くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「殺人者」「幻の女」「M」

kurawan2018-04-13

「殺人者」(1944年)
面白い。フィルムノワール作品で典型的な二転三転するストーリー展開と、ファムファタールな美女、どん底に落ちていく男の物語が描かれていく面白さを堪能できます。監督はロバート・シオドマク。エバ・ガードナーが抜群に美しい。

あるカフェに二人の男がやってくる。彼らはスウィードという男を殺しに来たのだと言う。そして、こなかったのでスウィードの家に向かい彼を撃ち殺す。

この事件の調査するために保険の調査員レアドンがやってきて、スウィードを知る人物にあたりながら彼の過去、そして、以前起こった帽子工場の現金強奪事件の真相に迫っていく。

スウィードはボクサーだったが、手を痛めて引退、絶世の美女キティの情夫コリファックスに誘われて、強奪事件に関わる。しかし、コリファックスと残る二人の仲間はスウィードを裏切って金を分けようとしたため、スウィードが彼らのところに乗り込み金を奪う。この計画をスウィードに知らせたのがキティだった。

しかし、間も無くキティは金を持って姿をくらます。そこへ殺し屋二人がやって来てスウィードは殺されてしまう。ところが、真相を追いかけていたレアドンとサム警部は実は当初からキティとコリファックスが金を独り占めする計画だったことを知る。

そして、コリファックスらのもとに駆けつけたサムとレアドンは撃ち合いの末、コリファックスらを殺してしまう。コリファックスは全てを打ち明けて死ぬが、キティは自分は無実だと言ってくれと懇願する。ここまでファムファアール。これぞフィルムノワール。面白い。

影を有効に使った絵作りはいつものことながら、俯瞰で捉えたカメラアングルの面白さも光る秀作でした。


「幻の女」
原作はミステリーの傑作中の傑作らしいが読んでいない。フィルムノワール作品としては非常に洗練されたストーリー展開と美しい画面の構図に引き込まれる秀作。やや犯人像が奇妙だがなかなか見せてくれる映画でした。監督はロバート・シオドマク

バーカンターにスコットと一人の女が座っている場面から映画が始まる。スコットは妻と食事のはずが最近すれ違いで、この日もショーのチケットを持て余していた。たまたま隣に座った女とショーを見に行き、帰ってみると妻が殺され刑事が来ていた。

スコットの証言通り、隣にいた女を探すも誰もそんな女は見ていないと誰もがいい、あれよあれよという間にスコットは有罪になり死刑が確定する。スコットに想いを寄せる会社の同僚キャロルは、彼の無実を信じ、見ていないと答えたバーのバーテンやショーのドラマー、ダンサーに近づくがなかなか証言が取れない。

ところが、まんまと色仕掛けでドラマーに白状させたが、キャロルが刑事に連絡するため外に出た合間に、真犯人がやってきて彼を殺害する。

翌朝、スコットの同僚のジャックが帰ってくるが、なんと彼こそが真犯人だった。そうとは知らずキャロルは彼とともに、新たな証言者を探し回る。こうしてキャロルもなきものにしようとするジャックとのサスペンスがクライマックスとなっていく。

スコットと一緒にいた女性を見つけ、証拠の帽子も手に入れたキャロルはジャックの家で刑事を待つことになるが、たまたまジャックの寝室で、ドラマーが殺された時にキャロルが持っていたバッグなどを見つけたキャロルは全ての真相を知り、危うく殺されるところに刑事が踏み込んで大団円。

スッキリとしたストーリーと映像にフィルムノワールらしからぬアッサリ感のある作品ですが、洗練された分傑作という評価がつけられたように思えます。原作はもっと素晴らしいらしいですが、面白い作品でした。


「M」(ジョセフ・ロージー監督版)
先日見たフリッツ・ラング版の完全な焼き直しで、所々に全く同じアングルなども見られ、これはこれで楽しめますが、フリッツ・ラング版の方がキレがあるように思いました。

物語は全く同じですが、細かいところで、つじつま合わせをしっかりと描いていく。舞台がボストンからロサンゼルスに移って、犯人の不気味さもやや薄れた描き方になっていますが、オリジナル作品同様後半部分がやや間延びするのはこの物語の欠点なのかもしれません。

監督が変わっての面白さはあるものの、ほぼ前作を踏襲した演出なので、それほどの目新しさはありませんでした。