開のようだが、実に巧妙に書かれている伏線と見せ方が上手い。夢落ちとわかっても唸ってしまう出来栄えの一本でした。


「M」(フリッツ・ラング監督版)
題名だけはあまりに有名な作品ですが、今まで見る機会などなかった一本。ついに見ました。サスペンスというより、社会ドラマのような様相の映画で、前半がサスペンス、終盤が完全に社会ドラマで終わります。

少女の誘拐殺人事件が連続している。子供達の遊びにもその事件が広がるほど日常茶飯事になり、そんなある時、口笛を吹いて一人の男が連れている少女に風船を買ってやる。間も無くその少女は殺される。

警察はやっきになって犯人を探すが見つからず、あちこちに裏社会の商売を手入ればかりするので、商売にならない裏社会の人たちは自分たちで犯人をつかまえることにする。そして網を貼るところに、ある時、盲目の風船売りが、口笛を吹く男を見つけ、裏社会の市民に知らせる。

男を尾行した一人が背中にチョークでMの文字とつけて目印にする。犯人は、終業後の会社に逃げるが、とうとう見つかり捕まってしまう。裏社会の人々は警察に渡さないように連れ去るのだが、仲間を一人会社内に忘れてしまった。

一方、犯人の目押しもついた警察が、ある会社の警報で駆けつけると、そこで不穏なことが起こっていて、調べてみると裏社会の人たちが犯人を拉致していったらしい。取り残された市民の一人を捕まえて、取り調べをする一方で、犯人は裏社会の市民たちの裁判を受けていた。

真犯人はこのままでは嬲り殺されると思い、泣き言を言うが許してもらえず、市民たちの中で選ばれた弁護人が、彼に責任能力がなかったから、死刑にせず警察に引き渡すべくだと立ち上がったところへ警察が踏み込んでエンディング。

想像していた以上に、シリアスな社会ドラマのイメージのラストが独特。真犯人が特定されるまでがスピーディで、サスペンスフルだがその後がやや間延びするのは残念だがしっかりとした画面作りが見事な映画でした。


「上海ジェスチャー
呆れるほどな支離滅裂なストーリー展開と、いったい誰が主役でどういうお話を描きたいのかわからない映画でした。監督がジョセフ・フォン・スタンバーグというのが最大の驚き。

混沌とした上海の町から映画が始まります。二人の男(うち一人はビクター・マチュア)が騒ぎに巻き込まれている女を助ける。物語は当然この三人を追いかけるのだが、シーンが変わると巨大なカジノ。このセットがものすごくて圧倒される。

そして冒頭の二人は実はここの使用人らしく、カジノのオーナーという女が仰々しく登場。場面が変わると、西洋人らしい一人の男がカジノのある土地を買収する工作をしていて、巨大資本の持ち主のようである。

と、ここまでは雑ながらわかるのですが、カジノで遊んでいる二人の女がいかにも意味ありげで、実は一人は資本家の娘らしく、オーナーが主だった人物を晩餐会に招待して、復讐する話らしいと展開が変わってくる。

つまり復讐劇なので、結局オーナーが自分の娘を撃ち殺して物語は終わるが、では資本家の男はオーナーと関係があったらしくという終盤の種明かしもとってつけたようで、もうなんとも言えない仕上がりだった。カジノのセットだけがやたら印象に残る映画でした。